表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
逃げられ王子と追われる令嬢  作者: キョウ
第1章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

27/127

27:帳(シンside)

 アオイを守るべき力をつけろ、と言われていたのに、守れなかった。

 確かに、当時13歳の俺ではまだ色々な力が足りなかった。けれど、申し訳なくて悔しくて情けなくて。それからの俺はアオイの護衛になるべく修行に猛烈に取り組んだ。

 力をつければ、アオイの側にいられる。

 遠くへ行ってしまった彼女は、たまに里に帰ってきた。再び王都へ行く時には、必ず付いていける男になると強く思った。


 母は奴隷だったけれど魔力が高く(そのせいで奴隷になっていたくらいに)、幸いにもそれを受け継いでいた俺は、黒でなくても能力は高かった。

 しかし、黒でないことが仇になった。


「シン、お前は諜報部隊に入ってもらう」

 マサユキ様にそう言われた時、俺は17になっていた。

 諜報部隊がどういう部隊かは知っていた。

 アオイが拐われた事件の後、それまでも外国の情報を知るために活動していた部署を、強化するために新たに人員を増やす計画に抜擢されたのだ。

「国外を、転々としてもらうが……」

 マサユキ様は俺の気持ちを知っているからか、言い淀んだ。

「やらせて頂きます。それが、アオイを守ることに繋がるなら」

 そうして、旅芸人に扮するために芸人の修行先に行く前に、アオイのいる領地に寄った。


「シン!旅に出るって、お父様から聞いたわ」

 出迎えてくれたアオイは、レディになりかけのまだ無邪気な女の子だった。

「そうなんだ。各地を転々とするから、アオイが里に帰ってきても会えない」

「そんな……」

「任務がないときに会いに来るよ。アオイ、俺を待っててくれる?」

「え?」

 その時にはもう、気付いていた。

 この大人になる前の蕾の中に、いつの間にか金色の芽が出ていることを。

 それでも、言わずにはいられなかった。

「アオイ。君が姫だから、とかではなく、幼い頃から好きだった。今すぐじゃなくていい。俺との将来を考えてもらえる?」


 *****


 華旺国へ行くためには、このグーラート王国から早馬を乗り継いでも7日はかかる。

 それは最短の話で、馬は代われるが、人は代われないので、途中休憩などを挟むと10日以上はかかる長旅だ。それに加え、手前の里からは険しい山を登らなければならない。

 諜報部隊はその山を登る裏ルートを確立しているが、それでも難儀な山であることは確かだ。


 更には今、王都から出てすぐの街……、先日アオイと出会った街で、大きな川に阻まれていた。

 上流で大雨が降ったらしく、増水し、流れが早く、とてもじゃないが渡し船が出せないらしい。

 こちらは天気もいいし、風もほどほどなのに渡れない。

 この街に1泊して様子を見ているが、濁流は勢いを衰えているように見えない。

 俺の風魔法で帆を操って船を操作してもいいのだが、まだまだ長い道中で無駄に魔法を減らしたくない。回復するのに休んでいたらもっと時間がかかってしまう……。


「シン様。ゴロウから連絡がありました」

 メイド服ではなく、街娘の格好をしたリンが、肩に大きなカラスを乗せて、川縁に座っていた俺のところに来た。

 ゴロウは諜報部隊の連絡係りで、伝達に様々な動物を使う。それが彼の得意魔法。

 そのなかでもこのカラスの「(とばり)」をよく使うのは、この子が俺とゴロウによく懐いているからだ。

「帳、ご苦労様。足を見せてごらん?」

 俺の腕に移ってきた帳は、クルル……と喉を鳴らして、片足を上げた。

 くくりつけてある筒に文が入っている。

 巻かれている小さな紙を広げると、華旺国の諜報でしか使わない文字で、何やら長文が書いてある。

 リンも読めないその文字を追っていくと、あまりいい知らせではなかった。

「どうやら、皆散々になったようだね」

「大丈夫でしょうか?」


 ゴロウによると、あの夜俺とアオイが抜けた後も、特に混乱はなく興行は進められたらしい。

 途中、ボックス席から王子とハヤテ達が抜けたのは確認した、と書いてある。

 幕が下りて、お客が退出するのと同時に団員達は紛れて劇場を離れる計画で、数人が出たあたりで、周りに待機していた兵が乱入してきた。

 この混乱で、誰が捕まって誰が逃れたのか、わからなくなったようだった。

 例え1人になったとしても、皆自力で里には戻れるだろう。

 只、時間がかかる奴もいるかもしれない。出来るだけ、数人で合流して向かってくれているといいのだが、この文を書いたゴロウも1人で動いてるようだ。

 ゴロウは1人で里に向かう、と記しているが未だこの街では会っていない……。


 とりあえず、現状を里にも知らせておくか……。

 帳はここから何日で里まで行けるだろうか?と、思案していたら、後ろから気配もなく声がした。


「連れてってやろうか?」


 振り返ると、庶民風を装ったものの、その品格を隠しきれない金髪と黄緑の瞳の男が、ニヤリと笑っていた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ