第29話 「婚約をする男」(後編)
現場での騒動の翌日ーー
ユージは会社を休んだ。
勿論、有給休暇でだ。
結果その日は1日、ユージのヤバい話でもちきりの1日だった…
更にその翌日ーー
昼休み。
「カトゥ、ゾノ、トモヤちょっとえーか」
ユージが三人を呼び出した。
三人は顔を見合わせ小さくタメ息をついた。
「どうしたんですか?」
「何すか?」
「忙しいんすけどね俺」
「すぐ終わるわ、ちょっと付き合えや」
三人はユージにつれられ倉庫の裏へ…
倉庫裏に着くやいなやドヤ顔で、何かを差し出してきた。
「ん?何すかこれ?」
「あっ!指輪…」
シュウヘイが驚く。
「それ…買ったんですか?」
恐る恐るヒロシが尋ねる。
「当たり前やろーが、婚約ゆーたら指輪やろ」
トモヤが聞く。
「いくらしたんすか?」
「30万や!これなら文句なかろーが!!」
(誰も文句言ってないけど…)
「よくそんな金ありましたね」
ヒロシが驚きながら言う。
「ん?三年ローン金利なしや!」
「え?」
「は?」
「マジ?」
三人同時に声が出る。
(コイツの辞書に、計画性という言葉はないんだろーな…)
「150万の目処もついたし、コイツ持ってプロポーズじゃあぁぁぁ…」
「え?」
「は?」
「ウソ?」
突然の激白に、タジタジの三人…
ヒロシが聞く。
「えーと…ちなみにそのお金は…どうしたんですか?」
「は?組合で借りたに決まっとろーが!金利一番安かったしな」
「毎月給料天引きの10年ローンや!!」
「参ったかお前ら」
(アホだ…正真正銘のアホだコイツ)
開いた口が塞がらない三人をよそに、大満足のユージは笑いながら行ってしまった…
二週間後ーー
ノリに乗ったユージは、JALに乗り優雅に旅立って行った。
更に三日後ーー
無事150万を納付、プロポーズも成功!……
したかに見えたユージであったが、どうにも元気がない。
普段であれば“ 自慢の嵐 ”が吹き荒れてもおかしくないのだが…
その日の昼休み。
倉庫の前で座り込むユージの姿があった。
ヒロシたち三人は、プロポーズの結果も元気のない理由も気になり声をかけた。
「お疲れ様です」
「お疲れ~す」
「ウィース!どしたんすかショボくれて」
「おーお前らか…何か用か?」
明らかにおかしい…基本カマチョのこの男がこの反応は異常以外の何ものでもない。
トモヤが探りをいれる。
「まさか、プロポーズ断られてヘコんでんすか?(笑)」
シュウヘイが合わせる。
「まぁ、これで良かったんすよ。」
「確かに150万は痛いっすけど、牛っつぁんにもこれで怒られなくてすむっしょ」
「はぁ?何ぬかしとんじゃお前ら」
「誰がプロポーズ断られたって?モテんお前らと一緒にすんなやボケ」
「えっ?じゃあ婚約成立ですか?」
ヒロシが間髪入れず聞く。
「……」
「まぁ…一応な」
(一応…?)
「金も渡したし、エリも上機嫌で喜んでた…」
「けど…婚約指輪がダメ出しされた」
すかさずヒロシが質問する。
「えっ?でも30万の指輪ですよね?」
「確かに指輪は30万、エリの好みそうなデザイン…けど、間に合わんかったんや…」
(は?何が?)
今度はシュウヘイが聞く。
「間に合わんって、何がすか?」
タメ息をつきながらユージが答える。
「指輪…」
「買った時に手直しに一ヶ月近くかかる言われたけ、文句言ったら店が代替品出してくれて…」
「それ渡したら…プロポーズ舐めんなってキレられた」
(バ、バカだ…改めてバカだ)
ヒロシが諭す。
「わざわざ急いで行かなくても、指輪できてから行けば良かったのに」
「鉄は熱いうちに打てゆーやろが!」
「クソっ……」
こうしてユージのプロポーズ?は、よく分からない状態で幕を閉じた。
捕捉ではあるが、帰りがけにキレたエリにユージが言われた一言が…
「アンタのプロポーズ(仮)だから」
だったそうだ。
今回も最後まで読んでいただき感謝いたします。




