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逃げられ王子と追われる令嬢  作者: キョウ
第1章

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45/127

45: 黄緑の目線

 ど、どうしたらいいの?これ…………

 横から黄緑の目線がビシバシ来てる……。


 *****


 華旺国に到着してまずは、お屋敷に連れて来られた。そしてアーネスト様はすぐさま父上へ面会を求めた。

 しかし、父上は体調を崩していて誰にも会えない、とキクノスケお兄さまに言われた。

 あの頑丈な父上が、体調を崩すなんてめったにない。どれだけ酷い病にかかったのかと心配になって逆に会いたい、とお願いしたが、お母さまが頑として頷いてくれなかった。


 アーネストとヤトは里の人達にものすごく警戒されていて、お屋敷に入れたものの、部屋からの移動の許可は下りず、ほぼ軟禁状態だった。

 そんな2人を置いておけず、私も一緒にいるのだけど、部屋の外はもちろん、中でも常に誰かいるので、落ち着かない……。

 やっぱり突然やってきて、一国の王に面会したい、なんて不振に思われるよね。

 それは私が間に入って取り持たなきゃならないな、などと考えていた。


 夜になって、お母さまが「お腹空いたでしょう。まずはご飯よ!」と、いつもの大広間で食事の準備を始めた。

 アーネスト様は大広間で皆で食べることも、皆で協力して準備することも、見たこともない料理にも、全てに驚いていた。


 家族、親戚以外にも、使用人や近所の人までも集まったりするので、かなりな人数になる。

 席は上座はある程度決まっているけど、他は適当だ。

 気付けばいつの間にかヤトはおらず、アーネスト様はリンに指示されて準備を手伝っている。

 私は、というと有無を言わせずフヨウ兄さまの横に座らされ、更に反対側にはあの時の金髪の人が座っている。

 でもって、あの綺麗な黄緑の瞳がずっとこっちを見てくるのだ。

「あの、フヨウ兄さま?こちらの方は……?」

 ずっと見てくるだけで何も言わないし、名乗らないので、聞いてみた。

 フヨウ兄さまが、私のことをなぜか痛ましげに目を細めて見返す。

「レオだ。……まあ、悪い奴じゃない」

 フヨウ兄さまの方を向いていたけど、後ろから「クッ……」と笑う声がした。

 振り返れば、相変わらず私を凝視してるけど、何も言わない。

 なんなの?と思いつつ、食事が始まった。


 アーネスト様が慣れない食卓で戸惑ってないかと気になるけど、アーネスト様を見ようとすると、金髪の人……レオの方を向いてしまう。

 そして向いたら向いたで、この人はなぜかずっと私の方を見ているのだ。

 その黄緑の瞳に吸い込まれそう……、などと思っていたら、無言で揚げ出汁豆腐を渡された。

「えっ……と、ありがとうございます……」

 確かに、私、これ好きだけど……。

 と、箸をつけていたら、今度は白和えと酢の物が横に置かれた。

 目の前に沢山並ぶ料理の中から、この人はなんで私の好物ばかりをお勧めしてくるのか……。

「あの……、失礼なことを聞きますけど、私のこと、知ってます?」

 着物は着なれてない感じだったのに、お箸の使い方は上手だった。

「…………ああ、知ってる」

 やっと、マトモに私と会話した彼の低い声は、なんでかものすごく耳にすんなり入ってくる声だった。


 私の記憶のあやふやな部分に、多分この人のことがあるんだってことはなんとなく感じた。

 でも、昼間の今はそのことをあまり重要に思えなかった。


 *****


「あら、客間をご用意いたしましたので、そちらでお休み下さいませ?」

 にこやかに、でも有無を言わさぬ笑顔でお母さまは言った。

「アオは?俺のとこにいてくれないの?」

 アーネスト様が悲しそうな顔で私を見て言った。お母さまの前でやめてー!

 うあ、しかも、めったに見ないおかあさまの青筋がっ……。

「え、えと、今日は久しぶりなのでお母さまと一緒に休みます」


 夜になって、就寝時間になってもアーネスト様と私は客間にいた。

 さすがにお屋敷で同室は無理……と思っていたのは私だけだったようで、アーネスト様は私と寝るつもりだったようだ。


 *****


 お母さまに連れて来られたのは、私の部屋。

 久しぶり……のハズなんだけど、あれ?最近ここで寝て着替えたような気がする。


「アオイ、あなたの話を聞かせてちょうだい?」

 お茶を入れてもらって、落ち着いたところでお母さまに聞かれた。

「話……。あの、私、アーネスト様と結婚の約束をした…………らしく?えっと、父上に報告しに……来た……んだけど……」

 部屋は庭に面していて、縁側がある。

 何気なくそちらを見る。

 なんだろう……。

 ここで、誰かとお茶を飲んだ……?


「昔から言っていたわね。ウチの跡継ぎは腐るほどいるから、アオイは自分の好きになった人と結婚しなさい、って。それは覚えてるの?」

「覚えてる。だって、小さい頃から言われてて、私、求婚の文に憧れてて…………文?……」


『ちゃんと求婚の文を送るから、受け取って?』


 優しげにフワリと微笑む銀髪を、思い出した。

「―――シン?」

 いや、シンのことはちゃんと覚えてた。思い出したのは、私、シンから文をもらう約束をしてたこと……。

 あれは、いつのことだった?

 暗かった。

 なんか、高いところだった?

 逃げてて……、誰かに、追いかけられてた?


「アオイ。記憶が無い部分がある、とリンから聞いたわ。それで、その状態でアーネスト様と結婚していいの?」

 アーネスト様と、どう出会って、どう求婚されたのか、覚えてない。

 急にそのことが不安になった。

「あれ?私……アーネスト様のこと…………」


 ―――ホントウにスキなのかな?


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