第6話スキル【勇者】①
今回はストーリーの展開を早めたので少し雑です。
あとこれからキャラクター説明の話もいれていきます。
目を開けた瞬間――
違和感があった。
「……天井?」
木製の、見慣れない天井。
だがそれ以上に違うのは――
(軽い……?)
体が、妙に軽い。
痛みが、ない。
あれだけやられたはずなのに。
ゆっくりと上体を起こす。
軋むはずの筋肉は、何も訴えてこない。
「ここは……」
「起きたのね」
横から声がした。
反射的に視線を向ける。
そこにいたのは、青い髪の少女だった。
ベッドの横の椅子に座り、腕を組んでこちらを見ている。
その目は――
少しだけ安心していて、
少しだけ、呆れていた。
「あなたは?」
俺がそう聞くと、少女は小さくため息をついた。
「本気で言ってるの?」
「……ああ」
「はぁ……」
額に手を当てる。
「私はエリナ・ブルーム。あんたと一緒に“あいつ”と戦ったでしょ」
「ああ……」
思い出す。
青い髪。
剣。
そして――無茶な突撃。
「生きてたのか」
「それはこっちのセリフよ」
即答だった。
「普通、死んでるわよあんた」
「……そうかもな」
苦笑するしかない。
エリナはじっと俺を見つめる。
そして一言。
「で?」
「?」
「言うこと、あるでしょ」
ああ、なるほど。
「……ありがとう」
頭を下げる。
少し間があって――
「遅い」
小さくそう言ったが、どこか嬉しそうだった。
「で、俺どれくらい寝てた?」
「二日」
「……は?」
思考が止まる。
「二日よ。丸々」
エリナは平然と続ける。
「私があんた担いでここまで運んで、応急処置して、寝かせてたの」
「担いで……?」
「軽かったから楽だったわよ」
ちょっとムッとする。
「……それ複雑だな」
「でもおかしいのよね」
エリナの表情が少し変わる。
真剣な目。
「本当は、あんたの傷――あんなもんじゃ済まないはずだった」
「……」
「骨も何本かいっててもおかしくなかった。内臓も無事じゃないレベルよ」
ゾクリ、とした。
「でも」
エリナは俺の腕を掴む。
「見てみなさいよ」
そこには――
傷一つない肌。
「……完全に治ってる」
「そう。ありえないの」
エリナの声には、はっきりとした違和感があった。
「何したの、あんた」
「……何もしてない」
嘘は言ってない。
だが、全部は言ってない。
(観測者……)
あいつのことが、頭をよぎる。
「まぁいいわ」
エリナはあっさり引いた。
だが、その目は納得していない。
「で、あんた名前」
「……アナシュ・クライン」
一瞬だけ迷ったが、そう答える。
「長いわね」
「クラインでいい」
「分かった、クライン」
エリナは顎に手を当て、少し考える仕草をした。
そして――
「決めた」
「は?」
「クライン、あんた私のパーティーに入りなさい」
「……は?」
さっきより理解できない。
「何言ってんだいきなり」
「そのままの意味よ」
即答。
「私、冒険者になるの」
まっすぐな目。
ブレがない。
「で、一人じゃ限界あるから仲間が欲しい」
「それで俺か?」
「そう」
迷いがない。
「理由は?」
少しだけ、間が空く。
「……あんた、弱いけど」
「おい」
「でも、逃げなかったでしょ」
その一言で、言葉が止まる。
「普通は逃げるのよ。あれ見たら」
赤鬼の悪魔。
あの圧倒的な存在。
「でもあんた、立った」
「……」
「そういうやつ、嫌いじゃない」
少しだけ笑う。
「だから誘ってる」
単純だが、強い理由だった。
「……即決は無理だ」
「いいわよ」
あっさり引く。
「明日の昼、冒険者ギルドに来なさい」
「来なかったら?」
「その時は縁がなかったってだけ」
立ち上がる。
「あと部屋代は払っといたから」
「……なんでそこまで」
「貸しよ」
ニヤッと笑う。
「あとで返しなさい」
そう言って、エリナは部屋を出ていった。
静寂が戻る。
「……嵐みたいなやつだな」
ベッドに倒れ込む。
天井を見上げる。
(観測者……)
(あいつは何なんだ)
(本当に“夢”だったのか……?)
拳を握る。
さっきとは違う感覚。
確かな“力”。
(赤鬼の悪魔……)
思い出すだけで、体が強張る。
あの強さ。
あの余裕。
(……勝てる気がしない)
だが――
「だから、やるしかないか」
小さく呟く。
その時――
『こんばんは、我が主』
頭の奥に、声が響いた。
「……は?」
思わず飛び起きる。
「なんだ今の!?」
『落ち着け。我は敵ではない』
声は続く。
『我は――スキル【勇者】』
「……は?」
理解が追いつかない。
『貴様に宿った“力”そのものだ』
部屋の静寂の中、
その声だけが、やけに鮮明に響いていた――
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