第20話両手を呪い
前に酒場で見なかったけど、姉妹の一人だったのか――。
これは、驚いた。てっきりどっかの令嬢だから、こんなとこに居ないだろうと思ってた。
「おーっほほほ! 皆様、今日もわたくしの美貌に乾杯なさって? ……あら、そこの冴えない貴方。ロットさんでしたかしら?」
こんな奴だったのか、鳩が豆鉄砲食らった顔してたようだ。
ケイに用があるんでしょう?と優雅に目をやる。
「アーサー様が亡くなってしまって、わたくし傷心ですの!こうして気を紛らわせるために、せっせと働くのですわ。おーっほほほ!」
ゲームのNPCみたいに説明をして、他の客の所へ行ってしまった。
「おーい、ケイ生きてるか」
って我ながら、不謹慎だったか
「....ん。ロット、うるさい。.....まぶしい」
ディヴィがいない性か、いつもよりお眠のようだ。
「あんな事があったからな、心配で見に来たぞ。」
「......へーき、ケイはいつも通り......。」
マイペースで意外と図太いから、大丈夫だったか。励ますつもりが、俺の方がちょっとだけ元気になった気がする。
「......ケイはいつも人一倍、働いてる......。」
「嘘つけっ!!」
カウンターに戻って、やれやれと....席に着く。
今日はどうするか。アーサーの家は家宅捜査中だし、帰ったら怪しまれるかな。
危険を承知で自宅に戻ってみるか。
「どうぞ・・・」
さっきの店員がお冷を持ってきてくれる。
「今日は、店をオープンしたんだな」
「昨日、ディヴィのお見舞いに行きました・・・あの子なら、きっとお店をやって欲しいだろうって・・・」
たしかに、自分のせいで店に迷惑を掛けるより、やって欲しいって言いそうではある。
「ロットだ、あんたは?」
「フルールです・・・」
「ヴィアとも交流はあったのか。」
「えぇ・・・」
警戒されてるのか、ちょっと奥手のような印象だ。
そういや、昼飯がまだだ。ここは昼からやってるから、ありがたい。
「おすすめのメニューをくれ」
「アリビオ湖で捕れた海鮮ピラフとエスペヒスモ熊肉の山菜和え、温室で育てたじゃがいもシチューが温まるわ・・・。今は、アイスゲーム前だから10%引き・・・」
なんだって?聞いたことのないカタカナがいっぱいだ。俺が住んでいた村より、食い物もだいぶ豊富な場所のようだ。
「アイスはどうされますか・・・?」
いつも飲む酒風の水だが、アーサーが断っていたし。襲われて動けないと話にならないから今回は遠慮しよう。
「ごゆっくり休んでいってくださいね・・・」
◇隠し部屋
ロットより少し早く、酒場でくつろぐ男達がいた――
一人はフードを被った男、もう一人はウサだ。見た目は90歳の太った老齢の男だが、未だ野心は衰えず世間ではアイス家と対立しているかのように見せている。
その実、裏ではアイス家と手を組み、乗っ取ろうと画策していた。そんな男は新たな取引に興奮気味の様子だ。
「アイスゲームで優勝した暁には不老薬の代わりに、貴様の願いを叶える。さすればワシの願いも叶う。」
「あぁ、学園に入った甲斐があった。その為に生きてきたんだ。イルテの為にアイスゲームで勝つ方法を考えた。その準備もな」
「聞くところによると、校内でトップ10にも入れず代表にも成れなかったそうじゃな」
ウサは当然の疑問の声を放つ。
「フン、本番は校内戦じゃない。案の定、不戦の誓いを破りヴィアとアーサーは消された。今いる優勝候補はオレだけだ。」
「全てがすんだ後、貴様の妹もワシの妾にしてもよいがの。カハハハ‥‥!!」
ワシは、品定めが得意でな。カハハハ‥‥!!と不敵に笑い転げる。
俗物が.......と内心吐き捨てる。願いさえ叶えれば、こんなクズ殺してやろうか。
「取引成立じゃ‥5女―――いや、5男スタン」
取り払ったフードから窺える相貌は紛れもなく、学院でロットと争った黄色い髪の男、スタンその人だった。




