第16話黒星の刻印
「冷えぇぇええ……」
「昨日より冷えてやがる」
峡谷という立地上、10月下旬の寒さに両肩を摩り、俺とドイルは互いに身体を震わせた。気温は零度をゆうに下回る。
「早めに拠点ができてよかった。路地裏の土管で寝るのは勘弁だ」
「私は隠れる場所が無かったので、ゴミに紛れて寝ました」
(当初二人で行く予定だったが、俺が酒場、ドイルが路地裏だ)
「お使いを頼んだぞ」
スタスタ……
ドイルと別れ先を行く。
「どうか——アストレイア様のご加護がありますように」
ドイルはぽつりと呟いた。
◇酒場への道中
(酒場は深夜1時15分には閉まる)
(それまでに、ルガンともう一人を警戒しつつ、さらに協力者を探す)
「ケケケ……あんた死相がでてるよ」
「…………」
(なぜこうも俺ばかりが変な奴に出会うのか)
深い藍色のフードを被り、ニタァ……と不気味に笑う。アイス結晶だろうか。クリスタルに手をかざしながら佇む、怪しすぎる風貌の老婆だ。
「婆さん、俺は忙しいんだ」
「あたしはマオさ」
「黒い。黒いねぇ、あんた女難もでてる。数え役満さね」
どう見ても西洋占い師なんだが、例えにマージャンを使うのは違和感があるな……
「当たってるよ。あんたに絡まれた」
「ケケケ……」
「黒い家には黒いもんが入ってる。あんたは家に呼ばれて今日死ぬ」
「はいはい、じゃあな」
こりゃきりがないな。さっさと酒場に行くとしよう。
「はぁ、どこにでもいるな、ああいう輩は……」
「時間を食った」
◇
カラン。
「いらっしゃい……」
銀髪の店員ことフルールが案内をしてくれる。
(メンツは昼と同じ……シフト通りだ)
「また会ったな」
「ロットさんは今日は一人……?」
「ロットでいい」
「そう……」
キョロキョロ……
(昼のフードの男はいない。帰ったのか?)
カウンターに腰を掛ける。
「ご注文は……?」
「君」
「もう酔ってるのね……」
(歩きながら盗聴した結果、閉店間際でもルガンはまだ帰っていないことが分かった。)
(2階には他の姉妹がいることも分かった。)
(……なら警戒すべきは、ヴィアを殺したもう1人)
必ず証拠を集め、追い詰めてやる——!!




