59: 呼んでる(レオンハルトside)
レナルドの部屋に連れられて、従者も下げさせ二人きりになった。
レナルドは今日はここで1泊させてもらい、明日は麓の街に戻り、セラト国へ行くための隊へ合流する予定だと言う。
「レオ。わかっているな?先程も言ったが、フィオレンツィア嬢のことは一旦置いておいてもらうぞ」
「……」
「レオンハルト!」
「分かってる。三国会議だろ。アレだ、西の海から現れる魔物を防ぐ話……」
「そうだ。今まではお前が防いできたのを、自国の軍で押さえたとかなんとか誤魔化しつつやってきたが、そろそろバレ始めている。成人もしたことだし、ここで第三王子の存在を近隣諸国に知らしめたい、ってのが陛下のお考えだ」
身分と顔を隠して自国の軍部に紛れ込み、魔物討伐に暗躍したり、自然災害で救助活動したりしていたのを、表立っては公表していない。
軍部の総指揮官ウォルターと、第一部隊の隊長ドナルドだけは知っている状態で、よくここまで隠せていられたと俺でも思う。
でも、それもここまで。
陛下の考えとしては、俺達三兄弟をここで一気に隣国に周知させ、牽制したいのだろう。
いつまでも、使えない三男をやってるわけには行かない。
だから俺は、この会議の前にフィオレンツィアとのことをハッキリと決めておきたかったのだ。
なのに―――、
突然、毛穴がブワリと広がり、勝手に冷や汗が出る。
なんだこれ!?
同時に、胸元に下げていたマサユキから預かった小袋がカッと熱くなった。
『レオ!!』
脳内に響くフィオの声。
『レオ!!助けて!』
間違いない。
フィオが俺を呼んでる。
「……っ!、どうした!?」
隣にいたレナルドが敏感に俺の変化を感じ取った。
フィオに何かあったのか?
「レオ!!待て!どこへ行く!!」
レナルドに説明する時間すら惜しい。キラキラとした移動魔法が発動する中、一言だけ伝えた。
「フィオのところに―――」
*****
長い黒髪が、ズルリと黒い渦に飲み込まれる所だった。
「フィオ!」
呼んでも既に顔も見えない。
血の気がザーっと引いた。
「お前もイオリを連れて行くのか?」
地の底から響くような声に振り返れば、黒く染まったヤトが宙に浮いている。
「なんっ……だ、お前!」
何が起きている!?
飛んだ先は、古びた小屋の中で、どこかが燃えているのかきな臭いことにやっと気付いた。
その足元にはフィオを吸い込んだ黒い渦。更に先に目線を向ければ、燃えている壁と引戸の前でシンが倒れている。
「シン!!なんだこれ!?どうなってる!」
よく見れば服や肌が焦げたり煤けている。肩まであった銀髪も部分的に焦げているようだ。
「……っ、ア、アオイ……を……」
かろうじてあげた顔は火傷で片頬が爛れていた。
震える指が差すのは、黒い渦。
治癒魔法の簡易版をシンに向けて放ったのを、見届けることなく渦に飛び込んだ。




