27話新たなる旅①
森を抜ける道。
朝の光が木々の隙間から差し込んでいる。
「……で」
アナシュが歩きながら口を開く。
「どこ向かってんだ?」
ザックは前を歩いたまま、あっさり答える。
「町」
「ざっくりすぎるだろ」
思わずツッコむ。
「名前とかねぇのかよ」
「ある」
「言えよ」
「忘れた」
「なんでだよ!?」
ザックは気にした様子もなく歩き続ける。
「まあ着く」
「信用できねぇなぁ……」
ため息をつくアナシュ。
(なんでこいつについて来てんだ俺……)
自分でも思う。
でも――
(こいつから離れるのはもっと危ねぇ気がする)
本能がそう言っている。
しばらく無言で歩く。
風の音。
足音。
それだけ。
「……なあ」
またアナシュが口を開く。
「なんでお前こんなとこにいんの?」
「住んでるからだ」
「雑だな説明が!」
「だいたいそうだろ」
「そうか?」
「……腹減ったな」
正直に言う。
戦闘はしてないが、移動だけでも消耗する。
ザックは立ち止まり――
「待て」
森の中へ入っていく。
「え、ちょ、どこ行く――」
数分後。
戻ってきた。
手には、よく分からない実。
「食える」
「いや説明しろよ!?」
「毒はない」
「“は”ってなんだよ!」
恐る恐るかじる。
「……あ、普通にうまい」
少し甘い。
「だろ」
ザックが少しだけ得意げに言う。
(なんなんだこいつ……)
小さな川のそば。
二人は腰を下ろす。
水の音が心地いい。
「……こういうの久しぶりだな」
アナシュが呟く。
「何がだ」
「普通に座って休むの」
戦争の時は、常に緊張していた。
いつ襲われるか分からない。
常に“戦場”だった。
ザックは少しだけアナシュを見る。
「……戦ってたのか」
「ああ」
短く答える。
「ずっとな」
それ以上は語らない。
ザックも深くは聞かない。
■目的
「で、お前はどこ行くんだ」
ザックが聞く。
「アイリシア王国」
迷いなく答える。
「へぇ」
少しだけ興味を示す。
「遠いぞ」
「だろうな」
「やめとけ」
「やめねぇよ」
即答。
少しの沈黙。
ザックが小さく笑う。
「いいな」
「何がだよ」
「その無駄な根性」
「無駄じゃねぇよ」
「そうか?」
「そうだよ」
立ち上がる。
「行くぞ」
ザックが歩き出す。
「だからどこにだよ」
「町」
「だから雑なんだよ!」
森の中を、二人は進む。
まだ仲間でもない。
信頼も、ほとんどない。
だが――
確かに、同じ道を歩いている。
アナシュは空を見上げる。
(アイリシア……)
遠い目的地。
だが、その一歩はもう踏み出している。
旅は、始まったばかりだった。




