第12話初めてのダンジョン③
奥へ進むにつれ、空気がさらに重くなる。
「……さっきより濃いな」 「ええ。階層が変わる手前ね」
その時だった。
ゴゴゴ……と地面が揺れる。
「……何これ」 エリナの声が低くなる。
『来るぞ』 リードが告げる。
次の瞬間――
壁が、崩れた。
「――ッ!?」
現れたのは、ゴブリンではない。
巨大な体躯。 灰色の皮膚。 手には、歪な棍棒。
「……オーガ」 エリナが呟く。
『レベル10相当。今の貴様らでは格上だ』
(いきなりかよ……!)
オーガが笑う。
「グルァ……」
その一歩で、地面が沈む。
「下がれエリナ!」 「言われなくても!」
だが――
遅い。
振り下ろされる棍棒。
「――チッ!」
受けるしかない。
拳を構える。
(無理でも――止める!)
その瞬間。
『まだだ』
リードの声。
『限界を越えろ』
心臓が、強く脈打つ。
ドクン――
世界が、わずかに遅くなる。
「……見える」
棍棒の軌道。 筋肉の動き。 重心。
全部が――“理解できる”。
「そこだァ!!」
拳を叩き込む。
衝撃。
だが――
「……浅い!」
吹き飛ぶのは、俺の方だった。
「がはっ……!!」
地面を転がる。
(まだ……足りない……!)
オーガが迫る。
死が、目前まで来る。
その瞬間――
『あと一歩だ』
リードの声が、静かに響いた。
振り下ろされる棍棒。
「――ッ!」
ギリギリで跳ぶ。 風圧だけで頬が裂ける。
(クソ、重すぎる……!)
『鑑定しろ』 リードの声。
(今かよ……!)
歯を食いしばりながら視線を合わせる。
「……鑑定!」
視界にノイズ混じりの情報が走る。
『オーガ LV10
HP:820/820
MP:40/40
SP:600/600
平均攻撃力:980
【サブスキル】怪力/耐久強化/威圧
【技】振り下ろし、叩き潰す
【特性】鈍重だが一撃が致命的』
(……は?)
一瞬、思考が止まる。
(攻撃力、ほぼ倍じゃねぇか……!)
「クライン!!来る!!」
エリナの叫び。
「チッ――!」
振り向く。
もう目の前。
オーガの拳が迫る。
「速ぇだろうがよ!!」
『威圧に飲まれるな。動きを見ろ』
(分かってる……!)
だが体が、わずかに遅れる。
――ドンッ!!
「ぐはっ……!!」
吹き飛ばされる。
地面を転がる。
(クソ……ステータス見たせいで一瞬止まった……!)
血の味。
だが――
「……いいな」
口元が歪む。
(勝てねぇ相手じゃない)
立ち上がる。
「もう一回だ……!」
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