第17話真夜中のマスコット
(――前回は酒場の裏口が開いていた。二度目はないだろう。マスターもいないしな)
今、裏口に人がいないのは盗聴器でわかっている……
ならトイレに行く振りをして、中から鍵を開けておくか。
黒髪の少女ことケイは床で寝ているzzz……ディヴィアは元気に接客中だ。
(よしっ!運が向いてきた……!)
フッ——彫刻の影から気配もなくフルールが顔を出した。
「トイレはあっちよ……」
「あぁ、ありがとうフルール」
もしフルールが殺人犯ならどうする?
俺なら全体が見える所で、いつも通り仕事をする。
(――今んとこ容疑者だ。悪いなフルール)
鍵はチェックされるだろうから、念の為トイレと裏口の両方に細工しよう。あとは2階にあがるチャンスを狙うか。この位置からだとまるで奥が見えない。
ジャッ……バタン!
用を足す。
「ぎゃふんっ」
「ぶっ……いてぇ」
トイレから出た所で何かに躓き、立っていた人物にぶつかってしまった……
「ごめんなさいっ……!!」
ディヴィアだった。
「いや、悪いのは寝てるこいつだ」
(イモムシかと思ったぞ)
「……zzz」
どうやって移動してきたんだこいつ?
「コラっ!お客様の前でしょ!起きなさい!!」
「……んやぁーやー」
「あぁ、もう1時過ぎだ。寝かしといてやれ」
「すみませんっ!!この子まだ13歳でっ!!」
労働基準法はいいのか。店員というよりマスコットだなこりゃ。
「おやすみ」
「……んあぁぁゆ?」
チラッと寝顔を覗いてみた。
ゴスッ。
「ぶっ」
とんでもないスピードでパンチが顔にめり込んだ。このガキほんとに寝てんのか!?
「つ、連れていきますっ!」
夜だからかいつもより俺のテンションが低いのが幸いしたな、ちびっ子。
「そろそろ店じまいね、本日もありがとうございました……」
「――じゃあな」
全員が見送る中、ディヴィアが申し訳なさそうにしていた。
俺は酒場の裏手に引き返した。
「さぁ忍び込むぞ」




