誘い
ユウセイとスルトは湯船から上がり、タオルで身体を拭いてから更衣室に戻った。
ユウセイはバスタオルで再度身体を拭き、白いロングTシャツと黒いスウェットパンツを着用して、荷物を持って大浴場を後にした。
そのまま共有スペースにある洗濯受付所に行き、制服とバスタオルとタオルを受付係に預けた。
その後、食堂で瓶に入った牛乳を買い、端の席に座って牛乳を飲み始めた。
(うめぇ〜、やっぱこれだよな〜、…最高だ)
「うぃ〜、ユウセイ、お待たせぇ」
髪を上げたスルトが、牛乳を持ってユウセイの隣に座った。
「あ〜、そんな髪のやついた気するわ」
スルトの髪を見たユウセイが言った。
「ん?どゆこと?」
「あ〜、いや、髪下ろしてたから分かんなかったけど、その髪型見たら、教室にいたわこの人って思ったんだ。髪そんな上げ方してるの珍しいからね」
ユウセイは少し笑った。
「あ〜そういうことね、そうだな。この髪型気に入ってんだよな。ハハッ」
スルトは牛乳を一気に飲み干した。
「カァァァァァァアア、ふぅーーー、うめぇーーー〜」
スルトは空になったビンを机に置いて、ユウセイの方を見て言った。
「なぁ飯取り行こうぜ」
ユウセイはスルトの方に顔を向けていたが、口は半開きしており、目が少し見開いており、その目はスルトを見ていなかった。
「おい、どうした?」
スルトがそう言うものの、ユウセイは反応しなかった。
スルトはユウセイが見てそうな場所を見ようと後ろを向いた。
スルトの目に映ったのは、金髪ボブで水色の瞳をしていて、ダークブルーの長袖パーカーに、同じ色のスウェットパンツを合わせた女子と、その横にいた2人の女子だった。
(あいつらか?)
スルトはユウセイの方に向き直した。
「おい、ユウセイ?」
反応なし。
スルトはユウセイの肩を掴んで揺らした。
「おいユウセイ?大丈夫か?」
「ぁああぁあ、あ、大丈夫。ありがとう」
ユウセイが喋った。
「あ、動いた。あのさ、もしかして気になってる子って、金髪ボブと青髪ツインテールと水色ショートヘアのどれかか?」
「え、なんでバレて」
「いやなんでってめっちゃ見てたもん。顔ポカーンってしてさ」
「あ、ごめん」
「全然いいよ。でさ飯取りいこ」
「あー、うん」
(か、可愛かった〜、何あれ、湯上がりの顔可愛すぎんだろ。てか、私服…、可愛い〜。…好きだ。……てか、友達いたんだ)
ユウセイは塩ラーメンと炒飯と餃子、スルトは醤油ラーメンとドラゴンカツカレーライスと餃子を頼んで、受け取り、元いた席に戻った。
2人は食事の挨拶をし、食事を始めた。
スルトは物凄い勢いでかき込んでいた。だが、その食べ方は綺麗だった。
少しして、スルトが話しかけてきた。
「あのさ、あの3人の中の誰が気になってるの?」
「金髪の子。シュメラ・スイハって名前で、俺の隣の席なんだよ」
「あ〜、思い出した。自己紹介してたわ。てか隣の席めっちゃ良いじゃん!! いつでも話しかけられるぜ?」
「そうだね」
「なんか頼れることあったら言って、手伝えることあったら手伝ってやるからよ」
(え、マジで良い奴すぎる〜)
「うん。ありがとう」
2人はご飯を食べ終わった。
ユウセイはスルトと別れ、自室に戻った。
次の日。
ユウセイとスルトは一緒に教室へ向かっていた。
「今日どこか誘うのか?」
スルトが聞いた。
「うん。その予定だけどさ、どうやって誘えばいいか分かんないんだよ」
「んー、今日水族館行きたいんだけど、今日一緒にいける友達いないから一緒に行かない? はどうだ?ちなみにもし、スイハが他の友達は? てか、ユウセイってこの学校に俺とスイハ以外に友達いるのか?」
ちょっと声を高くしてノリノリで話していたスルトだが、急に声のトーンが戻り、聞いてきた。
「いや、ここにはいない」
「そうか、じゃあ他の友達は? とか、昨日仲良く喋ってた子は? とか聞かれたら、あいつ忙しくて無理らしいって言っとけ。後はユウセイの頑張りだぜ? まぁこんなこと言ってるけど最後はユウセイ、お前が決めろよ」
「うん」
ユウセイはスルトと教室に入った。
(あ、もういる)
スイハはもう席についており、水色ショートヘアの女子と一緒にいた。
(あの子、昨日食堂でスイハと一緒にいた子だ)
「頑張れよ」
スルトはユウセイにだけ聞こえる声量でそう言い、1番右側である、廊下側の席に向かった。
ユウセイは自分の席に向かった。
「今日タイソと動物園行くんだよね〜!」
「ついにじゃん。ずっと行きたいって言ってたもんね。よかったじゃん」
「ほんとだよ〜!、マジで楽しみ〜!」
スイハと水色ショートヘアの子が一緒に喋っていた。
ユウセイはその会話を聞いていた。どうやら水色ショートヘアの子が今日タイソという人と動物園に行くらしい。
ユウセイは本を読むふりをしながら、引き続き2人の会話に耳を傾けていた。
それから約15分が経った。
「5分前だよ。教室戻りな」
スイハが水色ショートヘアの子に言った。
「え〜、もっと一緒にいたいな」
甘えるような表情を浮かべた。
「そんな顔してもダメなもんはダメ。さっさと教室に戻った戻った」
「えー、もう、スイハは厳しいなー」
「厳しいじゃなくて普通でしょ。あんたはもうちょっとしっかりしなよね」
「はーい、無理でーす」
水色ショートヘアの子はそう言いながら後ろの扉の方へ歩いていった。
スイハは呆れたように小さくため息を吐いた。
(おはようって言うぞ。恋は)
「おはよう、ユウセイ」
(え、)
ユウセイはその声がした方、スイハを見た。
スイハは柔らかな笑みを浮かべていた。
(か、可愛い)
「おはよう」
「ごめんね、朝から騒がしくて」
「全然大丈夫だよ。あの子、友達?」
「うん、小中一緒なの」
「そうなんだ。元気だね」
「そうでしょ。いつもあんな感じなの」
「そうなんだ…」
(やばい、話が続かない…)
「…あのさ、」
ユウセイが話し始めた。
「なに?」
「今日、水族館行きたいんだけど一緒に行ける友達いないから一緒に行かない?」
ユウセイは少し早口で言った。
「私と?」
「うん」
(嫌がられたかな?)
「今日は、…」
(お願いします)
「空いてるね。いいよ」
(え!?マジ!? よっっっっぉしゃ!!)
「ありがとう!!」
ユウセイは、嬉しそうにニヤけながら前を向いた。
(やべー、めっちゃ嬉しい)
「すごく嬉しそうだね」
「あ、ごめん、気持ち悪いよね」
ユウセイはそう言いながら、俯きつつ右手で顔を隠した。
「全然。ただ嬉しそうだな〜と思って」
ユウセイの顔は熱くなっていた。
「あ、〜ね」
ユウセイはそう言いながら、恥ずかしそうに右手を下ろした。
「そんなに水族館に行きたかったの?」
ユウセイはスイハに顔を向けて話し始めた。
「あ、いや、スイハと仲良くしたくて、行きたいなーって、思った」
ユウセイは恥ずかしくて目が泳ぎ、どんどん声が小さくなっていった。
「え? でも、さっき行ける友達いなくてって言ってなかった?」
(あっ、やべー、しくった。俺ってほんとバカだ)
「あ、いや、その、誘うの恥ずかしくて、誤魔化しちゃった。ごめん!!」
「全然いいよ。初めてだもんね。でもこれからは気軽に誘っていいからね。でも、勉強や自主練したい日もあるから、遊べる日は限られると思う。ごめんね」
(優しい、可愛い、優しい)
「ううん、謝る必要ないよ。逆にありがとう。今日めちゃくちゃ楽しみだわ」
ユウセイは嬉しそうに笑った。
「私も楽しみ」
スイハは柔らかな笑みを浮かべた。
それから時間が経ち、始まりの会が終わり、ユウセイは廊下側の前から2番目のスルトの席に行った。
「ねぇ、成功したよ」
「おー、ナイス。じゃあ、この紙受け取りますか? 受け取りませんか?」
スルトは1枚の折られていた紙を出して言った。
「何それ?」
「デートで役立つかもしれない、助言の書だっ」
「デ、デートって、まだ付き合ってもないのに」
「いや、ツッコむとこそこじゃないから。まぁとにかく受け取る? 受け取らない? お前が決めろよ」
「そりゃもちろん受けとるよ」
ユウセイは紙を取って開いた。
「ほうほう」
「まぁ、頑張れよ」
「うん、頑張るよ。ありがとう」
ユウセイは自分の席に戻った。
ユウセイは今日の放課後を楽しみにしながら学校生活を送り、放課後を迎えた。
ユウセイは早速スルトからもらった紙に書かれていた1つを実行しようとしていた。
その名も、私服に着替えさせて可愛い姿を拝もう作戦だ。
ユウセイは、助言なのか? と思ったが、可愛い姿を見たくてやることにしたのだった。
「ねぇ、私服に着替えてから行かない?」
ユウセイがそう言った。
「いいよ。じゃあ1回寮に戻ろっか」
(よしっ)
「うん」
2人は寮に行き、それぞれが自室へと向かった。
ユウセイは自室に入り、持ってきた数少ない服から、白のトレーナーと黒のスラックスを着た。
(良いのはこれしかないな)
ユウセイは財布をズボンのポケットに入れ、寮の昇降口で白のスニーカーに履き替え、待ち合わせ場所である、校門前まで着いた。
ユウセイは周囲を見渡した。
(まだいなそうだな。どんな格好で来るかな、気なる〜っ。楽しみだな)
少しするとスイハの声が聞こえた。
「あ、お待たせ」
ユウセイはすぐに声がした方に振り向いた。
そこには、黒いトレーナーと青いジーンズを合わせ、剣帯に剣を吊るしたスイハが、小走りでユウセイの方へ向かってきていた。
(か、可愛いすぎる)
「ごめん、待った?」
(そういえば助言書いてあった。オドオドしすぎだ。シャキッとしろって)
「いや、さっき着いたとこだし、全然遅れてないから大丈夫だよ」
「そう、よかった。じゃあ行こうか」
「うん」
2人は歩き出した。




