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ある転移者の人生~王国から見捨てられた俺は地道に最強目指します~  作者: ナイトさん
第一章 赤鬼の悪魔

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第8話冒険者①

今回も短めです

『まず貴様にはやるべきことがある』

静かに、だが確信を持った声で【リード】が告げる。

「やるべきこと?」

『ああ。――冒険者になれ』

「……冒険者?」

一瞬、言葉の意味を考える。

『そうだ。さっきの女――エリナと共に、だ』

やっぱりそこに繋がるのか。

『ダンジョンに潜れ。それが最も効率よく強くなる方法だ』

「効率よく、ね……」

正直、疑問はあった。

戦場だって、命のやり取りの場だ。

あれ以上に過酷な場所なんてあるのか?

『ある』

心を読んだように、即答された。

『貴様に足りないのは“経験”ではない。“勝利経験”だ』

「……っ」

『負け続けた経験では意味がない。強者に“勝つ”ことで初めて、貴様は上に行ける』

その言葉に、反論はできなかった。

思い出すのは、あの戦い。

ゴルド。シルバ。赤鬼の悪魔。

――俺は、一度も勝てていない。

『ダンジョンにはな、“魔素”が満ちている』

「魔素……?」

初めて聞く単語に、思わず聞き返す。

『この世界に漂う魔力の源だ。だがダンジョンは別格だ』

『濃密な魔素は、肉体と魔力の両方を強制的に鍛え上げる』

「そんな都合のいい場所があるのかよ」

『都合は良くない。死ぬ確率も高いからな』

あっさりと言い切る。

『だが貴様には我がいる』

その一言に、不思議と安心感があった。

「……分かった」

短く答える。

「エリナの話、受ける方向で考える」

『ほう、随分と素直だな』

「強くなれるなら、何でもやる」

それだけだ。

『いい目だ。我が主よ』

どこか満足げな声だった。

『だが今日は休め』

「は?」

思わず間抜けな声が出る。

『身体も精神も限界だ。今の状態で動けば死ぬぞ』

……たしかに。

さっきまでの戦いと、“あの夢”。

頭も体も、ボロボロだった。

「……分かった。明日だな」

『ああ。明日からが本番だ』

その言葉を最後に、【リード】の気配がすっと薄れる。

(今日は……本当に色々ありすぎだろ)

天井を見上げる。

ゴルドの死。逃亡。赤鬼の悪魔。観測者。スキル。

全部が一日に詰め込まれたみたいだった。

(……でも)

拳を握る。

さっき感じた“力”は、確かにここにある。

(強くなる)

そう決めて、俺は目を閉じた。

――翌朝。

『起きたか、我が主』

頭の中に響く声で目が覚める。

「……おはよう、リード」

体を起こすと、驚くほど軽かった。

昨日までの痛みが嘘みたいに消えている。

『当然だ。我が補助もあるが、貴様自身の回復力も異常だ』

(やっぱり、あの観測者のせいか……?)

考えかけて、やめた。

今はどうでもいい。

「……その前に」

腹が鳴る。

「飯だ。三日何も食ってねえ」

『……貴様、本当に人間だな』

呆れたような声。

宿を出て、まだ薄暗い街を歩く。

早朝だが、この世界の店は朝が早い。

適当な酒場に入り、パンとスープをかき込む。

「銅貨2枚です」

「はい」

金を払う。

この世界の通貨はシンプルだ。

銅貨、銀貨、金貨の三種類。

価値はそれぞれ――

銅貨1枚=約100円

銀貨1枚=約1000円(銅貨10枚分)

金貨1枚=約10万円(銀貨100枚分)

今の俺の所持金は、銀貨40枚。

戦場で命を張って得た金だ。

『人はなぜ、金に縛られるのだろうな』

ぽつりと、リードが呟く。

「……それがないと、生きていけないからだろ」

『弱いな』

「人間は弱いんだよ」

即答だった。

宿に戻り、ベッドに腰掛ける。

「で、続きだ」

『ああ』

リードの声が、少しだけ真剣になる。

『ダンジョンでの目的は二つ』

『レベル上げと――魔素の吸収だ』

「吸収って……どうやってだ?」

『戦え。殺せ。生き延びろ』

簡潔すぎる説明。

『それだけで、身体は勝手に取り込む』

なるほどな。

理屈は分からんが、この世界はそういうもんらしい。

「……そういや」

ふと思い出す。

「この世界の人間って、スキル使えないんだよな?」

『ああ』

『スキルは転移者だけの特権だ』

やっぱりか。

『だからこそ、貴様は異質だ』

『そして――狙われる』

「……」

一瞬、空気が重くなる。

『だが安心しろ』

リードの声が少し柔らぐ。

『我が導く』

その言葉に、不思議な説得力があった。

「……よし」

立ち上がる。

「エリナのとこ行くか」

『決めたか』

「ああ」

もう迷いはない。

強くなるためなら、何でもやる。

こうして俺は――

ダンジョンへと続く道を、歩き出すことになる。

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