出発②
マイハウスのインターネットの調子が悪くて少し遅れました。
ギルドマスターの後に続いて探索者ギルドの奥へと進んでいく。
一般探索者が多くいる賑やかなエントランスの雰囲気は消え、重々しい空気が漂ってくる。
まるでダンジョンの奥へ進むような、危険性は無いが厳重な警備がそう錯覚させる。
ギルマスは後ろを見ずに重々しい足取りで地下へ続く階段を降りる。
ピリピリしたギルマス。それに対しランディ達は探索者の性か好奇心と興奮が混じったパーティにいないと分からない浮ついた感じに見える。
地下にある資料はとても貴重な資料、資材や極めて重要な情報が眠っており、許可無しで入れるのはギルドマスターに副ギルドマスターの僕、その他極めて限られた人しか入れない。
しかし僕たちは貴重な資料には目もくれずに歩いていく。
「ここだ」
数ある部屋の中でも特に重々しい扉の前でギルマスが初めて振り返る。
「いいか、この中の事は全て口外禁止だ。守れるか?」
「はっ、」
ギルマスの言葉にランディは呆れた笑いを出す。
ランディ以外も「今更かよ」と言いたそうな表情を浮かべた。
重要な依頼前にも関わらずいつも通りのみんなを見て自分の表情も緩んだ。
「ギルマスは僕たちに何回箝口令敷いたと思ってるの?」
「それはお前らがやらかすからだろ!」
「ははは!」
ギルマスとランディのやり取りに思わず声が出てしまった。
「アレックスまで…」
ギルマスがため息をつく。
いつの間にかギルマスの顔付きが柔らかくなった。
「まあ行くぞ」
僕たちはギルマスに続いて部屋に入る。
外からの光が入らず、複数のランプが照らす薄暗い部屋。部屋の中心に大きな魔法陣、そして周りに佇む熟練の魔術師達。部屋の隅には予め運び込まれたリリスのゴーレムを中心とした荷物。
この部屋を見れば悪魔の聖騎士の依頼がどれだけ重大なのか分かるだろう。
「これは…転移魔法陣?」
ランディが顎に手を当てて呟く。
驚くのも無理は無い。主要都市の探索者ギルドには転移魔法陣が置いてあるが使われる事はほぼ無い。使われても箝口令が敷かれるために外に知られることもほぼ無いから都市伝説として数ある噂の一つに埋もれる。
「転移魔法陣って人間には使えないくらい色々問題あるんじゃないの?」
「そうだな、だから色々準備した」
ギルマスの言葉でやっと部屋を見回すランディとカイル。ランディは小さい驚きを含んだ声を上げる。
「これは魔術学校の教授方?どうしたの?」
「ギルドマスターが仰った準備の一つだ」
「それは僕が説明するよ。主要な都市の探索者ギルドには設置式の転移魔法陣があるの」
僕の言葉に頷く2人。
「設置式なのは細かいところをいじって座標を変えるだけで良いように?」
「そうだね、僕はよく分からないけど0から書くのは大変なんだよね?」
僕の魔法のレベルはすごく集中して本当に基礎的な魔法を出来るくらいの素人だから魔法に精通している教授達に確認を取る。
教授達は首を縦に振った。
「魔力を分担するために15人の教授を呼んだってことか」
「そうそう、転移魔法は消費が物凄く多いからね」
「なるほどね。ありがとう」
ランディは納得した様子で最終準備に移った。しかしカイルはまだ真剣な様子で魔法陣を見つめている。
一通り準備が終わってギルマスの周りになんとなく集まる。
カイルは何か考えているままだ。
「これまでの相談通り人員の関係でトネイルブから少し離れたセスグまでしか送れない。すまんな。代わりといっちゃなんだが特に強いゴルディホースを用意してるから荷物運びは心配するな」
「移動中にウォームアップ出来るから問題無いわよ」
「ゴルディホース、乗る。無問題」
「………」
「どうした?カイル」
「ん?ああ、問題無い」
カイルの様子を見たギルマスは大きく深呼吸をした。
「良いか?お前らなら依頼の心配はしない。実力だけならあるからな!ただし絶対に問題だけは起こすなよ!」
「みんな気をつけてね!アレタネスで待ってるよ」
それぞれ力強い表情で答える。
「では行きます。感覚が鋭い方は特に気をつけてください」
教授の1人の呼びかけで15人が一斉に魔法陣に魔力を込め始める。
魔法陣が徐々に強い光を発していく。そして爆発的な光と共にみんなは送られた。
「アレックス、カイル大丈夫か?探索者の中でもずば抜けて感覚鋭いだろ」
「それに寝てないって言ってたよ」
僕とギルマス微妙な苦笑いを浮かべた。




