表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
逃げられ王子と追われる令嬢  作者: キョウ
第1章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

23/127

23: 華旺国にて

「悪りぃなぁ、アオイ。この里の命運はお前が握ってンよ」

「は?」

父上は、全然悪く思ってない顔で言った。


*****


お父様は、グーラート王国から一気に華旺国までとんだ。

確かにお父様は移動魔法が得意魔法だ。だけど、こんなに長距離を一気にとんだのは初めて見た。

そして、着いた場所がドンピシャのお屋敷の中だった。見覚えのあるここは、お屋敷の中の王族の私室へ繋がる廊下。

「お父様……、すごい……」

すごいけど、なんだか頭がグラグラする。

と、フラついたら、お父様が倒れた。

「お父様!!」

自分も立っていられず、しゃがみこむ。

「んな無茶すりゃあ、そうなるな」

廊下の先から、野太い聞き覚えのある声がした。

顔を上げると、いかつい髭面をフワリと柔らかくした父上がいた。

「父上……、只今、戻り」

「そんなモンはいいから」

そういって私をヒョイっと抱き上げて、後ろを振り返った。

「タカユキを運んでくれ。治療師をすぐよこせ」

「承知しました」

後ろにはキクノスケお兄様もいた。

私を見て、優しく微笑んでくれた。

「アオイ、おかえりなさい」

そう言って、私の足から靴を脱がせた。


父上は私を私の私室まで運んでくれた。

長いこと使用していなかったのに、襖を開けたら、埃っぽくもなく綺麗なままだった。

「タカユキは一気に力を使いすぎたんだ。魔力が溜まれば回復する。お前は、まあ、慣れないから酔ったんたろう」

布団に寝かしつけられた。久々に畳の上だ。

「父上……わたし……」

「今日はもう寝ろ。話は明日聞く」

大きい手で頭をワシワシ撫でられた。

その手が目の前でパチンと指を鳴らした。

それを見たか見ないかのうちに、すぅっと寝入ってしまった。

久々に見た、父上の魔法発動合図(サイン)に、帰ってきたと実感した。


*****


「アオイ?起きたか?入っていい?」

朝になると襖の向こうから声がした。

「フヨウお兄様、大丈夫よ」

スラっと襖を滑らして顔を出したのは、2番目の兄フヨウだった。

長めの黒髪を後ろに流して、容貌は一番父上に似ているフヨウ兄様は、私に一番甘い。

「おはよう。もう体調は平気か?」

「うん、大丈夫。フヨウ兄様、久しぶり。お兄様も元気そうでなによりです」

「朝めし、食えるか?」

男らしい精悍な顔でニカリと笑って、大広間を親指で指す。

相変わらず皆でご飯を食べる習慣はそのままなのね。

「着替えてから行く」

「わかった」

フヨウ兄様が出ていった後、久々に自分の箪笥を開けた。

ずっと洋装だったから、着物を着るのは本当に久しぶり。着れるかな。

普段着でいいだろう、と紬の着物と半巾帯、襦袢と腰紐を出していたら、また外から声がかかった。

「アオイ?着替えてるの?」

お母様だった。

ちょうどいい、手伝ってもらおう。


「アオイー!昨日、夜遅くに帰ってきたと聞いてたけど、大丈夫だったか!?」

4番目の兄サクラが声をかけてきたのを皮切りに、大広間に集まっていた家族皆が心配してくれていたのか、声をかけてくれた。

「オラ、話しは飯食ってからだ!」

父上の一括で皆各々の席に着く。

グーラート王国の作法とは全く違う。でもすごくほっとする。

隣でフヨウ兄さまが「これも食え、あれも食え」と勧めてくれるのを一生懸命食べた。

食事を終えて、使用人と共にみんなで片づけて、広間は上座に座る父上とお母さま、私の三人だけになった。


「さて、聞きたいことと言いたいことを話せ」

お母さまから湯飲みを受け取った父上は、緑茶を啜りながら鷹揚に言った。

「まずはお父様…タカユキ様のご容態をお聞きしても?」

「ああ、意識もしっかりしてるし徐々に魔力も戻っている。数日寝てりゃあ大丈夫だろ。アイツもキサラギ家のものだ。見くびってくれるな」

「安心いたしました」

朝食にもいなかったので、心配していたのだ。

「それと、リンやハヤテ、シンから連絡はありましたか?あの一座の誰かからでも…」

シンは移動魔法は使えない。王都を無事脱出できたとしても、自力で戻ってくるならあと数日はかかるだろう。団員達も興行をちゃんと終えたのか、そのあとどうする計画だったのか、シンから聞かされてなかった。

ハヤテは、レオに捕まってるならちょっとやそっとじゃ逃げ出せないだろう。

リンに至っては、あの宿屋で別れてから会ってない。ハヤテとは連絡を取り合っていたけど―――

「誰からも連絡はねぇな」

父上の一言で落胆する。

まあ、昨日の今日なのでまだ情報が来てないのも当然か、と納得した。


「でェ?すんげえ追っかけられたって?」

急にニヤリと悪者みたいに笑う父上は意地悪だ。

「すんげえ追っかけられました」

「これ、女の子がはしたない!」

父上の真似をしたらお母さまに怒られた。

「いいのかよ?」

父上が急に真面目になって聞いてきた。

「……。向こうは……色々とあるようで……。私がいると、政治的にもやっかいなことになりそうだったので…」

とたんにエレオノーラ様に言われたことを思い出してしまった。

「って、いうか父上!「突然去る日」で私、帰国したんじゃないんでしょうか!?」

なのに「いいのか?」ってどういうことよ。

父上はちょっと困ったような顔で言った。

「それな。お前の気持ち次第だったんだがよ。タカユキがそう判断したんだな」

「そう、って何!?」


「レオンハルトとかいう金髪野郎が、アオイを泣かせたってことだろ?」


「……………… は?」

言ってる意味がわからない。

だって、私は父上に「突然去る日」が来るから、心しておくように、って言われてた……ハズなのに……。

「え?っと、確認、なんだけど、「突然去る日」っていうのは、私次第だった、ってこと?」

「お前次第、っつーか、お前が幸せになれるか次第」

「へ?」

益々、混乱してきた。

私が幸せになれないとお父様が判断したら戻ってきた、ってこと?


「もう、アナタ、説明が下手すぎます」

今まで口を挟まなかったお母さまが言った。

「アオイももう成人していることですし、話すべきですわ」

「でもよ、聞いちまったら、ますます選べねぇんじゃねえ?アオイの性格的に」

 なんの話をしてるの?

「黒の蝶と産まれたなら、自分の運命を受け入れるべきですわ」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ