65: 怒涛のキス
いつも、誤字脱字報告ありがとうございます!
さっきの場所は真っ黒で足元が見えなかったけど、確かに踏んだ感触はあった。
けど、今は本当に足元には踏むべき床や地面がない。
プラプラする足では踏ん張れない。
踏ん張らないと、逃げられない。
逃げないで、と言われたけど、これは違う。
「……れ、レオ、……っふ、や……」
怒涛のキス。
息継ぎで精一杯。
片手で腰をガッチリ掴まれ、もう片手で後頭部を押さえられて、自分で顔を動かすことすら出来ない。
最初は柔らかな唇が、角度を変えて何度も触れてくる程度だったのに!
今やレオの侵入を許してしまった私の中を、好き勝手に貪られて、息も絶え絶えの所に聞こえてきたのは、フヨウ兄さまの呆れた声。
「お前ら!そんなとこで何やってんだあ!!」
ハッと我に返って、声のした下を見て、自分達が半壊している小屋の上に浮いていることを知った。
ていうか、みんな勢揃いしていて、更にこちらを見上げてるじゃないの!!
今のキスを完全に見られていたってことよね!?
あまりのことに叫び声も出ず、口が意味もなくパクパクしてるのに、レオはそんな私をとろけるような微笑で見つめてくる。
その、瞳が深い緑になっている。
ゆっくり下降して、小屋より少し離れた地面に着地しようとしたら、ヒョイっとレオに横抱きされた。
「えっ!?何!!」
レオはしっかりと地面に足を着けている。
「お前、また裸足じゃないか」
目線の高さになってる足元を見て、自分も初めて気づいた。
「最初ははいてたんだけど、どこで脱げたんだろう?」
怒涛の展開に、自分の草履がいつどこへいったのか、全く覚えていなかった。
「アオイ!!無事か?」
真っ先に駆けつけてきてくれたのはフヨウ兄さまだった。
「お前ら空中で何して……、!!レオ!瞳の色が……!」
私を見たあと、レオに目を向けた兄さまはすぐに気づいた。
「ああ、まだ戻ってないか」
同調魔法を使った後、昔はすぐ黄緑に戻っていた色は、今だエメラルドのような神秘的な緑のままだった。
フヨウ兄さまの後からは、兄さま達と共にレナルド様まで来ていてビックリした。
その、レナルド様もレオの瞳を見て驚愕している。
「お前、その瞳は……」
「ああ、同調魔法を使うとこうなる」
「同調魔法だって!?誰と……って、フィオレンツィア嬢と……か……?」
そこにいた誰もがレオと私の顔を交互に見る。
「……信じ、られない……。本当に……?」
キクノスケ兄様が力なく呟いた。
魔法の保持者が多い華旺国でも、同調魔法を使える、という人物を見たことがない。
てっきりリンが昔に父上やキクノスケ兄様には報告してるかと思っていたが、この様子だと誰も知らなかったようだ。
「そうだ!シン!シンは!?」
皆が無言になってしまったけど、ハッと思い出してレオの腕から飛び降りる。
「アオイ!コラ!裸足!!」
小屋の横の地面に横たえているシンは、思ったより火傷は酷くなかったけど、着ていた和服は黒く焦げてるし、美しかった銀髪も一部分焼けてチリチリになってしまっている。
「アオイ……。無事で、良かった……」
動けないみたいで目線だけをこちらに向けたシンは、力なく掠れた声で言った。
「シンこそ……、シンこそ、ありがとう……」
自分のことをかえりみず、ここまでしてくれる人はそういないことを知ってる。あの渦の中まで助けに来てくれたレオも、シンもこんなにボロボロになるまで私を助けようとしてくれた。
自分にそこまでの価値があるのかわからないけれど、大切に思ってくれる存在が少なくても2人はいる。
いや、ここに来てくれてる兄さま達も、父上もお母さまも、マサユキ様も、リンやハヤテ、そのほか沢山の人の顔が思い浮かぶ。
皆、私をいつも見守っていてくれてた。
そのことにジワリと涙が溢れる。
立っていたレオが私の横にしゃがむと、どこに持っていたのか手ぬぐいで涙を拭いてくれた。
「シン、俺からも礼を言おう。アオイを助けてくれて、ありがとう」
レオはシンに向かってそう言うと、シンの体に手をかざした。
治癒魔法の柔らかな光がシンの体を包んだ。
しばらくすると、ムクリとシンが起きて魔法がちゃんと効いたことがわかった。
「……全く、嫌みなくらいなんでも出来るな。こちらも、礼を言う。あの投げて寄越した魔法のおかげで、火傷はほぼ治った」
近くにいたサクラが目を剥いてレオを見てる。
だよね。普通、魔法、投げないよね……。
小さい頃に私とふざけあって編み出した技だったんだけど、使ったのね……。
半目でレオを見れば、素知らぬ顔をしている。
シンの隣にはヤト様も寝かされていた。
真っ黒だった体は元に戻り、あの闇の中では青年だった見た目も今は年相応になっている。
あまりにも動かないので、一瞬最悪な事態を考えたけど、近くで2人の容態を見ていたらしいサクラ兄さんが「生きてるよ。気を失ってるだけ」と言うのを聞いて安心した。
改めて周りを見れば、小屋は半分吹き飛んだように盛大に壊れてる。私達がいない間に何があったのか、考えるのはやめよう、と思った。
燃えていた壁なのか、黒焦げになった木っ端が周りの森に散乱して、もっと密集していた周りの木々も折れたり倒れたりしていて、ここだけ木々がポッカリ抜けてしまっていた。
「アオイ、屋敷に戻ろう。何があったのか、聞かせてもらうよ?」
キクノスケ兄様が、厳しい目線で言った。
コクンと頷く。
ん?と思ったら、自分の周りにキラキラした移動魔法の兆しが見える。
「レオ?……わあ!」
振り向いたとたん、また横抱きにされた。
「アオイ、裸足だろ。キクノスケ、俺たちはひと足先に戻る」
そう言ってレオは私を抱いたまま飛んだ。




