黒の蝶 様
黒の蝶 様
初めまして。私はイオリといいます。
私の生きている間には黒の蝶様にお会いすることがかなわないので、こうしてお手紙をお出しすることにしました。
本当は王族の直系に口伝で伝えられてて、外には秘密なのですが、私は黒の蝶ではなく「龍の花嫁」に選ばれました。
どうして選ばれたのか理由は全くわかりませんが、私はこのお役目をとても嬉しくおもっています。
というのも、私は体が弱く、多分余命いくばくもなく、花嫁になることで龍神様と共に生きていくことができるからです。
最初に「黒の蝶」のことを聞いた時は、その責任の重さにビックリしました。
龍の花嫁に選ばれたと知る前の私は、体が丈夫でないため、黒の蝶になれないことを恥じて、嘆いていました。
どうしてこんな体に生まれてしまったんだろう、と。
母は正妻ではなかったし、そのせいで私がこんな体なのかと、母を恨んだこともありました。
けれど、心配してくれる義兄と、懐いてくれるかわいい義弟のおかげで、自分を少しずつ好きになれました。
そこに、龍の花嫁の話を聞いて、こんな私でもお役に立てることがあるんだと、希望になりました。
黒の蝶様は、お役目に尻込みしていませんか?
とても重圧がかかる選択だと思います。
けれど、自分の愛する人のために協力できるということが、とても素敵なことだとも思います。
黒の蝶様は、いかがですか?
今、誰かを愛していますか?
愛する人に愛されていますか?
どうぞ、周りの環境や状況に振り回されず、ご自分のお気持ちに素直になって下さい。
私が言うのもおこがましいこととは思いますが、誰にも共有できないお気持ちを、共に語らい励まし合う代わりに、このお手紙をしたためました。
私も不安がないわけではありません。
龍という伝説の存在に、その未知の世界に行く不安はあります。
でも、それ以上にとてもワクワクしています。
お会いして、お話したかった。
黒の蝶様の幸せを遠くからお祈り申し上げます。
イオリ 拝




