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第19話 「訴えられた男」(前編)

最近――



ユージの様子が少し変だ。




変と言えば、いつも変な男ではあるが行動に違和感が残る……。




相変わらずよく食べ、よく喋り、よく自慢する。


普段通りには見えるが…




だが――どこかーー



腑に落ちない…


(※腑に落ちない…合点(がてん)がいかない、しっくりこないという意味)




どこか、落ち着きがない。


話題が一定せず同じ話を何度も繰り返す。




老化が始まっているのではあろうが…


何かがおかしい。





昼休み。




資材倉庫の前で、ユージはいつも以上に変な顔になっていた。



まるで腹痛に苦しむ、チンパンジーのような顔をしていた。




そこへ偶然、先輩の【牛田 タツオ】が通りかかる。




「ユージどーかしたんか?」





「あ…いや……別に」


「いや…あの、牛っつぁん」


「ちょっといいすか?」





「どーした?」





「いや...ちょっと厄介な事に巻き込まれとんすよ…」





「厄介な事?」


「まーた女事か?あんなクソ女、はよ別れーゆーたやろ」





「いや…違…実は妹なんすけど」





「妹?妹がどーした?」





「訴えられそうなんす…」





「はぁ!?」


「何やったんやお前」





「いや違うんすよ牛っつぁん」


「ホンマ意味分からんのんすよ」



ユージは続ける。



「家でちょっと揉めて…」




その “ ちょっと ” という言葉が、

タツオには妙に恐ろしく聞こえた。




「あのクズが、オカンに手ぇ出したけ止めたんすよ」



そこまではいいーー

問題はその後だった。




「で、張り倒してやったんす」



「まぁ…ちょっと…顔蹴ったけど」



軽く言うーーまるでついでのように。




「バカ、お前何やっとんや」


「手は出したらいけんわ」


「しかも顔蹴った?……アウトやろそれ」




ユージが間髪入れずに言う。




「でもありえんでしょ普通」



「むしろ止めた側やし、感謝されるとこでしょ?」



「なんで俺が訴えられんといけんのすか?」



その言葉に迷いはない。





だが――


タツオの目にはどこか同意を求めている様にも見えた。




少しの間沈黙が続く。




「ほんま意味分からんわ」



軽いーーあまりにも軽い。



その言葉で、

 

    空気が完全に止まる。





「でも俺は絶対悪くないすよ」




少しだけ声が強くなる。



まるで…そこだけは譲れないような言葉。





だが――


怒っているというよりは、理解できていない顔だった。



そして……納得していない顔だった。





今この男は、

  追い詰められている。


確実に、

  現実に押されている。




それでも――


本人だけが気づいていない。



だからこそ――


タツオはそれ以上何も言わなかった。





その一週間後……


家庭裁判所から




   【調停期日通知書(呼出状)】




               が届いた…。




今回も最後まで読んでいただき感謝いたします。



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