第22話 「結局変わらない男」
調停成立から数日後ーー
妹との「骨肉の争い」に勝利!?したユージは、極度のストレスから解放され浮かれていた。
「ザマぁみぃやあのクズ」
「正義は必ず勝つんじゃい!」
(いや勝利かこれ?三十万払ってんじゃん…)
シュウヘイとトモヤはそう思ったが聞こえないフリをした。
「後は…愛しのエリとの仲さえ戻れば全て元通り!」
(何かサザンの曲みたいなこと言ってるけど……まだ懲りてないんだな)
ヒロシもそう思ったが聞こえないフリをした。
その夜ーー
何度も何度もしつこく電話をするユージ、その願いが天に通じたのか…
「何?しつこいんだけど」
(出た!!)
「あ、いやあの…久しぶり」
「は?アンタとは終わったって言ったでしょ」
「いや、妹の件なんだけどもう決着ついたから」
「は?関係ないし」
「てか、どーでもいいしそんなの」
「今子供の事でお金がいるから、それどころじゃないのよ、じゃあね」
「いや…ちょ、ちょっと待ってや」
「何子供の事って?」
「アンタには関係ないでしょ」
「いや、エリが困ってるんなら俺が助けるし」
「えっ?」
「月…さ……5万だよ」
「愛した女が困ってるのを、見過ごせる男じゃないの知ってるやろ」
「バイトでも何でもして俺が毎月払うわ」
「本気で言ってんのアンタ?」
「当たり前や俺はエリを愛しとるけ」
「さーっすがユージ♪」
「頼りになるわぁ」
「じゃあ近いうちこっち来る?」
「えっ?いいんか?」
「行く!絶対行く!!」
こうして懲りることなく、この男は再び蟻地獄に足を踏み入れる……
翌日ーー
昼休み。
ファ○チキにかぶりつきながら突然一人言を言い始めた…
「いやー参るね実際、運命って恐ろしいわ」
(恐ろしいのはお前だろ)
皆がそう思う中、ヒロシが気を遣う。
「林さん今日はご機嫌ですね、何か良いことでもあったんですか?」
「おっカトゥ何や聞こえとったんか、相変わらず地獄耳やの」
(あんだけ大きな一人言なら誰でも聞こえるっての…)
「いや、俺エリにフラれたじゃん…いや、エリと少し距離置いてたじゃん」
(どっちでもいーよ…プライド高ぇな)
「だけどな…エリのやつやっぱ俺おらんとダメみたいやわ」
(は?戻ったのコイツ?あれだけ愛想が尽きたとか言ってたのに?)
シュウヘイが口を挟む。
「え?別れるんじゃなかったんすか?」
するとユージは、少し遠い目をしながら語りはじめた…
「あのなゾノ…運命って言葉知ってるか?」
(何言ってんだコイツ…キモいな)
「ええ、まぁ」
「俺とエリは運命の二人なんよ…エリは少し頭が足りんからすぐ別れるとか言うけどな」
「結局困ったら俺しか頼る奴おらんのよ、月5万は痛いけど俺らは魂レベルで繋がってる運命の二人やから」
「まぁこの話、牛っつぁんには絶対言うなよエリのこと嫌ってるみたいだし、グチグチうるせーからな」
そう言うと満足そうな顔でファ○チキをバクつく。
(月5万?まさかコイツまた……)
シュウヘイは突っ込みたい気持ちをグッと抑え黙っていた。
皆もそうだった。
あれだけの仕打ちをされてもまだ “ 運命 ” とか言い続けるこの男に、もはやかける言葉は見つからなかった…
次の日から少しの間、彼はこう呼ばれるーー
“ベートゥーベン林”
今回も最後まで読んでいただき感謝いたします。




