長所は時に短所になり得るものである
本当は昨日投稿したかった。
目が焼かれるような眩しい白い光。反射的に目を瞑った瞬間、凄まじい速さで天地がひっくり返りまくってもはや一つの景色と感じるように三半規管が異常を起こす。
何時間にも感じられる一瞬の時間流れる。
再び強い光で目を閉じると同時に地面に足が着いた。
しかし未だ回り続ける視界によろめいて膝をつく。
す、すごく気持ち悪い。
転移魔法に関する書物で強烈な回転性目眩がある事は読んだ事があるがここまでとは…。
準備してたから戻さなかったけど…聞いてなかったら正直朝ごはんが地面に散らばっていたかもしれない。
視界の揺れが治るまで暫くその場でしゃがみ込む。
段々と視界が平常に戻ってきたのでゆっくりと視界を上げた。
元々いたアレタネスの部屋と似ているが細部が微妙に違う。セスグまでの転移は成功したようだ。
「みんな大丈夫?」
ようやく声が出せるようになったので大丈夫だろうけど安否を尋ねる。
「問題ないわ」
既に何事もなかったかのように腕を組んで立ってるエンリカが答えた。
他の反応が無い為、少し焦りながら辺りを見渡す。
「………無理、睡眠不足」
「うげぇぇぇぇ」
声に安心しながら振り返ると干からびたカエルのように地面に横たわるリリスと両手両膝をついてすごく気持ち悪そうにしてるカイルが視界に入る。
「2人とも大丈夫?」
5年以上同じパーティにいて初めて見る姿に心配しながら声をかける。
しかし、2人の言葉での返答はなかった。
リリスとカイルの体調が戻らないので転移魔法陣がある部屋に待機しているとこの部屋に向かう足音がまだ響いてくる。
エンリカは一瞬戦闘態勢に入るが敵意が無いと分かるや否や剣の柄から手を離す。
扉が豪快に開く。
「あっはっは、こりゃ転移でダウンしちまってるね!」
豪快な笑い声が響く。
シルエットが分かりにくい長めの服装の上からも窺えるガッチリとした体型、白髪混じりの茶髪を後ろで束ねた50前後の女性が部屋に入ってくる。
女性はしゃがみ込み、真剣な顔つきでカイルをじっと観察した。
「こっちはただの体調不良のせいだな…。《嵐刀》カイル・アキリー、噂には聞いていたがここまで感覚が鋭いとは…。今まで見てきた中でも一番じゃないか?本来は武器のはずの感覚の鋭さがこんなにも不利益になるとはね」
「あの、貴女は?」
僕の言葉に反応して女性は振り向く。
女性は柔らかく無いながらも親しみやすさを感じさせる笑顔で答えた。
「おっと、これは失礼。私は探索者ギルド、セスグ支部ギルドマスターのヘルミーネ・ラムフィードだ」
「悪魔の聖騎士のランディ・カーターだ」
「エンリカ・ロハス」
僕の自己紹介の後に何も言わなくてもエンリカが続く。
地面に伏せている2人は目線だけ上げた。
「おう!噂は聞いてるぞ!」
セスグのギルマスは腰に手を当てて胸を張るように反応した。
「僕達のこと知ってるの?」
「もちろん!Bランク探索者の中では一番有名じゃないか?ここら辺でも名が知れてるぞ」
「ほう、それはまあ嬉しいね」
「そう?別に関係ないわ」
エンリカはブレないな。
エンリカの変わらない言動に収まりきらない全身の違和感が少し和らぐ。
「そうか、どうやらここに届いた噂も大体合ってるみたいだねぇ」
ギルマスは言葉を発した後に深呼吸をするとギルマスの表情が柔らかいものから少し仕事よりモードに変わった。
「《一切操造》、《剣姫》、《水色の悪魔》、《嵐刀》よくきた。準備は整ってるぞ。立ち話もなんだし上行くか?」
ギルマスの言葉にカイルとリリスが今できる限界の意思表示で拒否していた為、歩き出しかけていた足が止まる。
「もうちょっと待つか!歩けるようになるまでは」
ギルマスは仕事モードが切れて再び哄笑した。




