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逃げられ王子と追われる令嬢  作者: キョウ
第1章

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34/127

34: ヤト

 扉に鍵はかかっていなかった。

 ネグリジェなのが気になるところだけど、そう言ってもいられない。

 部屋の中を捜索したけど、クローゼットやチェストには何も入っていなかった。

 そっと扉を開けてみる。

 もといた部屋も、調度品やファブリックの様子から、そこそこいい貴族のお屋敷だとは思っていたけど、廊下を見て更に確信した。

 こんなに余裕のある造りの建物は、貴族でもお金に余裕があるような高位の貴族でないと持てない。

 とはいえ、さっきから人の気配がない。このレベルのお屋敷なら必ずメイドや下働きがいるハズなのに……。


「その格好で外へ出たら風邪引くか、すぐ拐われるか、どっちかだな?」

 気配なんてなかったのに。

 振り返ると、さっきまでは無人だった廊下にヤトがいた。

 黒いローブは着ておらず、シャツとベストにトラウザーズと、ごく普通の貴族男子の格好をしている。

「飯はちゃんと食ったのか?」

 あまりにも普通な対応に面食らう。

「ご飯、頂きました。ありがとうございます。出来ればちゃんとした服を下さい。そして私を帰して下さい。ここ、どこですか?」

 ちょっとビックリした顔で怯んだあと、フハっと笑った顔が父上に似ていて、ドキッとした。

「肝が座ってるな。さすが黒の蝶。とりあえず部屋に戻れ。ここはグーラート王国に近い街、とだけ言っておこう」

 そう言ってさっきの部屋のドアを開けてくれた。


 *****


 そして、なぜか今ヤトと向かい合ってお茶している……。

 服はマキノが持ってきてくれた。1人でも着れるデイドレスで、落ち着いたデザインにクリーム色で安心した。

 起きた時の痺れのようなものは、もうなかった。あの時投げられた玉から出た白い粉のせいだと思うんだけど、あんなすぐ意識が途切れる薬って……、と思うとちょっと怖かった。

 でも、私が今回復しているように、レオも回復していると信じるしかない。


「お茶、入れるの上手いな」

 お屋敷を襲撃された時は、ローブのせいもあったのか、とにかく不気味で威圧感が凄かったのに、今目の前で武骨ながらも丁寧に紅茶を飲んでいる姿は、落ち着いた大人の男の人だった。

「あの……、なぜ私を……?」

「お前……、名前はなんといった?」

「アオイです」

「アオイ、自分の価値をわかってんのか?」

 それは、あの龍の伝承の……。

「実は、最近伝承のことを知ったので、あんまり実感してないっていうか……」

 自分の周りで手一杯だった、っていうか……。

「里では皆何かしらの魔法が使える。ところが他の国はどうだ?魔法が使える奴は20人に1人いるかどうか。そしてたいした魔力もない。今は戦をしていない世の中とはいえ、魔力豊富な奴らが助けてくれる、などという話、国や権力を持つものがそっとしておいてくれるわけないだろう」

 そう……ですね……。

「まあ、里のもの達はそんなお前を守るのに何の疑問もわかないけどな」

 なんか、言い方、キツい。

 父上から話を聞いて、私だってちょっとは考えた。

 里の人達の人生を左右するような決断を、私1人で決められない。なのに、父上は「自由に選べ」って言う。そんなの、無理なのに……。


「で?あの金髪の美丈夫がお前の選んだ相手か?」

「きんぱ……、レオのこと!?ち、違う、違う!選んでないっ!」

「じゃあ、銀髪の……」

「そっちも違いますっ!」

「そうか?てっきり金髪の方かと思ったが……」

 そう言いながら、ベストのポケットから見覚えのある小さい巾着を出してきた。

「それっ!」

 すっかり忘れてた。

「コレは金髪の方に反応していたぞ?」

「……えっ……」


 ―――カタカタ鳴っていたのよ


 お母さまの言葉を思い出した。

「なんで、そんなことあなたにわかるのよ」

 ヤトは巾着の口を開けて取り出そうとしている。けど、指を袋に入れたとたん、「っつ……」と呟いて手を引っ込めた。

「俺は気に入らないらしい」

 そう言って巾着を私に放り投げてきた。

 そっと中を覗いてみたけど、前と変わらず魔力駄々漏れの爪があるだけだった。

「金髪に抱きあげられてた時、着物の合わせに入れていたな」

 こくん、と頷く。

「お前らは気付いてなかったが、胸元でハッキリ光っていたぞ」


「あー!何2人だけでお茶してるの!」

 ノックもせず、部屋に入るなり非難してきたのはアーネストだった。後ろにマキノもいる。

「うん。だいぶ顔色も良くなってるね。これなら()()()()かな」

 アーネストは、整ったモテそうな顔で表面上はニコニコしてるのに、瞳が笑ってない。

 対面してやりとりするのに、ヤトはそういう取り繕ったことはしない点では、まだマシだった。

 この人は……不気味……。

「何を……させるつもりなの?」


「先日、お茶会でフローラ伯母様に会ったでしょう。あの方は本家の長女で、伯父様は婿養子なんだよね。俺はおばさまの妹の次男で、親戚とはいえ外に嫁いだ血筋だし、ほとんど交流はなかったんだ」

 1人用のソファーに座りながら、唐突に家系の話が始まった。

「「魅了」の魔法に目覚めるまでは」



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