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逃げられ王子と追われる令嬢  作者: キョウ
第1章

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66/127

66: 同調魔法

「戻ったか」

 門が壊れてるお屋敷の正面玄関先に、父上とお母さま、お父様……マサユキ様、リンとハヤテ、更にアランまでが待っていてくれた。

 レオに横抱きにされている状態から、あわてて飛び降りる。

「アオイ!足!!」

 レオはやたらと裸足を心配する。

「アラン様が、レオンハルト殿下が飛んでくるから、と」

 お母さまが言うと、レオがニヤリとアランを見た。

「いつも置き去りにされてますからね。殿下の魔力だけは、追えるようになりましたよ」

 アランがわざとらしく拗ねてみせた。


「父上、お母さま、ご心配をおかけして、申し訳ありませんでした」

 一歩前に出て、深々と頭を下げた。

「思い出したのか?」

 父上が静かに言った。

「はい。何があったのか、お話します」


 *****


 レオがグッと力を込めたとたん、光の強さもグンっと上がった。

 閉じていた瞼を開けてレオを見上げると、ヤト様の方を見ている顔は珍しく苦悶の表情だった。

 どうなってるのかとヤト様を見ると、うずくまった状態の背中から黒いもやが次々と出ていく。


 ―――ひっぺがしてやる


 ヤト様の中に入り込んだ闇を、レオが引きずり出してるんだ、と分かった。

「う、うあ、ああああああ!!」

 ものすごく苦しそうに叫んでいるヤト様も心配だけど、脂汗を流してるレオも心配で、思わずレオの体に腕を回しギュッと抱き締めた。

 レオの体がピクンと反応して、こちらを見ないまま言った。

「アオイ、()()やってくれるか?」

「あれ?」

「同調魔法」

「!っ、でも!私、聖魔法は使えないよ!?」

「大丈夫だ。さっきも言ったけど、聖魔法は実は誰の中にもある。アオイなら魔力量は十分だし、あとはコントロール次第で使えるようになる。まあ、今はコントロールは俺に任せて、魔力の融合だけ協力してくれれば、なんとかする!」

「で、出来るかな……。同調魔法やったのだって、あの湖の時以来だよ……?」

 自信がない私に、苦しそうな顔をしながらもニヤリと笑ってレオは言った。


「出来るようにするんだよ」


 前にも言われた。

 いつも後ろ向きな私にレオが言う言葉。

「う、うん。やってみる!」

 他の誰とでもなく、レオとなら出来る、と信じられる。


 瞳を閉じて神経を集中して、隣のレオの魔力を手繰る。

 こんこんと湧き出る泉のような膨大な魔力。その根元を意識して、そこに寄り添う。

 大丈夫。

 私の魔力とレオの魔力は相性がいい。

 その証拠にレオの魔力は私にとても気持ちいい。弾いたり、混ざらなかったりすることはない。

 スルリと滑り込んで一緒になる。


 レオを見たら、彼も私を見ていた。

 聖なる光よりも、もっと眩しい笑顔の瞳が、黄緑から深い緑に変わる。

 近づいてくるソレを受け止めて、唇が重なる。

 2人から大量の魔力が溢れ出る。


 ああ、今、私達溶け合ってる。


 自分達からほとばしる聖魔法の光が、とても暖かく優しく感じる。


 ―――って、最初は思ってたけど、今やメチャクチャ本気のキスをしてくるレオしか感じられなくなってきてるんですけど。

「……っ、レ、んん……、レオ!……ま!」

 頭がクラクラしてきた。

「ん?嫌?」

 とかじゃなくて!!!

 抱かれてる腰の手はそのままだけど、いつの間にかもう片手はガッチリ後頭部を押さえられて、ヤト様がどうなってるのかも確認出来ない。

 更には、気付けば足元が覚束ない。

 宙に浮いてる気がする。踏ん張れない。踏ん張れないから逃げられない。

「……れ、レオ、……っふ、や……」

 魔力が溶け合ってる感じがずっと続いてるのが分かる。

 これ、ダメ。

 気持ち良すぎて、抵抗出来なくなる。


「お前ら!そんなとこで何やってんだあ!!」



 *****


 メチャクチャ恥ずかしかったけど、あそこでフヨウ兄さまが止めてくれて良かった……。


 もちろん、そんな恥ずかしい部分は割愛して、父上達と、後から戻ってきたキクノスケお兄様達に話した。

 シンは自分で歩けるくらいに回復していたらしいけど、呼び出されたアマーリア様にそのまま診察に連れてかれたようだ。

 ヤト様は、今だ眠ったままだ。


「無理矢理闇を払ったから、どうなるかわからない。でも、あのままではヤトは闇に呑まれてた。俺の判断でしたことだが、こんなことになって申し訳ない」

 そう言って謝るレオに父上は首をふった。

「いや、元はといえばヤト本人のせいだ。アイツは、現実を見ようとせず、周りを信用せず、自分の世界でしか動いていなかった……」

「そのイオリという女性のことを伺っても?」

 私もあんまり詳しく知らない。

 父上を見ると、お座敷に集まっているみんなを見渡した。

「分かった。ただし、アオイとレオ、キクノスケだけだ。俺の部屋に来い」


 *****


 父上の部屋で4人で座った。

 奥の続きの間には布団がひいたままだった。

 そういえば、体調不良と聞いていたが、記憶が戻った今アーネスト様に会わないように仮病だったんだな、と気が付いた。

 とはいえ、まだ右手は吊っている状態で健康体とも言いがたいか……。


 4人分の緑茶を入れてみんなに配る。

 あれ?そういえば、レオに緑茶を振る舞うのは初めてかも。飲めるのかな?と思ってレオを見たら、普通にすっと湯呑みを持ち、ひと口飲んだ。

 疲れがちょっと見えるその顔を、フワリと綻ばせて「うん。やっぱりアオイの入れるお茶はうまい」と言ってこちらを見るから、顔が赤くなる。

 平静を装って自分の座布団に座り、父上の話を聞いた。


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