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四半期3位!!アイスマジック 死んだ少年が母の肉体で蘇り真相を追う!?  作者: 薬屋がいる限り1位無理!tanakatakusi
第2章 4女ディヴィアの誓い 学園ラブコメカードバトル編

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第7話……姉サマは渡さない

 ぶっっっそうだな、おい!

 比喩じゃなく、本気で命の危険を感じるタイプの眼光だ。


「ちょっとケイ! これから1週間一緒に練習する仲間なんだから! そういう物騒なこと言わないの!」


 ディヴィアの慌てた声が室内に響く中、俺はこの学園の底の深さを、改めて肌で感じていた。

 ――そもそも、ケイはどう見ても学年が下だろう。それなのに中3の実行委員室で一緒に練習していいんだ? 妹だから特別に一緒にやりたがっているのだろうか。

 潜入捜査官としては、懐に飛び込んで情報を引き出すのが先決だ。俺はさっそく、不機嫌の塊のようなケイの練習相手になってやることにした。


「むっ……」


 結果は5勝5敗、見事なイーブンだった。

 意外とやるな、この黒チビ。

 プレイしてみて分かったが、この『アイスゲーム』の基本戦術は、「金」のカードを、相手に対し-1Pのペナルティを持つ「黒」のカードに絶対にぶつけず、失点を防ぐことにある。

 【赤>黒>金】という基本優位を脳内で素早く抑えておけば、あとは読み合いに持ち込んで着実に点数を稼ぐだけだ。やはり、ロジックの組み立てが勝敗を分ける。


「ケイと互角に渡り合えるなら、今回の代表戦はかなりいい線いけるわね!」


 ディヴィアがポンと両手を叩いて喜ぶが、当のケイは納得がいかないように顔を真っ赤にしている。


「……姉サマ! 私はこいつより、ずっと強いのです……!」

「……あうぅ、せめて、せめて私をディヴィ姉サマと一緒のチームにっ……」


 涙目で訴えるケイだが、あいにくこの代表戦は学年別の縛りがある。ディヴィアとケイは別チームだ。しかも今回は、各学年の代表が二人ずつ選出される『2対2(ペア)』のチーム戦らしい。


「残念だったな。俺とディヴィアがペアを組むんだから、大人しく諦めろ」

「……おのれぇえええ……ぐぬぬぬぬ……っ!」


 あ、これ火に油だったわ。案の定、猛烈なヘイトを買ってしまった。


「あ、私のことはディヴィでいいわよ、ロット」

「姉サマっ!!!!」


 なるほどな。

 こいつ、ディヴィのことが好きすぎる。だから隣に割り込んできた俺に、やたらと牙を剥いて突っかかってくるわけだ。シスコンのシスコンたる所以を見た気がする。


「ざまぁねえな、わっはっは!」


 つい意地悪く笑って煽ると、ケイの血管は完全にリミットを振り切った。


「……アストレイア様、どうか、どうかこの愚かなる害虫に、大いなる死の恩寵を……」


「悪いが、そんなオカルト呪詛は俺には効かねえよ」


 ゴスッ、ボスッ!


 って物理攻撃じゃねーか!

 ケイはどこからか取り出した不気味なウサギのぬいぐるみを、全力の投擲フォームで俺の顔面に放り投げてきた。


「……べっーーーーだ!……っ」


 バタンッ!


 盛大にドアを閉めて走り去っていく。まったく、忙しいやつだ。


「……ふふ、あの子が、初対面の人とあんなに感情を剥き出しにして話すなんて珍しいわ」


 ディヴィが愛おしそうにドアを見つめる。そうなのか。まぁ、見るからに重度の人見知りだしな。


「ますますあなたを気に入ったわっ!」


 ディヴィはそう言って笑った。


 ◇


 キーンコーンカーンコーン。


 放課後。ディヴィと一緒に下校の途についているわけだが、さっきから背後にみょーな殺気(ひりつくような視線)を感じる。振り返るまでもなく、あの黒チビだろう。


「ヴィア姉さま? えぇ、学院には昔通っていたそうよ!」


 歩きながらディヴィにヴィアのことを探ってみるが、返ってきた答えは予想外に軽いものだった。

 なんで卒業生がまた中等部に入れる?学院が適当すぎるのか。ヴィアが本当はどこかの格式高いお嬢様なのかとさえ思えてくる。


「ケイのクラスに、ヴィア姉さまが入り込んできた時はさすがに驚いたけれど」

「まぁ、ヴィア姉さまだし……」


 いや、おかしいだろ! そこはもっとツッコめよ!

 なんで高校生以上の見た目をしてるヴィアが、中1の教室に当然のような顔をして入り込んでるんだよ! この街の人間は全員、ヴィアの存在に対して思考停止でもしてるのか?


「あ、それじゃ私、これから酒場の手伝いがあるから!」


 ディヴィの言葉に、俺の脳裏にアーサーの言葉がよぎる。

 ――『僕たちが周囲から見張られていないか、監視する』

 俺たちを狙う見えない脅威。だとしたら、この何も知らない姉妹はどうなんだ? 俺と一緒に居ない方が、彼女たちにとっては安全なのかもしれない。だが……。


「ケイも後ろにいることだし、そこまで送るよ」


 俺が親指で背後を指さすと、ディヴィが不思議そうに振り返った。


「おーい、どうせ一緒に酒場に行くんだろ! コソコソしてないで出てこい!」


 ……がるるるるる……。


 犬かお前は!

 建物の陰から、今にも飛びかからんばかりの唸り声をあげて、ケイが姿を現した。


「……ふん、姉サマに纏わりつく不浄の虫め……」


「……今すぐ、ここで滅す……」


「はーい、そ・こ・ま・で」


 ディヴィに後ろからひょいと抱きかかえられ、ケイは「ぶぅ……」と分かりやすく不満そうに頬を膨らませた。完全に猫の扱いである。


「そういえば、ヴァロン酒場って家族だけでやってるのか?」


 歩調を合わせながら、何気なさを装って核心に近い部分を聞いてみた。


「ええ、今はマスターと、ヴィア姉さま、フルール姉さま、それに私と、末っ子のケイの5人で切り盛りしてるわ」


 ふーん? 4姉妹、プラス店主か。

 ……あれ? 待てよ。

 今、ディヴィの口から出た家族構成の中に、母親の名前が入っていなかったぞ。複雑なご家庭なんだろうか。


「それじゃ、ロット、ばいばーい! また明日ね!」

「……いっーーーーだ!……っ」


 雪がちらつく夕暮れのひと時。陰で盛大に変顔をしているケイが、ディヴィに「こら、めっでしょ!」と怒られている微笑ましい光景。

 ――肝心な所を聞きそびれてしまった。


 ◇


 夜。潜入捜査の拠点であるアーサーの隠れ家。


「……なぁ、お前酒場の仕事はいいのかよ」

「何よ、急に」


 シャワーを浴び終えたばかりなのだろう。湯上がり特有のみずみずしい香りを漂わせ、ベッドで贅沢にくつろいでいるヴィアに、俺は呆れ半分で問いかけた。


「お前の妹たちは、今も店でせかせかと働いてるぞ」


 ヴィアは濡れた髪をエレガントに指先で弄びながら、事も無げに言ってのけた。


「いいのよ、別に。……私は生まれつき病弱だから」


 嘘をつけええええええええええええ!!!!


 昨晩、俺をゲームでボコボコの10敗に追い込んだ奴のどこが病弱だ!

 この女、やっぱり何から何まで怪しすぎる――。

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