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ある転移者の人生~王国から見捨てられた俺は地道に最強目指します~  作者: ナイトさん
第一章 赤鬼の悪魔

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第4話観測者

今回では新たなキャラが登場しストーリーが急に広大になります

「ここは……」

目を開けた瞬間、違和感が走った。

白い。

どこまでも、白い。

地面も、空も、境界すら曖昧な空間。

音も、風も、気配すらない。

ただ――“自分だけが存在している”と理解できる、不気味な静寂。

「……死んだのか、俺」

その呟きが、やけに大きく響いた気がした。

――その直後。

『違うよ』

耳鳴りのようなノイズ混じりの声が、背後から落ちてくる。

反射的に振り向いた。

そこに“いた”のは――

人の形をした、何か。

黒いローブ。

顔は見えない。

いや、違う。

見ようとすると、歪む。

焦点を合わせた瞬間、存在そのものが崩れるように揺らぐ。

「……なんだ、お前」

『ひどいなぁ。初対面でそれ?』

軽い口調。

だが、その奥にある“底”が見えない。

本能が告げる。

――こいつは危険だ。

「答えろ。ここはどこだ」

『君の夢の中だよ』

一切の迷いなく、即答。

「夢……?」

『そう。君はまだ死んでない。安心した?』

「……ああ」

わずかに、肩の力が抜ける。

だが――

『でもさ』

空気が、変わった。

『このままじゃ、すぐ死ぬけどね』

「――っ」

言葉が詰まる。

脳裏に浮かぶのは、“あの戦い”。

赤鬼の悪魔。

何も通じなかった。

何も届かなかった。

『分かってるでしょ?』

気づけば、目の前に“それ”がいた。

距離を詰めた感覚はない。

ただ、“いた”。

『君は弱い』

「……」

『スキルもない。才能もない。努力だけの凡人』

一言ごとに、胸の奥が軋む。

だが――否定できない。

『でもさ』

そいつは、愉しげに笑った。

『だから面白い』

「……は?」

『普通は折れるよ』

『全部失って、現実を見せられて』

『それでも立とうとする奴なんて――滅多にいない』

ぞくり、とした。

評価されているはずなのに、寒気が走る。

『ねえ』

そいつが、手を差し出す。

その掌の上に――光が灯る。

小さく、揺らめく光。

だが直感する。

これは“ただの光じゃない”。

「……なんだ、それ」

『可能性』

軽く言った。

あまりにも軽く。

『君に、力をあげるよ』

「……なんでだ」

俺はすぐに手を伸ばさなかった。

(ここで飛びついたら終わる気がする)

『さあ?』

肩をすくめる仕草。

『気まぐれ?暇つぶし?』

そして、わずかに間を置く。

『それとも――作品作り、かな』

「作品……?」

『君の人生、ちょっと面白そうだからさ』

軽い。

軽すぎる理由。

なのに――

心の奥が理解してしまう。

(これを逃したら、終わる)

「……強く、なれるのか」

『なれるよ』

即答。

『ただし』

声が、わずかに低くなる。

『代償はある』

「……何だ」

『それは、まだ内緒』

笑う気配。

「ふざけてんのか」

『いいや?』

『でも、知らない方が面白いでしょ?』

狂ってる。

完全に。

だが――

「……いい」

俺は手を伸ばした。

「その力、もらう」

『いいね』

その瞬間――

光が、弾けた。

視界が白に塗り潰される。

そして――

「――ッ!!」

全身に、何かが流れ込む。

熱い。痛い。重い。

なのに同時に、“満ちる”。

骨が軋み、筋肉が悲鳴を上げる。

それでも――止まらない。

(これは……)

(戦い方……魔力の流れ……)

理解する。

考える前に、“分かる”。

『どう?』

声がする。

だがもう、姿はない。

「……何をした」

『少しだけ“引き出した”だけ』

軽い。

だが内容は異常だ。

『君、最初から何も無かったわけじゃないよ?』

「……は?」

『気づいてなかっただけ』

笑う気配。

『人間ってさ、自分を過小評価するの得意だよね』

イラつく。

だが――否定できない。

「……これが、その力か」

拳を握る。

確かな“重み”がある。

さっきまでとは、別物だ。

『でもまだ未完成』

「未完成?」

『育てるものだからね』

声が遠ざかる。

『使いこなせるかどうかは――君次第』

「待て!」

思わず叫ぶ。

「お前は何者だ!目的はなんだ!」

一瞬の沈黙。

そして――

『言ったでしょ』

すぐ後ろで、声。

『観測者だよ』

耳元で囁かれる。

『君の物語を、最後まで見る者』

背筋が凍る。

冗談じゃない。

こいつは本気だ。

『ああ、それと』

軽く言う。

『僕のことは誰にも話さないでね』

「……なんでだ」

『言ったら――』

間。

『壊れるよ』

「……は?」

『君じゃない』

『君の“周り”が』

空気が冷えた。

『大切なものから、順番に』

理解してしまった。

それ以上、聞く必要はなかった。

「……脅しか」

『忠告だよ』

軽い声。

それが逆に怖い。

『じゃあ、時間だ』

空間が崩れる。

白が剥がれていく。

『最後に一つ』

意識が遠のく中――

『君は、どこまで壊れずにいられるかな?』

「……っ!」

――視界が途切れる。

目を開ける。

見慣れない天井。

現実に引き戻される。

胸の奥に残るのは――

確かな“力”と、消えない“違和感”。

(あいつは……何なんだ)

一方その頃――

アイリシア王国。

「俊介くん、いま何してるんだろ……」

そう呟く少女――万屋彩加の胸にもまた、

言いようのない“不安”が広がっていた。

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