第13話 「呪術をかける男」
ユージは一度エリと会った。
そして、エサを与えられた…
本人はどうであれ、傍目には
セールスレディとただの顧客。
俗に言う “ 枕○業 ” というヤツだ。
だが――
あの日を境に、彼の中で何かが変わった。
エリの隣にいる “ 旦那 ” という存在。
それが、非常に邪魔な存在になっていた。
「…あの旦那さえおらんくなればな」
最初はただの軽口だった。
だが次第に、それは口癖になっていく…
「マジでムカつくわアイツ」
「邪魔だわアイツ」
「アイツ早く○ねばいいのに」
冗談のように、笑いながら毒を吐く。
だが…その回数は異常だった。
周囲の者たちも、己の立場を理解していないユージに最初は呆れていたが……
(また言ってる……)
次第に空気が変わるーー
それでもユージは止めるどころか、むしろ増えていった。
同じ言葉を、何度も何度も繰り返すユージ…
まるで――
自分に言い聞かせるようにーー
“ 呪い ” の言葉を吐く。
見かねた先輩がユージを諭そうと呼び出した。
「おいヤシーちょっといいか?」
「ええ」
「お前、最近の言動ヤバいぞ、自分で分かってんのか?」
「え?何がすか?」
先輩は少しタメ息を吐く。
「ハァ…何がっすかって、お前なぁ」
「今自分の、言ってることやってること分かってんのかってことだよ」
「もし相手の旦那さんに何かあれば、全員真っ先にお前を疑うことになるんだぞ?」
「ああ心配ないす、俺何もしてませんから」
ケロッとして言う。
「あのなぁ…何かあってからじゃ遅いから言ってんだよ!」
「そんなことするわけないじゃないすか、バカじゃあるまいし」
(そのバカだから言ってんだよ…)
「とりあえず伝えたからな!あんまみんなの前でバカなこと触れ回るなよ」
「分かりましたよ心配性だなぁ」
先輩の、心配も何のそのユージは口笛を吹いて行ってしまった。
そんな数ヵ月後のある日ーー
エリの旦那の浮気が発覚した。
ユージの言葉とは無関係かもしれない…
だがーー
タイミングは出来すぎていた。
さらに数ヵ月後――離婚。
プライドの高いエリは、容赦しなかった。
自分のことは棚に上げ、
旦那から慰謝料を引き出す。
結果だけ見れば――
ユージの望み通りだった。
「ほらな、バチがあたったわ」
ユージは心から笑った。
ヒロシが言う。
「林さん笑い事じゃなくて…それもうマジ呪いですよ」
シュウヘイが続く。
「怖い…」
それを聞いてユージは笑った。
否定もしなかった。
むしろ――
どこか誇らしげだった。
(マジで “ 呪い ” かけやがった…)
誰もが口を閉ざした。
そしてその夜ユージはさっそくエリに迫る。
「もう二人を邪魔するもんはおらんやろ!」
「俺と一緒になろーや?」
当然のように言った。
だがーー
返ってきたのは冷たい一言だった。
「は?無理。子供いるし」
それだけだった。
ユージの中で【ラストLOVE】に亀裂が入った…
(ん?俺最後の恋の相手なんだよな?)
しかし現実は、旦那がいなくなってもーー
そこに入れるわけではなかった。
それでもユージは離れない。
離れられない…
費やした時間…費やした金…元々のセコい性分がそれを許さない。
そしてさらに依存する性格が拍車をかけるーー
「けど…俺彼氏なんよね?」
小さなタメ息。
「まぁ…アンタ次第なんじゃない?」
エリから吐かれた一言それは――
決して対等なものではなかった。
多分この先…
必要な時だけ呼ばれーー
時間も、金も、全てが削られていく。
望んだ結果の先にあったのはーー
セールスレディによる “ ただの搾取 ” だった。
最後になるが…
エリ夫妻を、破局へと導いたユージの呪いの行動について、社内では再びある噂が
囁かれていた…。
某有名マンガの主人公と同名ということから
噂されはじめたその名は……
“呪術パイセン”
今回も最後まで読んでいただき感謝いたします。




