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【▼本編大絶賛!!"週間3位44ptブクマ感謝"▼】――知るたび、終わるアイスマジック❄  作者: tanakatakusi
第2章 四女ディヴィアの誓い 学園ラブコメカードバトル編

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第25話近づく記憶


「どうぞ、こちらへ‥‥」


と、作業机兼化粧台の前に置いてある丸いイスに腰掛ける。フルールはベッドに乗って目を瞑る。遠い記憶を辿るように呟いた。


「7歳の頃だったと思います‥‥ラグネル姉様とヴィア姉様と私で、よく走り回って遊んでいたんですよ‥‥」


新しい名前が出てきたな―――。


「ヴィア姉様の出自は分かりません。ただ学院には行っていなかったと思います。校内で見たことがなかったので‥‥」


「一緒に住んでるんじゃないのか?」


「たまに部屋に泊まったり、ふらっと居なくなったり、いつも自由にしていました‥‥」


小さい頃からそれじゃ、わがままになるのも頷けるな!


「父も咎めることはありませんでした‥‥」


「そういえば、ルガンはどうしたんだ?」


少し間を置いてから、俺は話を戻した。ここしばらく、酒場で見ていないが。


「他の娘が心配するから、言っていませんが行方不明なんです‥‥」


「警察には言ったのか」


「‥‥言えません‥‥」


フルールは首を振った。


「どうして」


「この村の警察は――アイス家と繋がっています。父もそれを分かっていて、居なくなったんだと思います」


「つまり自分の意思で姿を消した」


「小さい時から父様の考えは分かるんです‥‥自分から居なくなったんだと」


そう答えるフルールには、確信めいたものがあるみたいだ。


フルールは静かに続けた。


「父は昔から、何かを知っていた。でも私たちには、ずっと何も言わなかった」


「それが――娘のためだと思っていたんでしょうね‥‥」


「‥‥俺から見ると、逆に見える」


「え?」


「何も知らない方が、危ない場合もある」


俺の中の母の記憶が蘇る。フルールはしばらく黙っていた。それから、ゆっくりと頷いた。


「‥‥そうかもしれません‥‥」


フルールの言うことを信じていいのだろうか? だが今は、ヴィアの手がかりに集中したい。


「一人で抱えて辛いだろうが、よく耐えたな」


「‥‥っ」


フルールの肩が、小さく震えた。俯いたまま、白い指先がスカートをぎゅっと握りしめる。


「‥‥そんなこと、言われたの……初めてです‥‥」


消え入りそうな声だった。部屋には、古い時計の針の音だけが響いている。


「別に格好つけてるわけじゃない。本心だ」


「ふふ‥‥はい‥‥」


フルールが、ほんの少しだけ笑う。だがその笑顔はすぐに陰った。


「きっと‥‥ヴィア姉様も死ぬことを分かっていたと‥‥」


「どういう意味だ?」


「校内戦の日‥‥酒場に寄った姉様、変だったんです‥‥」


「変?」


「ずっと学院の方を見ていて‥‥誰かを待ってるみたいでした‥‥」


ピリッ‥‥と空気が変わった気がする。ヴィアは俺より早くアーサーの家を出た。学院と方向が違う酒場で、そいつと会う約束でもしていたのか。


「それで、会えたのか?」


「‥‥分かりません。でもたぶん男の人です‥‥」


フルールが嘘を言っているようには見えない。姉妹の直観というやつだろうか。


「話してくれてありがとう。ディヴィも他の姉妹も、あんたも―――俺が守る」


言ってから、少し恥ずかしくなった。柄でもない。フルールは目を丸くして、俺を見ていた。それから――ゆっくりと、目を伏せた。


「‥‥ロットさんは‥‥」


「なんだ」


「変な人ですね」


「そうかよ」


「ええ‥‥」


フルールは毛布をそっと顔半分に掛けなおした。


「ディヴィも、そう言っていました。あなたのこと‥‥」


「ディヴィが?」


「『好きな男が出来た』って」


「‥‥‥‥‥‥」


思わず涙がこぼれそうになった。フルールもかすかに口元を緩める。


「‥‥そうか」


それだけ言った。それ以上、何も言えなかった。俺が傍についていれば――胸の中で、何かがじわりと滲んだ気がした。


「最後に一つだけ聞く」


「はい」


「ラグネルって姉は今も生きてるのか?」


フルールの動きが、止まった。


一秒。

二秒。


「‥‥分かりません」


フルールは悲しそうな顔で俺を真っ直ぐ見た。その目に、曇りの色はなかった。


「ただ――」


「ただ?」


「姉様は‥‥ヴィア姉様より、もっと深いところに居ると思います」


「深いところ」


「アイス家の――核心に、近い場所」


俺は黙って立ち上がった。


「分かった」


「ロットさん‥‥」


「なんだ」


フルールは膝の上で手を組んで、真剣な目で言った。


「本当に――守れますか?」


俺は少し考えた。


「確約はできない‥‥でも守って見せる。それだけは言える」


フルールはまた、あの小さな笑顔を見せた。


「‥‥信じます‥‥」


(母さん、ヴィア、アーサー、ディヴィ――俺は‥‥)


その瞬間。


――コンコン。


部屋の扉が叩かれた。


フルールがびくりと肩を震わせる。


「‥‥誰‥‥?」


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