第14話 「ミギー・モレノという男」
突然だがーー
ユージの会社にはもう一人“怪物”がいる。
名前は
【三元豚キヨシ】
(通称 ミギー)
年齢は五十代後半。
身長は低い。
非常識が服を着て歩いているような男だ。
だが――
存在感は妙にある。
理由は単純ーー
“異質”だからだ。
ミギーは、いつも大抵一人でいる。
極度の “ スマホ依存症 ” でやっているのはゲームのみ。
少しでもゲームが上手くいかないと…
突然喚く、スマホをブン投げる、だからミギーのスマホの画面はひび割れていて汚い。
人がいてもいなくてもお構い無し、だから職場内外でも有名な話だ。
そんなミギーと会話する者は少ない…
いや――
正確に言うと
“会話になっていない”のだ。
「…あぁ……うん…まぁ……」
ボソボソと、何を言っているのか分からない声。
相手の目を見ない。
話が続かない。
返事もズレている。
そして――
会話が終わる前に、どこかへ消える。
協調性は……ない。
というより――
“合わせる気がない”
見た目もそれを後押ししている…
ボサボサの髪。
手入れされていない髭。
汚れた風貌。
清潔感という言葉とは、
完全に無縁の存在だ。
以前聞いた話だが…
某食事チェーン店で、職場の人間が家族で食事をしていた際の話だ。
セコいミギーは基本一人で外食をする、家族と一緒だと “高くつく” それが理由らしい、そのミギーを見て子供が…
「パパ!お金の無い人がご飯食べてるよ」
と言ったらしい。
子供は素直だ…というより、彼の風貌は端から見ればそう見えるらしい。
だが――
彼の“異常性”はそこではない。
ミギーにはある癖がある。
【盗み聞き】だ!
誰かが話していると気づけば近くにいる。
視線は向けない。
相手に背を向け、両手は上着のポケットに入れる、お決まりのスタイルだ。
だが――
確実に“聞いている”
そしてその内容を別の人間に話す時…
「……まぁ…ワシくらいになりゃ……何でも知っとるけ…」
聞いてもいないのに、突然会話に割り込み妙なマウントをとってくる。
まるで――
情報に“寄生”しているその様子から、彼はこう呼ばれるようになった。(※マンガ「寄生獣」参照)
【ミギー】
本人はもちろん、知らない。
知る由もない。
そんなミギーだが一応結婚はしている。
まともに女性の目を見て話すこともできないミギーは、もちろん普通の恋愛とは無縁の存在だ。
でも性欲はある…金もある……そしてフィリピンパブに通う。
フィリピンの女性たちは金を払えば、優しくしてくれる。
話を聞いてくれる。
金にものをいわせて身体を触る。
恋愛かどうかは誰も分からない。
本人すら、
分かっていない可能性が高い。
だが――
一人のフィリピン人女性とゴールする、世の中捨てたものではない。
こうして…
【ミギー・モレノ】
は誕生した。
※補足になるが、
モレノとは往年のフィリピン人
大女優『ルビーモレノ』からきているらしい…
そんなミギーとヤシーの女性に対する態度はどこか似ている…
上から目線ーー
理解した気になっているが何も分かっていない。
そして――
頑固、非常識、どケチ、など…
ミギーとヤシー、
見た目はまるで違う二人だが
中身は、驚くほど似ている。
自覚がない。
他人が見えていない。
そして――
自分だけが正しいと思っている。
違うのはただ一つ。
外見だけだった…
そんなある日職場の一人が気付く。
「なぁ…あの二人って似てないか?」
(そーいえば…確かに……)
その場にいた全員が心の中で納得した。
それ以来――
この二人は、こう呼ばれることになる。
【モレノ兄弟】
※更に補足すれば、
ここで『ヤシー・モレノ』も爆誕した。
その日も職場には、
いつも通りの時間が流れていた。
笑い声。
雑談。
その中に――
確実に“異物”が二つ、混ざっている。
しかしーー
誰も触れない……触れたくない。
ただーー
みんな同じことを思っている。
「深く関わらんとこ」
それがーー
唯一の正解であった。
今回も最後まで読んでいただき感謝いたします。




