第9話逆転の女神
「……っ」
(ヴィアまで……?そんなバカなことあるかよ。)
(それに、アストレイアだと……?)
(あいつ、そんな名前だったのか……)
「アストレイアというのは、この村の信仰神です。ここの学院にも使われています。十中八九、偽名でしょう」
「調べても、調べても、名前と年齢以外、何も出てきませんよ」
「まるで、最初から存在していなかったみたいに——」
「…………」
「鑑識の話じゃ右手の中指だけ細いそうで、何か身に着けてたんじゃありませんか彼女」
「そう、例えば"指輪"とか」
「さぁな」
たしかにヴィアは指輪をしていた。だが何の指輪かなんて知るか。
「では、もう一つ。アーサーさんは全身を殴打されて、亡くなっています。しかも同じような背格好の人物に、複数人で殴られています」
「あなたと、あの自称探偵ではありませんか?」
「黙秘する」
アイス家は巨大すぎる。今や世界を操っていると言っていい程に。警察とグルになってる可能性すら感じる。何せここはアイス家のおひざ元だ。
「はぁ……」
わざとらしく、深いため息をつくホープ刑事。
「一晩は、留置場にいてもらいます」
お決まりのセリフだった。
ガシャーン——。
「また床か。慣れっこだから構わねーがな」
俺は冷たい壁に背中を預けた。
◇ナタール警察署・取り調べ室
「私じゃありませんって!信じてください!!」
ドイルは立ち上がって、捕まりたくない一心で、今にも泣きだしそうな形相だ。
「さっきも聞いたから。どーせあんたらが協力してやっちゃったんでしょ?」
担当刑事のロックがドイルに詰め寄る。
「こう、ぼかーんってね」
「違います!!」
「じゃあ昨日の夜どこに居たの」
「事務所に居ました!」
「それを証明できる人は?」
「いません。私一人です。」
「それじゃ意味ないってッ!!」
ガチャ。
「ロックちゃん、ちょっと」
「りょーかいっす」
(こいつも一晩泊めて、現場行くぞ。人が足りねぇ)
(わかりました。すぐに手配します。)
◇留置場
ガシャーン。
「おい、へぼ探偵」
「ロットさん?」
「ここを出るぞ」
「どうやって手錠を……」
「いいから、早くしろ」
「俺の友人が二人も殺された。ただ事じゃねえ——」
……それに気になることもできたしな。
「こんなとこに居ても何も始まらない!さっさと行くぞッ!!」
ヴィア、アーサー。
二人を殺して、俺たちに擦り付けた奴がいる。そんな怪しい奴、アイス家の関係者に決まってやがる。




