第16話 「舐めてる男」
穏やかな日常ーー
社内は平和だった。
突然の “ビスマルク” 発動から二週間が経とうとしていた…。
朝礼前ーー
ヒロシとシュウヘイが話していた。
「加藤さんヤシー出てくるのって今日でしたっけ?」
「多分ね…」
「あー嫌だなぁせっかく平和だったのに…」
「そーだね…」
「しかし…舐めてますよねアイツ」
「これで二回連続ビスマルクですよ!普通女と会うとかなら多少しんどくても出てくるでしょ!!」
「ナマケモノだからねぇ…」
「ハァ……いてもいなくてもムカつく奴ですねヤシー」
「そーいえばこの話聞いた?主任がヤシーに長期欠勤を注意した話」
「いや、知らないす」
「何でもね…毎回朝電話かけてきて原因不明の偏頭痛で休むって言うんだって…」
「で、主任が一度大きい病院で調べてもらったらどうかって、言ったらしいんだ…何て返したと思う?」
「えー…ヤシーのことだから何を言ってても納得できるだけに…」
「んー?……降参す、教えてください」
「あのね…主任が大きい病院でって言った途端、それって車で一時間以上かかるんですよね?」
「行って本当に原因分かるんですかね?ガソリン代もかかるし……だって」
「舐めてるとしか言えないよね」
「バカだわぁ…」
そんなやり取りをしていると、
始業のベルが鳴ったーー
朝礼ーー
課長の挨拶。
本日の作業内容の割り当ての時だった…
「おい、加藤」
「はい」
「林だがな……まだ目眩がするらしく一週間休み延長するそうなんで仕事の方宜しく頼むな」
「え?…」
(やりやがった……)
まさかの、
“ ビスマルク ”
延長戦突入!だった…
※ちなみにここで簡単に説明しておこう。
これは以前ユージ本人に聞いた話なのだが…
ユージの通う病院というのは田舎の小さな個人病院で金さえ出せばどんな症状だろうが診断書を書いてくれるーー
いわゆる『ヤブ』というやつらしい。
生粋の怠け者のユージにおあつらえ向きの病院なのだ。
話は現場に戻るーー
その日のメンバーはヒロシ、シュウヘイ、トモヤと退職延長組のおじさんの西田さんの四人。
トモヤがヒロシに聞く。
「加藤さんヤシー何だったんすか?」
「んーまぁ…まだ目眩がするんだって……」
「はぁ?」
三人が同時に声を出す。
「で、後一週間休み延長らしーよ」
「……」
三人は黙った。
その沈黙をシュウヘイが破る。
「マジで仕事舐めとるっしょアイツ!」
トモヤも続く。
「朝までゲームやって仕事来りゃ目眩して当然ですよね…バカじゃないんすか」
西田さんも口を開く。
「ワシはアイツは根本的に太りすぎだと思うけどねぇ…」
「で、寝不足とくれば目眩くらいするよ…」
(原因不明でもなんでもないじゃん……みんな医者より分かってるし)
ヒロシはそう思ったが言葉にはしなかった。
その頃…昼と夜が逆転生活中のユージは……
夜に向け夢の中だった。
林 ユージ 44歳 【独身】
仕事を舐め。
世の中を舐め。
現在に至る……。
しかしーー
彼が一番舐めているのはーー
“人生”
だった。
今回も最後まで読んでいただき感謝いたします。




