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ある転移者の人生~王国から見捨てられた俺は地道に最強目指します~  作者: ナイトさん
第一章 赤鬼の悪魔

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第22話赤鬼の悪魔 過去編(前編)


――まだ、“赤鬼の悪魔”なんて呼ばれる前。

彼はただの――少年だった。

空は青かった。

どこにでもある、小さな村。

畑があって、川が流れて、子供たちの笑い声が響く。

そんな、ごく普通の場所。

「――おい、遅いぞ!」

「待てってば!」

土の道を走る少年。

黒い髪に、少しだけ鋭い目つき。

だがその表情は――どこにでもいる子供のものだった。

名前は――まだない。

いや、“あった”はずだが、もう思い出せない。

「また勝ったー!」

友達の一人が笑う。

「くそ……次は絶対負けねぇ」

悔しそうに笑い返す。

その瞬間。

誰もが、普通に未来を信じていた。

「ただいまー!」

家の扉を開ける。

「おかえり」

優しい声。

母親が振り返る。

「また走り回ってたの?」

「うん」

「怪我は?」

「してないって」

そう言って笑う。

父親はまだ帰っていない。

いつものことだ。

畑か、狩りか。

「今日はシチューよ」

「やった!」

椅子に座る。

温かい匂い。

何でもない日常。

それが――

どれだけ尊いものだったか。

その時の彼は、まだ知らない。

夜。

ベッドに寝転び、天井を見つめる。

「……明日も、遊べるかな」

そんな小さな願い。

それだけで十分だった。

――だが。

その“明日”は、来なかった。

夜が、揺れた。

「――ッ!?」

目を覚ます。

外が、赤い。

「なに……?」

起き上がる。

次の瞬間。

――ドォンッ!!

爆音。

地面が揺れる。

「母さん!?」

慌てて部屋を飛び出す。

外に出た瞬間。

目に映ったのは――

地獄だった。

炎。

崩れる家。

悲鳴。

そして――

「……なんだよ……これ……」

人が、倒れている。

動かない。

血。

焼けた匂い。

現実とは思えない光景。

「逃げろ!!」

誰かの叫び。

だが、足が動かない。

その時。

“それ”は現れた。

黒い。

人の形をしているが、どこか歪んでいる。

顔がない。

いや――“認識できない”。

「……なに……あれ……」

理解が、拒絶する。

黒い存在が、手をかざす。

次の瞬間。

――人が消えた。

「……え?」

音もなく。

悲鳴もなく。

ただ、“消えた”。

「……は……?」

脳が理解を拒む。

だが。

現実は、続く。

次々と。

人が。

家族が。

村が――消えていく。

「……やめろ……」

声が震える。

「やめろよ……!」

足が動く。

走る。

母の元へ。

「母さん!!」

見つけた。

倒れている。

「……母さん……?」

揺する。

反応がない。

「……起きろよ……」

声が震える。

「……なあ……」

その時。

背後に、気配。

ゆっくりと振り向く。

そこにいた。

黒い存在。

目が合う。

――いや、“見られた”。

その瞬間。

体が動かなくなる。

恐怖。

本能が理解する。

(あれはダメだ)

(あれは――触れたら終わる)

だが。

逃げられない。

黒い存在が、手を伸ばす。

「……やめ……」

声が出ない。

涙が溢れる。

その時――

「――止まれ」

声が響いた。

空気が変わる。

黒い存在が、ピタリと止まる。

「……ふむ」

もう一つの存在。

白い。

いや――“白すぎる”。

人の形。

だが、人ではない。

その目は――

すべてを見透かしているようだった。

「珍しいな」

白い存在が、少年を見る。

「壊れていない個体か」

「……なに……」

声が震える。

「君、名前は?」

「……」

答えられない。

怖い。

理解できない。

だが――

目を逸らせない。

「まぁいい」

白い存在――観測者が、静かに笑う。

「興味深い」

その一言で。

すべてが決まった。

「実験をしよう」

その言葉の意味を。

少年はまだ、知らなかった。

気づけば。

世界が変わっていた。

村はない。

空もない。

ただ、白い空間。

「……ここ……どこ……」

震える声。

目の前には、観測者。

「安心しろ」

優しい声。

だが――

温度がない。

「君は選ばれた」

「……選ばれた……?」

「そうだ」

観測者が手をかざす。

「力を与えよう」

その瞬間。

体に、何かが流れ込む。

「――ッ!!」

痛い。

熱い。

冷たい。

全部が同時に来る。

「やめ……ろ……!!」

叫ぶ。

だが止まらない。

「いい反応だ」

観測者は、ただ見ている。

「それは“魂吸収”」

「……たま……しい……?」

「他者の魂を取り込み、力に変える能力だ」

笑う。

「素晴らしいだろう?」

「いら……ない……!!」

叫ぶ。

拒絶する。

だが――

止まらない。

体が、変わっていく。

心が、削られていく。

「耐えろ」

観測者が言う。

「壊れるなよ」

「壊れたら――価値がない」

その言葉が。

深く、突き刺さる。

そして。

最初の“犠牲”が来る。

檻の中に、人がいた。

「……やめろ……」

少年は震える。

「それを殺せ」

観測者が言う。

「できなければ、お前が壊れる」

「……っ……」

選択肢は、なかった。

「……ごめん……」

震える手。

涙。

そして――

力が、発動する。

魂が、流れ込む。

「――ああああああああああああああ!!」

絶叫。

その日。

少年は――

“人間”をやめた。

観測者は記録する。

「成功」

淡々と。

感情もなく。

「守護者計画――」

「No.5、適合」

その日から。

少年は、“番号”で呼ばれるようになった。

そして始まる。

100年の地獄が。

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