第21話 「訴えられた男」(後編)
1回目の調停が終わり “1000万” を請求されたユージーー
エリに突然別れを告げられ、切られたユージーー
その表情にはいつもの “ 能天気さ ” はなく、怒りにも落胆にもとれる様な不思議な顔をしていた。
昼休みーー食堂。
ヒロシが小さく聞く。
「妹さん……怪我、結構ひどかったんですか?」
ユージは一瞬だけ考える。
「全治一ヶ月くらいらしいけど」
すぐに答える。
「でもまぁ大したことないやろ」
軽い。
あまりにも軽すぎる。
その言葉で、周りの箸が完全に止まる。
だがーー
ユージは気づかない。
「あのなカトゥ」
箸を置き少しだけ前のめりになる。
「俺は何も悪くないけーな!」
全く反省のない言葉だった。
「なのに俺ばっか悪者にしやがって…」
言い切る。
だが――
その目はどこか同意を求めていた。
その後も、会う人会う人にユージは何度も同じ話を繰り返した。
相手が変わるたびに少しずつ言い方を変えながら…
だが――
内容は変わらない。
そして結論も、変わらない。
「あのクズが悪い!俺は止めただけ!」
それだけだった。
1ヶ月後ーー
第二回調停。
「くっそー何でや」
「マジか!?」
言葉だけが、虚しく空を切る…
そして、エリからの連絡や励ましは一切ない……
「マジ世の中狂っとるやろ!」
更に1ヶ月後ーー
第三回調停。
ここまでくると流石のユージにも陰りが見えはじめる。
「もうええわ好きにせぇ…知らん」
ここでやっと示談金と慰謝料の話に流れが行く…
しかし恐ろしいかなこの男、この土壇場にきて奇跡を起こす。
まぁ当然と言えば当然と言えるのだろうが、ユージの妹もユージと “ 大差のない ” 人間だったのだ。
示談金、慰謝料合わせて1000万の請求…
それはいい、請求は本人の言い値だから問題ない。
しかしこの妹、自称自営業と家裁に申告したものの給与明細の提出の際、実質そこまでの収入がないことをゴマかす為に百均で買った簡易の領収書に手書きで、ーー万円、ーー十万円と書き込んだだけの物を提出したのだ。
全て同じ字体ーー
社印も無しーー
明らかに自分で書いた感満載の領収書の束……
しかも、とてつもなく汚い字で書いてあった。
後日ユージが職場の人間にその提出物のコピーを見せたのだが…
今思うと…この時の調停員や裁判官の気持ちは計り知れない…
そして判決が出るーー
請求額は大幅減額。
支払い命令は三十万。
それで今回の騒動全てが終わったらしい。
しかし “ この話 ” にはもう少し続きがあるーー
話は少し戻るがーー
ユージにそのコピーを見せられたヒロシ、シュウヘイ、トモヤをはじめ職場の面々は度肝を抜かれ言葉を失う……
そのコピーの、妹の職業欄に書かれていた言葉に全員が笑いを堪えるのに必死だった。
そこに書かれていた職業は…
“ デリ○ル ”
の四文字だった。
今回も最後まで読んでいただき感謝いたします。




