第11話 「支配される男」
ある日の夜ーー
「……0件?」
『平野行動』
の中で会話する二人。
ユージはスマホを見つめ答える。
「うん、誰も入ってくれん…」
エリの声は変わらない。
「ねぇ」
「どうするの?」
「えっ……何が?」
「はぁ…使えねぇ…」
静かに刺す。
「いや…そんなこと――」
「じゃあ結果出してよ!」
被せる。
「出せないならさ」
「もういいかなって思ってる」
「……は?」
「別れる」
軽い一言…
「は?ちょ…」
淡々とーー
「もう連絡もしない」
「ちょ……ちょ待てや」
即答。
「待たない」
「じゃあどうすればええんよ」
エリは笑う。
「簡単だよ」
「ユージが入ればいいじゃん」
「一番上のやつ」
「えっ!?……いくら?」
「月3」
(高ぇ……)
「無理ならいいよ」
「もういいし…」
(ヤベ…切られる)
即座に言う。
「……いや、いける!入る!」
声が面白いように変わるーー
「ほんと?」
「じゃあこっち来て」
「契約も直接やろ~♪」
ーーーーー
2週間後ーー
ーーーーー
羽田空港。
「……人多っ」
使い込まれた黒のスウェット上下……完全に浮いていた。
スマホが鳴るーー
「着いた?」
「今羽田やけど…」
「遅い!」
「は?」
理不尽な一言。
「もっと早く来れたでしょ」
「……ごめん」
謝っている。
「外出てきて!」
ブツッーー
―――――
夜。
エリはスタスタと先に歩く。
ユージは少し遅れてついていく。
「ここ」
建物を見上げる。
(え…?マジ…)
一瞬固まる。
「何?」
「いや…ここって……」
「来ないなら帰るけど?」
冷たい。
「行く!行きたい!!」
即答。
―――――
部屋。
静か。
距離が近い。
落ち着かない…
「じゃあ説明するね」
空気が違うーー
「これ!」
資料を広げる。
「ユージに一番いいやつ」
「ここがこうで」
「こうなる」
話は分かりやすい。
だが――
頭に入ってこない。
「ねぇ」
「ちゃんと聞いてる?」
エリが顔を覗くーー近い。
「えっ…あぁ、聞いとる…」
「ほんとに?」
「じゃあどうする?」
選択肢はない。
「……入る」
「だよね!」
即座に笑う。
「やっぱユージだわ」
その一言で、
全部肯定された気分になる。
「ここと、ここにサイン」
「…うん」
迷いはないーー書くーー終わり。
「ありがと、ほんと助かる」
「今月ちょっとやばくてさ」
軽い。
(これ本当に俺のためなんか?……)
一瞬よぎる。
だが――
「でもさ、ちゃんと来たのえらいよユージ」
「逃げるかと思ってた」
笑う。
「逃げんわ!」
即答。
「そっか…じゃあさ」
「ご褒美ね♪」
その言い方。
愛でも恋でもない…
まるで…
“枕○業”そのものだった。
が!?ユージは気づかない。
すでに…御主人様にエサをもらうペットと化していた……
―――――
後日。
居酒屋。
シュウヘイが聞いた。
「昨日どっか行ってたんすか、休みだったけど?」
ユージは得意気に答える。
「エリが会いたい言うけ、会いに行ってやったんよ」
ヒロシとシュウヘイの動きが止まる。
「は?」
「え?」
シュウヘイが即座に聞く!
「神奈川まで行ったんすか?」
「おう!」
「し・か・も……」
「ちゃんと契約した後で“愛し合って”きたわ」
「やれんで惚れられとるゆーんも」
ドヤ顔。
(契約!?…まさかコイツ…)
ヒロシが様子を伺う様に口を開く…
「契約…ですか?何の?」
少し遠くを見つめ語り出すーー
「俺さ、好きな女が困ってるの見て見ぬふりできん男やろ…」
(知らんけど…)
「少しでもエリ助けてやりたくてな…生命保険入ってやったわ」
(マジか…)
シュウヘイが恐る恐る尋ねる。
「ちなみに…月いくらの契約してきたんすか?」
「月3や」
(終わってる…)
二人はそれとなく気を遣った。
「や、優しいんですね…」
「ス、スゴいっすね...」
ユージは満足そうに笑う。
「やっぱ本物は違うわ!」
「ああいう女は中々おらんで」
「ご褒美もスゴかったしな…」
二人は黙る。
(完全に飼われてるな…)
遠くを見つめるユージの顔は――
どこか誇らしげだった。
ただ一つ確かなのはーー
これは恋愛じゃない。
完全な…
“支配”だった。
次回 第12話 「毛をたしなむ男」 (5/27 水)
今回も最後まで読んでいただき感謝いたします。




