第13話初めてのダンジョン④
神回です
「もう一回だ……!」
踏み込んだ瞬間――空気が軋む。
「グルァァッ!!」
振り下ろされる拳。
(速い――いや、重い!)
ギリギリで躱す。だが風圧だけで地面が抉れ、体が持っていかれる。
「チッ……!」
体勢が崩れる。
――来る。
『遅い』
リードの声。
(分かってる!!)
だが間に合わない。
オーガの蹴りが腹にめり込む。
「がはっ……!!」
肺の空気が消し飛び、地面を転がる。
骨が軋む。視界が揺れる。
「クライン!!」
エリナの叫び。
(クソ……強すぎる……!)
立ち上がる。
足が震える。それでも――
「……まだだ」
オーガが、笑った。
「グルァ……」
一歩、踏み出すだけで地面が沈む。
圧が、違う。
死が、近い。
――だが。
胸の奥が、熱い。
ドクン――ドクン――
『……限界だな』
リードの声が、静かに響く。
『だから越えろ』
その瞬間。
――弾けた。
【条件達成】
【戦闘経験値:限界突破】
【レベルアップ】
「――ッ!?」
全身を、力が駆け巡る。
痛みが消える。
いや、それ以上に――
「軽い……!」
地面を蹴る。
世界が、遅い。
オーガの動きが、手に取るように分かる。
筋肉の収縮。重心。次の軌道。
全部、見える。
「……行ける」
一歩。
消えるように間合いを詰める。
「なっ……!?」
自分でも驚く速度。
拳を叩き込む。
――ドンッ!!
「グルァッ!?」
初めて、オーガが揺れる。
だが――
「浅い……!」
手応えはある。だが致命傷には遠い。
オーガの目が、怒りに染まる。
「グルァァァ!!」
棍棒が振り下ろされる。
(来る!)
見える。
だが――
「重ッ……!」
受けきれない。
衝撃で地面が砕け、体が弾き飛ばされる。
「ぐっ……!!」
転がりながらも、歯を食いしばる。
(まだ足りねぇ……!)
その時。
『見えているなら、考えろ』
リードの声。
『敵は何だ』
(オーガ……レベル10……)
『違う』
(……?)
『“鈍重で、一撃が致命”だ』
――理解する。
「……そうか」
立ち上がる。
「当たらなきゃいいんだろ」
オーガが突っ込んでくる。
「グルァァ!!」
振り上げ――叩きつける。
(見える)
躱す。
踏み込む。
だが届かない。
その時――
「クライン!!」
エリナの声。
エリナの刺突が走る。
オーガの顔面に直撃。
「グァッ!?」
一瞬、視界が遮られる。
「今!!」
(ナイス!!)
地面を蹴る。
加速。
限界を、さらに踏み越える。
「はああああああッ!!」
膝を砕く。
――バキッ!!
「グルァァァッ!?」
巨体が揺れる。
崩れる。
「終わりだ!!」
顎へ。
そして――
首元へ、全力。
「ぶち抜けぇぇぇ!!」
拳がめり込む。
衝撃が、貫く。
「――ッ!!」
だが。
まだ、立つ。
「……マジかよ」
オーガが血を流しながら、拳を振り上げる。
最後の一撃。
(来いよ……!)
構える。
逃げない。
「グルァァァァ!!」
振り下ろされる。
――その瞬間。
「見切った」
半歩だけ、ずらす。
拳が空を切る。
「終わりだ」
踏み込む。
全身の力を一点に。
「――砕けろ」
叩き込む。
心臓へ。
――ドォンッ!!!
衝撃が、内部を破壊する。
静寂。
オーガの動きが止まる。
そして――
ズシン、と崩れ落ちた。
「……はぁ……はぁ……」
息が荒い。
全身が震える。
だが――
「……勝った」
膝から崩れ落ちる。
エリナが駆け寄る。
「無茶しすぎよ……!」
「うるせぇ……でも、助かった」
小さく笑う。
その時。
『……今のは悪くない』
リードの声。
「上からだな……」
『事実だ』
静かに、息を吐く。
(強くなってる……確実に)
だが――
「まだ足りねぇ」
拳を握る。
(もっと強くなる)
その目は、すでに次を見ていた。
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