第27話 「婚約をする男」(前編)
最近ユージがボーッとしている。
元々何を考えているのか分からない男ではあるが、普段に輪をかけて様子がおかしい…
その日の昼休みーー
「ハァーッ…」
喫煙所で、明らかに聞いて欲しそうなタメ息を吐くユージの姿があった。
そこへ偶然通りかかった、今日最も運の悪い男が加藤ヒロシである…
一瞬ユージと目があったが、とてつもなく嫌な予感がしたヒロシは即座に目を逸らしたーー
…が時すでに遅し。
「カトゥ~」
呪いの言葉のような声が、背後からヒロシを呼んだ。
「あ、あー、林さんいたんですか」
「…嘘つけ!お前今、一瞬目があったやろ」
(バ、バレてる…)
「い、いや今日コンタクトの調子悪くて」
「まぁええわ、ちょい座れや」
強制的に座らされる。
「ハァー…」
「さっきから何なんです?どーしたんですか?」
「カトゥ、もし俺が結婚するって言ったら驚くか?」
「え?結婚?するんです…?」
「《《もし》》の話や《《もし》》の!驚くか?」
「えぇ…まぁ…驚きますかね」
「やっぱりか…じゃあ話せんの……でも…カトゥやしなぁ……うーん…」
「いや、エリがな…」
(話すんかい!!)
「こっち来て一緒に暮らしてもええゆーとるんよ」
「えっ?本当ですか?良かったじゃないですか」
「何が嫌なんですか?」
「バカゆーな!嬉しいに決まっとるやろ…けど」
(けど?…なーんか嫌な雰囲気になってきたぞ…)
「六年後の話なんよな…」
「はぁ?六年後?」
「ちょっと何言ってるか、よく分からないんですけど」
「実は、エリには子供が二人おってな…下の子が成人するのが六年後なんよ」
(これ絶対騙されてるヤツだ…ここで金でも要求されてた日には《《鉄板》》だな)
「でな、来年の4月から子供二人が進学するんやけど…その入学金やら何やらにあと150万足らんのやと……」
(はい!キタ━(゜∀゜)━!)
「でもそれ林さん関係ないじゃないですか、自分の娘でもないんだし……まさか!?払うつもりですか?」
「カトゥ、お前はホンマに器の小さい男やの」
「惚れた女が困っとるのに見捨てるんか?俺にはできん!」
(いちいち人を見下すの好きだなこの人は…てゆーかアンタ相手が男なら、簡単に見捨てる男でしょーが!)
そう思いはしたが面倒なのでスルーした。
「で?カトゥはどうしたらええと思う?」
(いよいよヤバイなこの人は…自分の人生すら決められないのか)
「あのですね林さん生意気だとは思いますが、他人にどうしたらとかじゃなく林さんがどうしたいか、そしてどうするかじゃないんですか?」
長引きそうなのでヒロシがバシッと正論を叩き込んだ!
「ハァー…カトゥはお気楽で幸せやな」
「そーゆー問題じゃないんよ、妹の件も含めて金が無いんよ金が!」
「150万もどーせーゆーんや」
「貸してくれるんかカトゥが!」
(何言ってんだ、俺関係ないじゃん)
「嫌ですよ、こう言ったら悪いとは思いますけど…この話怪しくないですか?」
「そもそも、なんで結婚もしてない林さんが相手の子供のお金工面する必要があるんです?」
「頼るならまず元旦那さんでしょ?」
グギギギギ……ギギ…ギッ……
(何だこの音…?)
ユージの《《歯ぎしり》》する音だった。
「カトゥ!何度言わせるんや、エリには俺しか頼るもんがおらんゆーたやろ!!」
「あんな薄情なクソ旦那の話なんかせんでもええわ!」
(なら俺にも、相談しないでほしいわ…)
ユージの激昂と同時に始業のベルが鳴り響いた…
(※激昂…感情がひどく高ぶって、激しく怒ること)
「まぁええわ、続きは後での」
(えっ?まだ続くのこれ……)
始業のベルに一時は救われたと思ったヒロシであったが…
その時のヒロシには始業ベルが、鳴り響く【警報アラート】のように聞こえた……
今回も最後まで読んでいただき感謝いたします。




