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逃げられ王子と追われる令嬢  作者: キョウ
第1章

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43/127

43: 金髪の人物

 鬱蒼とした森の中から、突然わらわらと青い和服の男達が現れた。

 お、覚えてる。

 里の男達の顔は、ちゃんと私の記憶の中にあった。

「アオイ様!ご無事でしたか!!」

 壮年で小柄ながら、里一番の健脚を誇るマタキチが、急斜面を駆け下りて来た。

 他の者も続いて下りて来た、その5、6人の中に一際目を引く人がいた。


 こちらをじっと見ている男は、金髪だった。

 華旺国にも黒じゃない人はチラホラいる。だけど、こんなに見事な金髪の人物に覚えはない。

 里の者達より頭1つ分飛び出た長身。そのくせ頭が小さく腰が高い。かといって貧弱なわけではなく、はだけぎみの合わせからはガッシリした胸板が見えている。

 っていうか、和服、着なれてない感じだな。

 でもって、なんでかわからないけど、ずっとじっと見られている。

 近くに来たら、ものすごい綺麗な黄緑色の瞳だと気付いた。

 すごい、吸い込まれそう。しかも、瞳の色に劣らず、顔の造形もめちゃくちゃ整っていた。

 す、すごい。睫毛長っ!唇、色っぽ!

 思わず私もその人をじっと見てしまった。


「お前、よくものうのうと再び現れたな!」

 突然、剣呑な雰囲気になった。

 マタキチが、アーネスト様に向かって殺気を放っている。

「今回はちゃんと先触れも出したし、正規のルートから客人として来てるんだけどなあ?国王から、聞いてないの?」

「聞いたからこそ、ここまで迎えに来たのだ。この先は案内人無しでは通れない。それは姫様も同義」

 マタキチが私に向かって言った。

「姫様、マサユキ様が大層ご心配されております」

 コクン、と頷く。

 私の記憶が怪しいことも、父上には報告済みらしい。

「とにかく、父上に会います。案内をお願い出来る?」

 マタキチを始めとした里の者達が皆頷いた。


 この奥に里があるのだが、この森は奥に行くほど人の方向感覚を狂わせ、魔法も発動しにくくなり、日の光も指さず時間感覚さえわからなくさせる、旅人を惑わす森なので、案内人がいないと通り抜けることは出来ない。

 良くて元の場所に出るか、最悪は迷ったまま死ぬまで出られないか、のどちらかだ。

 里の案内人はそんなこの森を熟知していて、外との物資や人とのやりとりを担当する、里でもかなり重要なお役目処だ。

 そんなポストにいるこの金髪の人物は何者なのだろう?


「ずっとこちらにいらしたのですか?」

 アーネスト様がその金髪の男に話しかけた。

「ああ」

「ずいぶんとご執着なさってるようですが、伝承をご存知で?」

 ……敬語?

「関係ない」

 男はぶっきらぼうに簡潔にしか答えない。

 何者なのか、後で父上に聞こう……、と思いながらゾロゾロと獣道を進んで行った。


 *****


 華旺国の近くの街まで来た時、リンがアーネスト様に言った。

「あの……、華旺国へ正式に入国するつもりなんですよね?」

「そのつもりだけど。本当はここまで来れば行き方知ってる人がいるんじゃないかと思ってたんだけど、もしかしなくてもリンは知ってるね?」

「はい。では、しばらく単独行動させてください」

 言われてから気付いた。

 確かに、リンも私もずっとアーネスト様かヤトかどちらかが必ず一緒に行動していた。

「え、でも、ヤトも華旺国出身なら知ってる……のでは?」

 私が言うと、ヤトはサラリと否定した。

「俺はだいぶ前に出奔した身だからな。知ってる奴がいたら拒否されるかもしれん」

 どういう人かわからなかったのが、ますますわからなくなった。

 かくいう私も、覚えてるかぎりでは、途中までは今みたいに街道に沿って旅をして、ある程度近づいてからお父様に飛んでもらってたので、陸路の正規ルートで入国したことがない。なので、案内人がいることは知っていても、細かい連絡方法などは知らない。

「まあ、いいよ。ここまで来たし、今更君が何かしてもどうにもならないしね」

 アーネスト様が了承すると、リンは町のどこかへ消えた。


 *****


 ここまで来る途中、アーネスト様はひたすら甘かった……。

 言葉はもちろん、エスコートは完璧だし、私がちょっとでも気になったものにすぐ気付いて買おうとしてくるし、やたらと甘やかしてきた。

 どういう経緯で婚約者になったのか、まるで思い出せないけど、以前からこんなに甘々だったのかしら。


 気になるのは、リンが道中ずっと困ったような顔をして、なんだかよそよそしいっていうか、多分、私の記憶があやふやなせいなんだろうけど、以前はもっと親しかった感じがする。

 特にアーネスト様とは必要以上に会話してない。

 それ以外にも、何かがちぐはぐなんだけど、それが何かわからない。

 結局、そのままここまで来てしまった。


 アーネスト様は父上に結婚の許しをもらう、と言っていた。

 以前から、一応一国の姫なのに、結婚相手に関しては「お前の好きにしろ」と言われていたことは思い出してる。

 だから、私とアーネスト様と2人で願い出たら、父上は許可を出すだろう。

 出す……、と思う……。


 でも、私は本当にアーネスト様と結婚したいのか、実はわからなくなってきている。

 優しくて気を使ってくれて大事にしてくれてることは、分かる。

 でも、そこに微妙に感じる違和感。

 最近になって気付いてきたのは、夜になるとその違和感が増すのだ。

 でも、朝になると別段気になることなど何もない。

 この落差に気付いて、益々不安になった。

 記憶どころか自分の感情ですら、自分で把握してない。

 見えないガラスの橋を渡っている感じ。このまま進んでいいのか、判断できない自分が信じられない。

やっと、会えたー!

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