第2話今泉俊介0①
今回は長いですが戦闘はひとつもありませんしかし今泉が戦争に参加した理由を深掘りした話です。
俺は――普通の高校生だった。
特別な才能もなければ、目立つわけでもない。
クラスの端っこで、静かに日常を過ごす側の人間だ。
でも、それでよかった。
退屈でも、平和で。
それがずっと続くと思っていた。
――あの日までは。
「次の問題は――」
教師がそう言いかけた瞬間、教室が光に包まれた。
「なっ――!?」
視界が真っ白に染まる。
誰かの悲鳴。
机が倒れる音。
俺は反射的に廊下へ逃げようとした。
でも――
遅かった。
目を覚ましたとき、俺たちは“そこ”にいた。
「ようこそ、勇者様方」
豪華すぎる空間。
高い天井、赤い絨毯、並ぶ騎士たち。
そして玉座に座る――王。
「勇者……?」
誰かが呟く。
「ふざけんな!!どういうことだ!!」
叫んだのは鈴木遥人。
クラスの中心にいる、あいつだ。
「あなた方には、魔王を倒していただきたい」
王は、当然のように言った。
意味が分からない。
魔王?勇者?
ここはどこだ?
「帰せよ!!」
「そうよ!!」
「家に帰して!!」
怒号が飛び交う。
だが王は、わずかに顔を歪めただけだった。
「申し訳ない。現時点では帰還は不可能です」
空気が凍る。
「……ですが」
王は続ける。
「魔王を倒せば、帰れる可能性があります」
――餌だ。
そう直感した。
「そして報酬も用意しています」
王の口元が歪む。
「財宝、地位……そして、魔王にとどめを刺した者には」
一拍置いて――
「我が娘、アリスとの婚姻を与えましょう」
ざわめきが広がる。
気持ち悪い。
自分の娘を、報酬にするのかよ。
「……根拠は?」
静かに問いかけたのは広瀬彩海。
「魔王は異世界へ干渉する技術を持っていると確認されています」
「……不十分ね。でも、現状それしか手がないなら従うしかないか」
冷静だった。
みんなが混乱してる中で、あいつだけは現実を見てる。
「では、まずは“スキル”の確認を行います」
そう言って運ばれてきたのは、大きな水晶だった。
次々とクラスメイトが測定されていく。
Cランク。
Bランク。
ざわつき。
「Sランク……光支配」
空気が変わった。
「Sランクだとォォ!?」
王が叫ぶ。
神宮寺連。
やっぱり、あいつは違う。
拍手。歓声。称賛。
――そして。
「次、今泉俊介」
俺の番が来た。
(せめて……Cでもいい)
手を伸ばす。
水晶に触れる。
――何も起きない。
「……え?」
もう一度触れる。
変わらない。
沈黙。
「どういうことですか」
俺は王を見る。
「……あなたには、スキルが存在しないようですね」
頭が、真っ白になる。
「は?」
「お下がりください」
冷たい声。
さっきまでの態度とは、まるで違う。
「……冗談だろ?」
誰も、何も言わない。
視線が痛い。
見下されてるのが分かる。
「俊介くん……」
彩加が近づいてくる。
「元気出して――」
「うるさい!!」
気づいたら、叫んでいた。
「お前はAランクだろ!!」
最低だ。
分かってる。
でも止まらない。
「どうせ俺のこと見下してるんだろ!!」
彩加の表情が、歪む。
「そんなことない!私は――」
その言葉は、最後まで聞けなかった。
「そこまでだ」
王の声。
「他の者は移動してください」
ざわざわと、皆が去っていく。
残ったのは――俺だけ。
「名前は」
「……今泉俊介」
王の目が、冷たく細められる。
「俊介。お前には任務を与える」
「……任務?」
嫌な予感がした。
「戦争に参加してもらう」
理解できなかった。
「……は?」
「スキルを持たぬ者に価値はない」
淡々と告げる。
「貴様は“ゴミ”だ」
心臓が止まったみたいだった。
「そんな貴様でも、使い道はある」
王は笑った。
「戦場で死ぬことだ」
――完全に、捨て駒。
「ふざけんな……!!」
「スキル持ちを行かせた方が――」
「黙れ」
一言で潰される。
「勇者たちは魔王を倒す存在だ」
「だが貴様は違う」
「ならば国のために死ね。それが役目だ」
理不尽。
どうしようもない。
「連れていけ」
騎士に腕を掴まれる。
強い。
抵抗できない。
「やめろ……離せ……!!」
何も、できない。
クラスメイトも、いない。
彩加も――
もう見えない。
その日、俺は全てを失った。
日常も。
居場所も。
プライドも。
――そして、名前さえも。
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