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第17話 「悔やまれる男」

少し前の話になるがーー




ユージの職場に、



    『米俵 リアン』



        という若者がいた。




年齢は20歳  【既婚】


若くして二児の父親でもあった。





このリアンという青年、非常に人懐(ひとなつ)っこく話も上手い。



その上、韓国系アイドル並に整ったイケメンでもあった。




ただ悔やまれるのは…

まだ若さゆえか、仕事に対しての情熱と責任感が少なかったことだ。




そして二年程で会社を去っていった…



今でも正直惜しい逸材であったと時折思う。





そんなリアンだが、人の話を聞くのも引き出すのも非常に上手かった。



相手の喜ぶツボを瞬時に見つけ、転がすように会話を進める…



天賦(てんぷ)の才であった。




そんなリアンが、大変だった一日を面白可笑(おもしろおか)しく話してくれたことがあった。





二年前ーー



ある金曜日の昼下がり。




その日は班長、モレノ兄弟、リアンの四人で現場に出ていたが午前中には(ほとん)どの仕事が片付き、班長は有給消化で帰宅した。




残ったのは、リアンとモレノ兄弟の三人ーー



リアンは最初から嫌な予感が止まらなかったと言っていた。




ユージが仕切る。



「よっしゃ今日はゆっくりしよーで!ええっしょ三元豚さん」




「あぁ…うん……まぁ」




(お前はいつもゆっくりしてるだろーが)



リアンはそう思ったが笑顔で答える。



「そーっすね、金曜日っすもんね」




「さーっすがリアンちゃん♪」


ユージはご機嫌。



「でなリアン、ここだけの話なんやが俺神奈川に女おるんよ」





(来たっ!先輩達から聞いてはいるが遂に来たか…)




「これなんやけどな」



キラキラに加工された待受画面をチラッと見せる。




「おっ!綺麗な人っすね」



「もっとよく見せて下さいよ」



リアンは上手だ。




ユージは満面の笑みでスマホを見せる。




「やれんのリアンだきゃ欲しがるけ」



「見ろ都会の女って感じやろ!この辺にはまずおらんね」




「……」




二時間後ーー




(もう勘弁してや…)




ホントかウソか分からないような話を二時間たっぷりと聞かされたらしい。




「まぁ俺らは女おるけどこの職場はモテんやつ多いからな」



チラッとミギーの方を見る。



「リアンも気をつけとけよ」





(はぁ?お前にだけは言われたくねーし!つーか俺結婚してんだろバカ)




腹は立つがリアンは上手だ。




「そっすね、覚えときますよ」





「ちょ…ションベン行ってくるわ」



ユージが席を外す。




リアンは小さく息を吐いた…



「ふぅ……!?……うわっ!」




気付けば横にミギーが立っていた。




「なんすか急に、ビックリしたぁ」




ミギーがモゴモゴ言う…




「林…くんて…絶対……モテん…思わん」





(はぁ?五十歩百歩だろお前ら)




「あぁ…まぁそうすかね」






実は“モレノ兄弟”、

兄弟とは陰で呼ばれているだけで

実際はお互いがお互いをバカにし合っているのだ。




ミギーはヤシーのことを “ バカなデブ ” と見下し。



ヤシーはミギーのことを “ モテないヨゴレ ” と見下している。




お互い表面には出さないが密かに嫌い合っている。






ミギーが蚊の鳴くような声で言う…




「お、女…は……フィリピンが……ええよ」




「え?」


リアンはよく聞き取れない。




「あ、遊ぶ…のも…フィリピンが……ええけ」



「ワシ…は……20代…としか……付き合った…こと……ないけーね」





(お前は金の力だろーが……マジ疲れるコイツら……)




「え?」



聞き取れないフリでやり過ごす、

何の自慢をしているのかもよく分からない…




結局この後この意味のない自慢話に二時間近く付き合わされたリアンだった。




トータル約四時間ーー



モレノ兄弟は満足していたが、

リアンは仕事をしている方が楽だったらしい…




惜しい男だったーー



いつか成長し大人になった彼ともう一度笑い合ってみたいものだ。




陰ながら彼の健闘を祈る…

今回も最後まで読んでいただき感謝いたします。



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