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逃げられ王子と追われる令嬢  作者: キョウ
第2章

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92/127

91: 帰れ

 サラ様の選んだラペルピンと、私の選んだピアスと、両方がショーケースの上に置かれている。

「ここからは私が担当させていただきます」

 ナナトがまずはラペルピンを乗せたトレイを前に言った。

「マクライド公爵令嬢様は、守護の効果でよろしかったですか?」

「ええ、お願い」

 ナナトは無言で頷くとトレイの上に手をかざした。


 じっと目を凝らすと、手のひらからフワリと魔法の発動が感じられる。

 目で見えるほどの魔力は出ていない。でも、その力はするするとラペルピンに吸い込まれていった。

 サラ様が私と目を合わせてきたので、コクンとうなずく。確かに守護の加護を入れている。申し訳程度だけど。

「私のは、攻撃力が上がる加護をお願い出来る?」

 加護によって力が変わる、とかあるのだろうか?と思って言ってみた。

「騎士の方か何かですか?めずらしいですね。大抵女性から男性への贈り物には、守護や健康祈願などの守る系の効果が多いのですが……」

「できない?」

「いえ。あまりやりませんが、出来ます」

 そう言って、ナナトは今度はピアスに手をかざした。

 うーん。こっちもそんなに変わらない……かな。

 でも、何か別の効果をかすかに感じる。なんだろう?後でゆっくり確認してみよう。


 加護のついたアクセサリーを綺麗にラッピングしてもらい、相場より3~4割ほど高めの値段で支払いをした。あの程度の魔力で、と考えると少々ボッっている気がしないでもない。

 でも、それに気づくほどの魔力を持っている人じゃないとわからないと思う。

 最後に、アークライトさんからは黒い封筒をそれぞれ渡された。これを持っている人でないと、初めての人はこのお店は利用出来ない、というシステムらしい。


 お店を出て、サラ様と二人で「ふう」と一息ついた。

「どう?一応、加護は付いてるのよね?」

 サラ様は手にしている袋を見て言った。

「ええ。多少は……。ええと、もう少し加護を強めることも出来ますけど……しておきます?」

「お願い!」

 即答だった。

 苦笑いした私は、サラ様が持っている袋の上から手を乗せた。

「……ん。終わりました」

「えっ?さっきの…ナナト君がやるより、早いんだけど…」

 そこはふふふと笑ってごまかしておこう。


「サラ様、馬車に戻りましょう」

 後でピアスの方も強化しておこう、と思いながら声をかけるとサラ様は馬車とは反対方向に歩き出した。

「もう一か所だけいい?この先においしい焼き菓子屋さんがあるの。買うものはもう決まってるから、すぐ済むわ!」

 護衛があわててサラ様の後を追う。私もつられて追いかけた。


 宝飾店のあった通りから一本先に行った所に、小さな焼き菓子屋さんがあった。

 こちらはこじんまりとしていながら、道に面したウィンドウにはかわいらしい焼き菓子が陳列されていて、いかにも女性が好みそうな店舗だった。

「ここはね、マカロンが有名なの。アオイ様の分もお礼に買うわ!」

 といってサラ様は店内に入って行った。私もついていったけれどとても狭い店内で、他のお客さんもいたので、外で待つことにした。


 そうして、待ち行く人をボーっと眺めていたら、見なくてもいいものを見てしまったのだ。


*****


「あれ?アオイちゃんじゃん?」

 レオ達に気を取られて、目の前に来て声をかけられるまで、気付かなかった。

 グラナダ公爵令息であり、ダリア様のお兄様、エヴァン様がビックリ顔で声をかけてきた。

 後には濃いめのブロンドヘアで深緑の瞳の男性が、こちらを興味深そうに見ている。サラサラの髪をちょっと長めに伸ばして、首の横で1つにまとめていて、服装もお洒落。すごくモテそうだし、女性の扱いに慣れていそうだな、なんて失礼なことを思った。

「エヴァン様。こんにちは……」

「どうしたの?こんな所で。1人でいたらあぶないよ?」

「いえ……。マクライド公爵令嬢と一緒でして……。今、そちらのお店を見ておりますの」

「ああ!レナルド殿下の!」

 レオの友人なので、サラ様のこともご存知だったようで話が早かった。

「おい、エヴァン。お前、いつの間にこんな綺麗なご令嬢と知り合いに?」

「ハルトの婚約者だよ」

「ハルトの!?」

 なんか、前にもこんなリアクションあったな。なんで、婚約者だと言うとみんな驚くんだろう。

「アイツ……。女の影なんかこれっぽっちもなかったじゃねぇか!あー、あれか。王族だし、政略的な?」

「ガイ!失礼だぞ。それに……、政略とかじゃなさそうだしね……」

 微妙に苦笑いしたエヴァン様を見て、気付いた。

 絶対こないだの()()を思い出してるよね!!!

 恥ずかしくて顔が上げられなくなった。


「今日は俺達……、学園の卒業生達で集まる予定で、ハルトも待ち合わせには来たんだけど……。ごめんな。ダリアがわがまま言って、皆が集まるまで、って連れ出してしまったんだよ」

 エヴァン様は困ったように笑った。

「あ……、先ほど見かけました……」

「ね、せっかくならアオイちゃんも来る?公爵家(うち)で、少人数で開くパーティーだから、気がねしなくてもいいし。皆もハルトの婚約者に会いたがってるしさ」

「い、いえ……。私は……」

「いいじゃん。来なよ」

 そう言ってガイ様は私の腕をガシッと掴んだ。

 うわ、この人強引だな……。

 こんなとこ、レオに見つかったら絶対怒る。

 サラ様がお店から出てきたら、すぐに帰るつもりだった。のに―――。


「ガイ、その手を離せ」

 ものすっごく低い声で、抑揚なく静かに言葉を発する時は、めちゃくちゃ怒っている時……。

 振り返らなくても、後からヒンヤリとした魔力が漂い始めているので、わかる。

「ハ、ハルト……、落ち着け?」

 エヴァン様が怯えてる。さすがのガイ様もパッとすぐに手を離した。


 ツバの広い帽子を被っているから、黒髪どころか私の顔すら見えていないだろうに、どうしてわかるんだろう?

 そういえば、マキノにかけられた変装魔法でさえ見破る人だった。忘れてた。


「アオイ。なんでここにいるんだ?」

 仕方なくゆっくり振り返る。

 黄緑の瞳は完全に冷々としていて、目を合わせられない。

 さ迷った視線は、いまだにダリア様に捕まれたままのレオの腕に止まった。

 それに気付いたレオが、ベリっとダリア様の腕を剥がすと、エヴァン様の方に押しやった。

 うわ、扱いが乱雑。

「サラ様のお買い物に付き合ってて……」

 一応言い訳を試みる。

「今すぐ帰れ」

 珍しく、私に厳しく命令口調。

「ハルト、女性にそんな言い方ないだろ。彼女も連れて来ればいいじゃないか。今、誘ってたんだよ」

 ガイ様が何も気にせず言った。

「リン、ハヤテ!」

 レオが声をかけると、今まで全く姿を現さなかった2人が音も立てずにレオの後に立っていた。

「「うわっ!」」

 エヴァン様、ガイ様……。すいません……。

「サラ姫とアオイをすぐ屋敷に」

 レオの指示に無言で頷く2人だったが、ハヤテがレオと目を合わせた。

「お嬢はそこまでヤワじゃないぞ」

「……知ってる」

 やれやれ、と口にはしないけどハヤテのタメ息が言ってる。


「あら!見つかっちゃったの?」

 そこへサラ様が戻って来た。

 後ろからついてきている護衛の両手は大きめの袋を二つも抱えている。

「サラ姫……」

 レオが困ったような責めているような顔でサラ様のことを見た。

「もう用事は終わったわ。お屋敷に戻るから、アオイ様のこと怒らないでちょうだい?」

「わかりましたよ。アオイ、また夜に」

 レオはわざわざ私たちが馬車に乗るのを確認してから、エヴァン様達と合流した。

 エヴァン様の横でずっと黙ってそれを見ていたダリア様の目線が痛かった。



 そして、その夜。レオは公爵家に帰って来なかった。



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