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逃げられ王子と追われる令嬢  作者: キョウ
第1章

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44/127

44: 会議 (レオンハルトside)

すいません。だいぶ間が開いてしまった……。

「リン!やっと繋がった!大変なことになってるんだぞ。お前、今ドコに……。…………。は?何?…………なんだって!?………」


 会議の途中、突然立ち上がったハヤテが人目も憚らずリンと会話してる。

 2人がその能力を隠していたことは知ってたけど、今はそれどころではないと思ったのか、大っぴらだ。


 *****


 会議はまずはお互いの情報を交換しあった。

 こっちはヤトを知らないし、あっちはアーネストを知らない。


 ヤト、という男はマサユキの父方の叔父で、かなり歳の離れた兄弟だったらしい。

 それまでも、あまり人付き合いをせず、屋敷の自室に引きこもり、魔法の研究に没頭していたのが、ある日突然出奔。以降、何度も捜索したものの、ずっと消息不明だったらしい。

 先日のあの襲撃までは。

 この会議に出席しているものは、どうやらあまり詳しく知らないようで、まだ何かありそうな気がする……。それはマサユキに聞いた方がよさそうだ。


 どこでどう2人が繋がったのかは謎だ。

 しかし、どうやってフィオが華旺国に戻ったと知ったのか……。

 タカユキが無茶して一気に飛んだと聞いたら尚更だ。と、思っていたら、捕まえたアーネストの仲間(もはや仲間とは言えないが)からシンが聞き出したことによると、だいぶ前からずっとフィオのことをつけていたらしい。

 それを聞いた俺は自己嫌悪した。

 フィオの側にいたのに、そのことに気付けなかったからだ。

 やり方が巧妙だった。

 アーネストは俺が魔法が使えると気付いていた。だから、魔法を使えば楽に出来る尾行を、あえて人海戦術で行っていたらしい。俺に気付かれないように。

 なまじ魔法が使えると、魔法に敏感になる。発動した時はもちろん、使った後の痕跡に気付くこともある。その分、魔法以外のことに鈍くなっていたのかと思うと、自分がまだまだ未熟だと痛感した。


 *****


「リンの話によると……、アーネストの魅了の魔法で、お嬢は自分がアーネストの婚約者だと思い込まされてるらしい……。しかも、記憶がない部分もあるようで…………」

 リンとの会話を終えたハヤテが困惑ぎみに言った。

「結婚を……認めてもらうために、こっちに向かって来ている、とも……」

 俺もだが、シンも殺気立った。


「アオイを連れて行った、ということは、龍の伝承を知ってのことだと思う。まあ、ヤト様もいたしな。その、アーネストとやらの魅了の魔法を使うつもりなんだろうが、果たしてそれが龍の伝承に効くかどうか、わからない」

 キクノスケ、という一見優男に見える長男が、場を取り仕切っていた。

 上背はあるが、細身でスラっとしている。マサユキとはまた全然違った雰囲気だが、次期国王らしく統率力がある。


「レオンハルト殿下」

 キクノスケが急に俺を呼んだ。

「あなたはどうなさるおつもりで?」

 そこにいる全員の視線が集まる。

 ここにはフィオの親戚=王族関係、四大富豪の長とその側近、あとは警備や戦闘に特化した能力を持つものを集めた、と聞いた。

 もちろんシンもいる。

「アオイの婚約者候補の2番目、と父からは聞いています。しかしあなたは他国の王族だ。1番目のシン・タチバナとはお立場が違う。あなた個人の感情で動いているのか、グーラート王国第三王子として来たのか、ご意向をお聞きしたい」

 シンが射ぬくような目線で俺を見る。

「ご返答次第では、このまま国に帰って頂く」

 静かに放たれた言葉には芯が通っていた。

 まったく、小舅がわらわらいてやりづらいったらねぇな。

「先程、グーラート王国、第三王子レオンハルト・フィンレー・グーラートとして、華旺国第一王女アオイ・キサラギに正式に婚約を申し込んだ。国王からの書状をマサユキ殿にお渡しして受理された。まずはグーラート王国の作法に乗っ取って求婚させてもらった。こちらの作法では、2()()()()()()()出来ないだろう?アオイを取り戻し次第、再度申し込ませてもらう」

 皆に聞こえるよう、ハッキリ宣言した。

 シンの瞳が一瞬揺らいだのを見た。シンも俺を見ている。そのままシンに向けて言った。

「アオイ本人にも既に求婚している」

 ざわり、と少しどよめいた。

 フィオめ……。誰にも言ってなかったな。

「自分で言うのもなんだが、魔力はそこそこある。実戦経験もある。フィオを連れてくる、というなら前回のような戦闘になる可能性は低いが、有事の際には使える、と……言いたいところだが既に失態をおかしてるからな。挽回させて欲しい」

 キクノスケではなく2番目の兄のフヨウが言った。

「先程のリンからの話だと、アオイの記憶がないかもしれない。もし、アオイがお前のことを覚えてなかったら、どうするつもりだ?」

 意地の悪い質問だな。

「そんなこと、もう一回惚れさせるだけだろ」


 *****


 魅了で黒の蝶の伴侶になる。

 今までそんなことをする奴がいなかったようで、マサユキですら効果があるかどうかわからなかった。

 そのため、フィオの帰りを待ち、状態を確認してから対策を考える方向で話はまとまった。

 とはいえ、無理矢理さらって魅了をかけて……、などという非人道的なやり方に、憤る面々も多々いて、ひと悶着あった。

 が、婚約者候補のシンと俺が対応すると言うと、心情を察してくれたのか収まった。


 それから、フィオがこちらに到着するまで、この屋敷の客間に滞在させてもらった。

 和室、という畳の部屋で、床に直に寝ることに抵抗したアランだったが、俺が気にしてなかったら大人しくなった。

 素足で過ごし、着物の着方も習った。

 フィオ……、アオイがどのように暮らしてきたのかを体感しているのは嬉しかった。


 しかし、時折入るリンからの報告に、シンと2人でやきもきすることになる。

 どうやら、リンとハヤテの会話は近ければ近いほどハッキリ長く出来るようで、リンがアーネスト達の隙をついて、ちょくちょく報告を入れてくれるようになった。


 それによると、夜になると魅了の魔法はかかりが弱くなるらしい。

 アーネスト自身は魅了という特殊魔法を操れるものの、魔力はそんなに沢山あるわけではない。

 旅の途中でも、魅了を使って様々な協力者を得ていたらしいが、用が済めばすぐに解放していた。かけられた方も、ちょっと知人を手伝った、くらいな認識で、操られたと認識している人はいない。

 けれど、フィオにはずっと魅了をかけ続けている。

 それが、夜になると弱まるのに、朝になるとまた元通りになっていることにリンは気付いた。

 夜は大抵宿屋でアーネストと同室で就寝しているらしいが、リンはその時に何かがある、とふんでいるようだった。


「「同じ布団で寝ているようですが、手は出されていません。ご安心下さい」と、伝えて下さい…………って、言われましたが」

 俺とシンから尋常ならざる魔力と冷気がブワリと沸き上がったのを、ハヤテは器用に避けた。

「ほう…同衾とは…命が惜しくないのですかね…」

「ふざけんな。現れたら()るに決まってんだろ」

「お二人とも、落ち着いて」


「もう一つ、お伝えしなければなりません」

 変にかしこまったハヤテが俺をまっすぐ見て言った。

「レオのことをきれいさっぱり覚えてないらしい」

 フヨウにその可能性を示唆されていたにもかかわらず、頭が真っ白になった。

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