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第15話 「有頂天の男」

月曜日ーー




    一週間の始まり。




どことなく皆が憂鬱(ゆううつ)な表情をしていた。



週末の疲れが残り…足取りも重い。




しかしーー



そうでない男が一人いた。




普段はヤル気なしーー


『ナマケモノ』の生まれ変わりと(しょう)される男。




ユージだ。




なぜ、ユージが月曜日からそこまで元気なのかには理由がある…



ユージは今週金曜日に有給休暇をとっている。




そう今週の金曜日!


遂に、例の女【エリ】が初めてこっちにやって来るのだ。






数日後ーー



その週のユージの動きには目まぐるしいものがあった…




酒好きのエリのために

日本酒、焼酎、サワー各種

などを連日買い漁るーー



時折ニヤつきながら…




「酒飲まして…ホロ酔いで……フフ…」




誰に言うでもなく一人呟(ひとりつぶや)く。




さらに――


大きなクーラーボックスも職場から勝手に持ち帰っていた。




理由は聞かなくても分かる。


誰も何も言わないーー言っても無駄だからだ。




勿論仕事はーーしない。


仕事はいつも以上に手を抜きうわの空。



文句すら出ていたらしい…





それでも本人は気にしない。

頭の中は、もう別の場所にある。



他人が困ろうが、仕事がどうであろうが関係ない。




ユージにとっては、




     “自分の時間”




        それだけがすべてだった。





世間はどうであれ己のGWに向けて


……己の為だけに動き回っていた。





完全に




    『有頂天ホテル』




            と()していた。




ヒロシもシュウヘイも他の社員達も(あき)れて誰も何も言えないくらい…




   まさに有頂天だった!!






数日後――


     金曜日。



ユージは予定通り休みに入った。




初日の行き先は――


元カノがいる街。

  海産物が有名な場所らしい。





後日…




「女に美味い魚食わせてやりたくてな」



ユージはそう言ったらしい。




だが――

誰も、そのまま受け取ってはいない。





(コイツ…あわよくば元カノに見せびらかそうとして行ったな…)



と全員が思っていた。






結果から言っておくと、

   三連休のほとんどは――




【同じ場所】にずっといた。



ご褒美を貰い、毛を補充し大満足だったようだ。




「女は酒と肉あれば文句言わんけ」




そう言っていたという。


その言葉通りの時間だったのだろう。






そして――最終日。


二人は、ある場所に向かった。



職場の若手【トモヤ】のバイト先の

寿司屋だった。



店に入るとすぐトモヤが気付いた…


一瞬だけ空気が止まるが、すぐにいつもの笑顔に戻る。



内情を知っていたトモヤは礼儀正しく挨拶をした。




「初めまして」



「こっちは楽しめましたか?」



軽く、笑って言う。




その言葉に――返事はなかった。



女は店内を見回しながら

一言だけ言った。




「山しかない」




それだけだった。


会話は、続かない。

ユージは、ずっと笑っている。



トモヤの配慮(はいりょ)(むな)しく――


    何も噛み合っていなかった。



その後も何も噛み合わないまま時間だけ過ぎ、食事を済ませた二人は帰っていった。




有頂天のまま、終わった三日間。

本人だけが満足していた。





翌日ーー


朝から職場の後輩たちはザワついていた。



「マジで今日来たくなかったぁ」



「やっぱ休めばよかったかな?」



「分かる分かる!」



「絶対一日中自慢話するんだろうなぁ…身のないヤツ」




それぞれが思い思いに心の内を吐き出すーー



そんな若手達の心配をよそに。




誰も知らないところで…



静かに…




      “ビスマルク”



              が発動していた。




今回も最後まで読んでいただき感謝いたします。

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