第14話戦闘の代償
「……まだ足りねぇ」
拳を握り、全身を駆け巡る力を感じる。
――だが、体が重い。
限界を越えた代償が、全身を蝕む。
「……はぁ……はぁ……」
息が荒く、視界が揺れる。
エリナの声が遠くに聞こえる。
「クライン!大丈夫!?返事をして!」
全身が痛みで震え、膝が崩れ落ちる。
視界が白く滲み、意識が遠のく――
(……限界……超えた……んだ……)
そして――
ズシン、と体が地面に沈む。
『もう限界か』っと【リ-ド】が悔しそうに言った
全身の力が抜け、アナシュはその場に気絶した。
「……クライン……!」
エリナが必死で肩を支える。
「無理しすぎ……!」
しかし――意識の奥底で、確かに感じる。
胸の奥が熱い。全身を駆け巡る力。
確実に、強くなった――
(……これで……次は……)
アナシュの体はまだ動かない。だが、心の中では次の戦いへの決意が静かに燃えていた。
膝から崩れ落ちたアナシュ。全身の力が抜け、呼吸も荒い。
視界は滲み、痛みが全身を走る。
「……クライン……!」
エリナが必死で肩を支える。
「無理しすぎ……!目を覚まして……!」
だが、アナシュの意識は深く沈んでいる。
――ゴゴゴッ
背後から、低く冷たい魔力の波動。
視線を向けると、ローブ姿の男が現れた。
杖を手に立つその姿は、圧倒的な存在感を放つ。
「……こいつか」
レインの声が、空気を震わせる。
「……アナシュ・クラインだな」
エリナは驚き、そして安心の色を見せる。
「あなた……!?この子を……!」
レインは一歩近づき、杖から淡い光を放つ。
魔力がアナシュの体を包み、痛みを鎮めるように流れ込む。
「……大丈夫か?」
意識の浅いアナシュは、かすかに目を動かす。
体に流れ込む魔力が、全身の疲労を溶かしていく。
「……誰……?」
弱々しい声。
「レインだ。君を助けに来た」
アナシュの体が少しずつ起き上がる。
まだ力は完全には戻っていないが、痛みは和らぎ、呼吸も安定する。
「……助かった……」
小さく呟き、微笑むアナシュ。
「無茶をするな、アナシュ」
エリナが短く叱るように言う。
「……分かってる」
アナシュは拳を握るが、力はまだ本調子ではない。
レインが手を伸ばす。
「ここはもう安全だ。君たちは戻るべきだ」
二人は頷き、レインに支えられながらダンジョンを後にする。
通路を抜け、階段を上がり、地上へと戻る――
夜の空気が二人を包む。
ダンジョンの湿気や魔力の圧迫感は、もうない。
「……ギルドに戻ろう」
エリナが言う。アナシュも小さく頷く。
レインは少し後ろからついてきた。
沈黙の中にも、戦力としての安心感があった。




