第28話新たなる旅②
風が吹く。
乾いた大地に、砂が舞う。
ザックは歩いていた。
何も言わず、ただ前を向いて。
その少し後ろを――
アナシュがついていく。
「……なぁ」
アナシュが口を開く。
「どこ行くんだよ」
ザックは振り返らない。
「決めてねぇ」
「は?」
思わず素っ頓狂な声が出る。
「決めてねぇって……旅だろ!?」
「だからだ」
ザックは淡々と言う。
「目的地決めたら、それはもう“ただの移動”だ」
「……なんだそれ」
理解できない。
でも――
(こいつ……マジでそう思ってるな)
少しだけ、イラッとする。
でも同時に。
(……嫌いじゃねぇ)
その日は、ただ歩いた。
何も起きない。
魔物も出ない。
会話も少ない。
「……暇すぎるだろ」
「そうか?」
「そうだよ」
沈黙。
「……腹減った」
「自分でどうにかしろ」
「冷てぇな!?」
ザックは肩をすくめる。
「生きるってのはそういうもんだ」
その時だった。
ガサッ
草むらが揺れる。
「……来るぞ」
ザックの声が低くなる。
現れたのは――
狼型の魔物、三体。
赤い目。
低く唸る。
『LV: 32』
「……余裕だな」
アナシュが前に出る。
だが――
「待て」
ザックが止める。
「一人で全部やるな」
「は?」
「連携だ」
(連携……?)
戦闘
一体が飛びかかる。
アナシュは反射で動く。
「――疾風脚!!」
一体を吹き飛ばす。
その瞬間。
ザックが動いた。
速い。
見えない。
気づいた時には――
残り二体の首が、落ちていた。
「……は?」
ザックは剣を振り、血を払う。
「今の見たか」
「いや、見えねぇよ」
「なら、見ろ」
それだけ言って歩き出す。
休息
夕方。
小さな川の近くで、ザックが座り込む。
「ここで休む」
アナシュも座る。
水の音が静かに流れる。
「……なぁ」
「なんだ」
「お前、強すぎだろ」
ザックは少しだけ空を見る。
「そうでもねぇ」
「いやいや、さっきの何だよ」
「技術だ」
「……意味分かんねぇ」
ザックは少しだけ笑う。
「そのうち分かる」
その夜。
焚き火の音が、静かに弾ける。
「……人の気配」
アナシュが呟く。
ザックは、すでに気づいていた。
「出てこい」
しばらくして。
木の影から、一人の少女が現れる。
短い髪。
軽装。
腰に二本の短剣。
「……やっぱり気づいてたか」
少し不機嫌そうに言う。
「誰だ」
アナシュが構える。
少女は肩をすくめる。
「別に敵じゃないって」
ザックが口を開く。
「名前は」
「リオ」
短く答える。
「そっちこそ」
「ザック」
「……アナシュだ」
リオはじっと二人を見る。
「変な組み合わせ」
「よく言われる」
ザックが即答する。
「言われてねぇだろ」
アナシュがツッコむ。
少しだけ空気が緩む。
「で、お前はなんでここにいる」
ザックが聞く。
リオは少し黙ってから言う。
「人、探してる」
(……!)
アナシュが反応する。
「偶然だな」
ザックが言う。
「こいつもだ」
「へぇ」
リオがアナシュを見る。
「弱そうだけど」
「は?」
「でも――」
少しだけ目が細くなる。
「死にかけた顔してる」
沈黙。
ザックが立ち上がる。
「ついて来るか」
リオは即答する。
「いいよ」
「軽っ!?」
アナシュが叫ぶ。
「一人よりマシでしょ」
確かに、そうだ。
三人の旅
こうして――
旅は三人になった。
目的はバラバラ
理由も違う
でも、同じ方向に進む
夜空の下。
火が揺れる。
ザックは静かに思う。
(……流れが来てるな)
そして――
遠く。
誰にも気づかれない場所で。
“何か”が、動いた。




