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逃げられ王子と追われる令嬢  作者: キョウ
第2章

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97: 何が目的だ?(レオンハルトsaid)

 緊急の用が出来た、と言って勉強会を早急に退席させてもらった。

 本当なら移動魔法ですぐにでも公爵家に飛びたいが、以前のこともあるし、魔力を温存しておいた方がいい、とアランに止められ馬車に乗った。


「ハヤテからは何て?」

「ハヤテ本人はアオイ様を追跡しているらしく、ハヤテの伝言魔法が来たんです」

 アランはこちらを心配そうに見ている。

 度々俺がアオイ関係で壊れたのを見てきたアランには、また俺がそうなるのが怖いのだろう。

 とりあえず今回はそうはならない。

 アオイが()()()大人しく連れて行かれた、と分かっているから。


 *****


 急ぎマクライド公爵家に着くと、玄関ホールにはすでにリンとサラ姫が待ち構えていた。

「レオンハルト殿下!申し訳ありません」

 一番に声を発したのは青ざめたサラ姫だった。

「サラ姫は何も悪くない。リン、ハヤテからは連絡あったか?」

 固く両手を握りしめているサラ姫を執事にまかせ、リンに聞いた。

 なぜかリンは普段着ているメイド服でも、外出する時の侍女の服でもなく、平民の町娘のような服を着ている。

「ハヤテからの報告では、グラナダ公爵家の馬車に乗って停車しているところを襲われたようです。御者とグラナダ家の従者は軽傷。車内からはハーブで出来た麻酔剤のような香りがしたそうです」

 その落ち着き払った対応に、知らず魔力が漏れた。


「お前達は……、何が目的だ?」

 リンの体がビクリと反応した。

「アオイがそんなに簡単に拐われるような女じゃないって俺がわからないとでも?一族の結束が固いのは構わないが、アオイを危険に晒してんのは許せないな」

 隠しもしない殺気を当てられても、倒れたりしないのはさすがリン。

「申し訳、ありません。隠しだてするつもりはなかったのですが、アオイ様が殿下には伝えるな、と……」

「タカユキからすでに聞いている。アダナンの件だろう。ハヤテが正解だ」

 伝達魔法で伝えてきたのはハヤテの独断だったのか。

 ふぅ、と息を吐いた後、リンは真っ直ぐ俺を見た。

「拐われた2人は別の幌馬車に乗せられ、下町の民家に連れ込まれました。近くでハヤテが待機しています。タカユキ様はそちらに向かっている途中です。私もレオンハルト殿下にご報告後、現場に向かうつもりで」

「その格好か」

「はい……」

「俺も行く。場所を教えてくれ」

 そう行って、今来たばかりの扉をまた出ていくことになった。


 *****


 リンがハヤテとやりとりしながら、馬車でアオイがとらわれているという民家に向かった。

 貴族でも寄るような商店のある通りを抜け、平民の住宅があるあたりの手前で馬車を止める。

「ここからは、まず私だけで行きます。お二方はこちらでお待ち下さい」

「リン、俺らしかいない時は、まどろっこしいから普通でいい。でもって一緒に行くぞ」

 言ったとたん、リンが顔を歪ませた。

「あのねぇ、そんないかにも王子様!っていう姿で貧民街に行くつもり?目立ってしょうがないからやめて」

 確かに、俺は午前中の勉強会の時の服だし、アランもいかにも貴族の従者、という服装だった。


「じゃあ、これでいいだろ」

 俺は、空中に人差し指でクルリと円を描いた。

 一瞬で2人とも、平民ぽいシンプルなシャツとベスト、ズボン姿になった。

 しかし、なぜかリンとアランが半目でこちらを見ている。

「ダメ。全然王子感が隠せてない」

 リンがパチンと指を鳴らすと、俺の髪がセラトで良く見るような焦げ茶色になった。


「「微妙……」」


 2人に言われる。

「旅装束でフード被ってる方が、あやしさはあるけど悪目立ちはしねえんじゃねぇ?」

「そうかもしれない」

「そうする」

 もう一度魔法をかけて、結局討伐の時に身分を隠していた時のような格好になった。


 3人で民家の連なる通りを何気なさを装いつつ歩いていると、周りの町民がジロジロ見てくる。

 やっぱり目立つのか……。

 と思っていたら、道の向こうで大きく手を振っている人影が見えた。

「おーい!ここだ!ここー!」

 メチャクチャ悪目立ちしているのは、なぜここにいるのかわからないがマルクスだった。


「なぜあなかたがここにいる」

 ひとまず目立たないように人目のつかない建物の裏手にまわった。

 相変わらず従者もつけないマルクスは一人でここまで来たという。それでなくても不信感が強いコイツが益々信用できなくなってきた。

「なに、先日の夜会での件で参考人を追っていたら、ご令嬢二人が担がれてある屋敷に入っていくのを見たのでな。更にはアオイの護衛まで隠れて様子を見ている……となったら、そりゃ貴殿が来ると思うだろう」

 怪しすぎるいいわけをするマルクスを横目に、すぐそばに現れたハヤテに向き直った。

「どうなっている?」

「アオイと令嬢の二人は、2件先の家の裏にある小屋にいる。外の見張りは一人。家には二人。うち一人は黒の少年で、コイツだけは服装が良い。怯えた態度からも従わされているようだ」

「タカユキは?」

「セラトでの親玉がこちらに向かっているようで、ソレをつけています。一緒に捉えたい、と」

 タカユキは端からアオイを囮に使うつもりだったのかわからない。が、こうなった以上使えるものは使う、ということか。まあ、アオイも自ら協力してるのはわかるが。


「マルクス殿、これから大捕物が始まりそうですが、貴殿はどうする?」

「手伝えることがあれば協力するが、逆に手を出さない方がいいなら大人しくしている」

 いつもの飄々とした顔。

 でも、ここに現れたことは絶対に偶然じゃない。

「では、高みの見物でもしていて下さい」

「わかった」


「ハヤテ、とりあえずタカユキが来るまで待つ。だが、アオイが危ないとなったら、俺は勝手に動くからな」

「もちろん」

 そうして、マルクスを放置して3人でしばらく使われていない近くの民家の裏で、身を隠して待機していた。


 *****


 タカユキから伝言魔法で「そろそろ着く。警戒しろ」と連絡が来たのは、日も暮れてだいぶたち、あたりは人影もなくなった深夜に差し掛かる頃。

 メイン通りをこちらに向かってくる人物が、遠くに見える。

 母屋の屋根の上からソレを確認して、タカユキが現れるのを待って、アオイ達がとらわれている小屋から目をそらした瞬間に、爆音と共にその小屋が吹き飛んだ。


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