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逃げられ王子と追われる令嬢  作者: キョウ
第1章

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46/127

46: 膝枕

「おはよう」

 朝日に眩しいキラキラのフワフワが、なぜか私の部屋の縁側に座ってる。

「えっと……。おはようございます…………」

 私、今、起きたばっかり……。

 起きて、隣で寝てたはずのお母さまはとっくに起きていなくて、とりあえず、と障子とガラス戸を開けたらレオがいた。

 ハッとしてあわてて胸元をかきあわせる。久しぶりに浴衣で寝たから着崩れしてたかもしれない。っていうか、洋装だとしても寝起きに殿方と会わないわよー!

「ぶは!悪い、悪い。考えてること丸見えだな。大丈夫か?上着着てこいよ」

 ―――笑った。

 それでなくても、キラキラ眩しい明るい金髪なのに、笑顔になったらますます輝いて見えるんですけど。なにこの人。外国の物語に出てくる王子様みたい。でも、王子の割には口が悪いな。


「っていうか、何かご用ですか!?」

「うーん、まずはその敬語やめろよ」

「はぁ!?」

 敬語じゃないけど、これも十分失礼か。

「ちょっと、貸してもらいたいモンがあるんだけど」

 とりあえず羽織を着て、縁側に出た。

「ああ、ザブトン持ってきた方がいい」

 え、注文多いな。

 レオが自分の座ってる縁側の隣を指差す。隣に座れってこと?

 レオの隣にザブトンを置いてその上に座った。

 とたん、レオが傾いてきてギョッとした。

「えっ、ちょっ……!」

 そのままポスンと、頭が私の膝に乗った。

 これって……。膝枕じゃん!

 ズシリと意外と重い頭が膝の上……。しかも金髪フワフワ……。

 レオは目を瞑ったままだ。

「貸して欲しいモノ…………って膝?」

「ん」

 短い返事の後、文句を言おうとしたら、スーっと静かな寝息が聞こえてきてしまった。


 なにこれぇ。

 どうすればいいのーっ!!

 あまりにも安らかな寝顔をしているから、起こせない。しかも、こんなすぐ寝付くだなんて、寝不足だったのかな?

 横向きだったのに、ゴロンと仰向けになったら顔がよく見えた。

 最初見た時も思ったけど、男の人なのにすごい綺麗な顔してる……。

 睫毛は長いし、スッとした鼻筋。薄い唇は意外と男っぽさを感じる。

 そして何より、金髪がフワフワ……。

 ううう、触りたい……。

 抗いがたい誘惑に負けて、そっと触れてみた。

 これを猫っ毛というのね。

 起きないのをいいことに、しばらく感触を楽しんでいたら、ふいに後ろからフヨウ兄さまが現れた。

 しかも、人差し指を口に当ててる。

「しばらく寝かせてやれ。コイツ、寝れてないんだ」

 小声で言われた。

 なんで?と聞きたかったけど、フヨウ兄さまは「2人分の食事、取っといてやるよ」と、朝食へ行ってしまった。


 藍染の浴衣を着ているけど、やっぱり着なれてないようで合わせがゆるゆるになってる。

 胸板を見ないように、自分の羽織を脱いで上からかけてあげた。

 なんか、前にもこの人に膝枕したことある…………気がしてきた。

 このフワフワと安心しきった寝顔に、ドキドキしながらも、私もなぜか安心感があった。


 *****


 結局、レオは小一時間ほど寝た。

 もちろん、ずっと私の膝の上で。

 多分、私がひっぱたかなければもっと寝てたかも。だって、寝返りをうちながらお腹に顔を埋めて、さらに腰に抱きついてきたのだ。

 そして、もちろん私は足が痺れてしばらく動けなかった。

 それをまた、くつくつ笑いながら治るまでレオは待っていてくれた。

 大広間に行くと2人分の朝食が残されてて、一緒に食べた。

「ねえ、着物は着なれてないのに、どうしてお箸は上手に使えるの?」

 今度は向かい合って食べてるので、その所作が良く見えた。

「ん?ああ、小さい頃に遊びに行ってた家が箸使ってて、一緒に食事してたら覚えた」

 どう見ても外国人のレオが、遊びに行く家って、華旺国関係者ってこと?

 ちょっと思案してたら、ニヤリと笑ったレオが言った。

「俺のこと、知りたい?」

 色気タップリな目線が来た。

 顔に熱が上がる。


「アオ!!」

 突然、廊下側の襖がスパンと開いて、ビックリした拍子に持ってた味噌汁がちょっとこぼれた。

 振り返ると、アーネスト様が息を切らせて部屋に入ってきた。

 後ろからハヤテが付いてきてる。これは……ずっと張り付かれてるな……。

「朝からずっと探してたんだよ、やっと会えた……」

「?」

 えっと、普通に自室にいたけどな。

「フィオ」

 ふいにそう呼ばれて、振り返ってしまった。

 確かに、王都では「フィオレンツィア」を名乗っていた。お父様からは愛称でフィオって呼ばれていたし。

 でも今、私を愛称で呼んだのは……。

「味噌汁、こぼれてるぞ」

 そう言ってレオは私からお椀を取り上げ、味噌汁が付いた親指を口元に持ってかれる。

 そのまま赤い舌で指先をペロリと舐められた。

「ひゃうっ!」

 あまりのことに変な声出た。

「や……、やめて……」

 腕を引っ張ってるのに、びくともしない。その隙に今度はパクリと指を咥えられた。見えてないレオの口の中で、親指の腹をザラっと舌が辿っていく。

 伏せていた瞳が上がって、指を咥えたままこちらを見た。そして、壮絶な色気を放ってニコリと笑った。

「……っ!」


「やめろ!」

 アーネスト様が、私の腕を掴んでレオから引き離した。

 一瞬、アーネスト様とハヤテの存在を忘れてた。2人を見ると、2人とも顔が赤い。

 だよね!今の、レオの色気にあてられたよね!?

 アーネスト様は私の腕を引っ張り、グイっと立たせて、私を連れてそのまま部屋を出た。

や、やっといちゃいちゃできたー!

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