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▼"一次通過"アイスマジック  作者: 薬屋がいる限り1位無理!tanakatakusi
第2章 4女ディヴィアの誓い 学園ラブコメカードバトル編

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第31話2人の道化師


 両足に広がる赤い水面。


 クリームのようにじんわりと。熱狂から狂生へ。


「きゃああああああああああああああああああ」


 ステッキのような、白に青い結晶が施された仕込み銃……


 司会エムニッタが残った出場者を無言で撃ち抜く。


「おい、何やってんだッ!!!お前ッ!!!」


「あーぁーあー★このゲームに勝者は一人ですよーーー?×」



 イカレテル


 さっきまで戦っていた奴ら、皆殺しにしやがった‥‥。


 視界が歪む。血染め。


 アーサー。ヴィア。そして、ディヴィの死が重なる。


 こいつらと交渉は不可能だ‥‥


「さあさあさあッ!!!本日のメインイベントゥゥゥ!!!★」


 エムニッタが舞台の上で両手を広げた。


 白塗りの顔に、赤い口が耳まで裂けた顔が凶悪に歪む。なのに目だけが——笑っていない。


「本日の対戦相手はァァァ!!!ブランカ村の配達員!!!★」


「ロット選手でございますゥゥゥ!!!★」


 シーン……


 静寂すぎる。すでに観客は誰もいなくなった。


 俺は舞台に立ちながら、こいつの目だけをずっと見ていた。


(司会が選手として出てきた。ってことは――)

(こいつは最初から、ここに立つつもりだった。)


「エムニッタ。お前は"何"だ。主催者は何を考えているッ!!!」


「さあてェェ!!!それは試合が終わってからのお楽しみィィィ!★」

 くるりと回って、チリン。帽子の鈴を鳴らす。



「…………」



 1戦目 引き分け

 セット、オープン。

 エムニッタ0ロット0

 青対青。互いに+1。

(最後に同じ色をぶつけてきた。様子見か。)


 6ターン全て終わった時、スコアは同点だった。


「引き分けェェ!!!★なかなかやりますねえロット選手!!!★」


 エムニッタは舞台を歩き回りながら、いないはずの観客に向けて両手を振る。


 笑えなかった。


(このピエロ。最初から引き分けを狙っていた。)

(何の目的で。)


 2戦目 引き分け

 また同点だった。

 今度は俺が積極的に攻めた。黒を早めに切った。金を温存した。

 それでも——エムニッタは全部受けた。

 まるで俺の手が最初からわかっているみたいに。


「またまた引き分けェェ!!!いやあ素晴らしいィィィ!!!★」

「……お前、手を抜いてるだろ。」


 俺は静かに言った。

 エムニッタの白塗りの顔が、こっちを向いた。


「さあてェェ?何のことでしょうねえ?★」

 口の端だけが、少し上がった気がした。


 3戦目 引き分け

 三度目も、終わってみれば同点だった。


「三引き分けェェ!!!これは歴史的な試合ですゥゥゥ!!!★」


 パネルを見ながら、ずっと考えていた。


(こいつは勝てる。なのに勝たない。)

(なぜ引き分けに持ち込む。)


「エムニッタ。」

「はあいィ?★」

「俺に何かを見せようとしてるのか。」


 エムニッタが動きを止めた。一瞬だけ。それからまた、いつもの道化師の顔に戻った。


「さあさあ、4戦目ですよォォォ!!!★これが最終決戦ィィィ!!!★」


 4戦目 ロット勝利

 セット、オープン。

 エムニッタ0ロット+1

(黒を赤で受けた。黒<赤でロット+1。)

(待て。こいつは今まで絶対にこのミスをしなかった。)



 でも——何かがおかしい。

 エムニッタの手が。

 今までと違う。

(わざと、最後に手を抜いた。)

 確信した瞬間、胃が重くなった。


 6ターン試合終了。

 エムニッタ +1

 ロット   +2


 そして時は動き出す。


「試合終了ォォォ!!!勝者ァァァ!!!ロット選手ィィィ!!!★」


 カンカンカーン。

 立ち上がれなかった。


「エムニッタ。」

「おめでとうございますゥゥゥ!★」

「お前、最後わざと負けたろ。」


 エムニッタが振り返った。今度は——笑っていなかった。白塗りの顔の下に、ひどく疲れた何かが見えた。


「……バレちゃいましたかァ。」

 声のトーンが変わった。道化師の声じゃない。


「なんでだ。」

「あなたに、勝ってほしかったから。」

「それだけよ。」


(こいつは。)

(最初から俺を――)


「頑張って、ロット。」


 エムニッタが深く微笑む。鈴が、静かに鳴った。


「母さん?」

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