第2話 「出来る男」
昼休み。
食堂の一角で、いつもの光景が広がっていた。
林ユージは、今日もよく食べている。
母親の弁当。
ファ○チキ。
カップラーメン。
「それ毎日っすね」
後輩が苦笑いで言う。
「ルーティンよ、ルーティン!」
ユージはそう言って笑う。
相変わらず、悪気はない。
テーブルの反対側では、
別の話題で数人が盛り上がっていた。
「うちの子がさ――」
「彼女とこの前――」
家族や恋人の話。
どこにでもある、昼休みの雑談だ。
その流れを、ユージが断ち切った。
「うちの会社ほんと段取り悪いわ」
「まぁ俺やけなんとかなっとるがマジで上の奴ら使えんわぁ」
唐突だった。
誰に向けたわけでもない言葉。
だが、本人は話の中心に立ったつもりらしい。
「俺が他でバリバリやっとる時は、あんな手落ち許されんかったねマジ」
「ほんとゼニにならんわ」
一気に喋り出す。
さっきまでの会話は、もうそこにはない。
「結局仕事できん奴ばっかよね」
そう言って、ラーメンをすする。
誰も反応しない。
一瞬だけ、沈黙が落ちた。
「……そうなんすね」
一人が気を遣って返す。
それを待っていたかのように、
ユージはさらに続けた。
「俺の方がマジで出来る方やと思うよ」
自信に満ちた声だった。
実際のところは…
その場にいる誰もが知っている。
彼がそこまでの人間ではないことを……。
だが、誰も否定はしない。
"面倒だから"だ!
「前もさ――」
ユージは止まらない。
自分の話を、自分で広げていく。
その途中で、別の会話にも無理やり割り込む。
「分かるわーそれ!俺も昔さ――」
笑いを取ろうとしたのかもしれない…
だが…
誰も笑わなかった。
また、沈黙が落ちる。
さっきよりも、少し重く長い沈黙だった。
それでもユージは気にしない。
むしろ満足そうに、
ファ○チキをバクつく。
「やっぱ俺おらんとダメやね」
誰も答えない。
ただ、食事の音だけが響く。
別に、珍しい話ではない。
空気が読めない人間は、どこにでもいる。
だが――
それを本人だけが理解していない場合ーー
その場にいる全員が、
同じことを考えるようになる。
「どう扱えばいいのか」
その答えは、
誰も持っていなかった。
次回 第3話 「恋する男」 (5/6 水)
今回も最後まで読んでいただき感謝いたします。




