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第68話 海賊の日記の翻訳

『最初は戸惑いが隠せなかった。なぜなら俺達は敵船の大砲を大量にくらって船ごと海の底に沈んだのだから。でも、気がついたら俺達無傷で海の中に立っていた。真っ二つになった船も何事もなかったみたいにピンピンしてやがる。だが、これは夢でもなんでもない。これから俺達は俺達がどうなったか調べるつもりだ』


『化け物が現れた。今まで俺達は人間相手にしかしなかったが、見たこともない化け物が海の中にいやがった。まぁ腕っ節には自信があるからすぐにやってやったがね。ただ、ここが俺の知っている場所じゃないってのは確実だと思ったね。もっとこの世界のことを調べないといけない』


『この世界には魔法なんておとぎ話にしか出てこないもんが存在するらしい。でも、不安になあることなんて一つもなかったぜ。なんせ、この世界の住民は弱い。弱いから魔法なんかに頼ってやがる。俺の剣は大地をも引き裂く。元の世界にいた頃はこんな芸当できなかったが、この世界で俺は海だけじゃなく、陸も空も支配できるかもな』


『ヒャッハァ。宝を大量に手に入れた。特にこの虹色に光るオカリナは高値で売れそうだ。これで一生遊んで暮らせそうだ』


『このオカリナは売れないらしい。なんか神がどうかとか言っていた。ふん。神か。そんなもん俺が殺して、この世界の神には俺がなってやるぜ』


『エルフの大地でオカリナを吹くと良いらしいが……。そんなことよりももっと大事な情報が手に入った。なんでもこの世界には『空のオーブ』に『大地のオーブ』それと『海のオーブ』ってのがあるらしい。海賊としてはまずは海のオーブってのをかっさらってやるとするか』


『しくじまったみたいだ。海のオーブなんかに首を突っ込むべきじゃなかった。くそっ。この世界の生き物は俺よりも弱いはずだろ! ありえない! くそがっ! リヴァイアサン……。あいつに喧嘩を売るべきじゃなかった。海のオーブなんて手に入れようとした俺達がばかだった──』


 日記の翻訳はここで終わっている。


 俺は、パタンと本を閉じた。


 ノーシュヴァイン城にあるフレデリカの研究所にまたお邪魔して、新しく買ったフレデリカお気に入りのテーブルに座らせてもらい、ベヒーモスが翻訳してくれた沈没船の日記を読んだ。


「因果応報だな」


 異世界の海賊が海に沈んで死んだかと思ったけど、こっちの世界にやって来て好き放題して神の怒りに触れ、最終的には海の底に沈んだ。


「何かわかった?」


 目の前に座るフレデリカが、テーブルに置かれているお菓子を食べながら聞いてくるので、俺も1つもらいながら答えた。


「やっぱり、あの沈没船は異世界の海賊船で……。これ、美味しいな」

「フレデリカ激推し。最近王都で流行っている」

「へぇ」

「でも、フレデリカの方が美味しいよ。今日食べる?」

「はい。下ネタノルマ達成でございまーす」


 適当に返事をしてやって、こちらの話しを続ける。


「んでだ。まぁこの世界で色々とやって、海のオーブを盗んでリヴァイアサンの怒りに触れて沈没したと。その間に好き放題してたみたいだから同情もできんな」

「海賊って感じの人生だったんだね」

「まぁなぁ」


 言いながら、お菓子に手を伸ばしたところで気になる部分を口にする。


「あの虹のオカリナ。ええっと、エリスはなんて言ってたってけ?」

「『イリスのオカリナ』」

「それそれ。それをエルフの大地で吹くと良いらしいって書いてたな」

「良いことって?」

「多分……ベヒーモスの言葉も考えると、ジズでも召喚できるんじゃないかな?」

「『空の魔神ジズ』」


 ゴクリと生唾を飲み込むフレデリカ。


「ジズを召喚してどうするの?」


 聞かれて少し間を置いて答える。


「なんもないな。別に空の支配者になりたいとじかゃないし」

「だよね。じゃ、イリスのオカリナは使わない?」

「ベヒーモスは友好的だったけどさ、リヴァイアサンみたいに神経質で難しい魔神だったら嫌じゃん?」

「ありえる。リヴァイアサンは怖い」

「触らぬ神に祟りなしって言うし、わざわざ使う意味もないだろ」

「触った髪で性欲上昇とは言うよね」

「おいおい。今日のノルマ達成しただろ。下ネタは控えろよ」

「むぅ。最近のリッタ冷たい」

「下ネタ連発のロリッ子にはこういう態度になるの」


 そう言いながら俺は立ち上がる。


「今日も王様に呼ばれてるんだろ? そろそろ行かなくて良いのか?」


 そう言うと「あー」と気だるげに声を漏らしながら立ち上がる。


「行くのだるい。リッタと一緒にいる」

「こらこら。もうお姫様じゃないんだからワガママは通用しないぞ」

「むぅ。お姫様扱いされるのは嫌だけど、こういう時はお姫様に戻って、だるいことは回避したい」

「傲慢が過ぎるぞ」


 笑いながらフレデリカを立たせて研究所を出た。




 研究所を出ると、タイミング良くルナが立っていた。


 おそらくフレデリカを呼びに来てくれたのだろう。


「おっすルナ」


 手を上げて挨拶をすると「ちょうど良かった」と声を出していたので首を傾げる。


「どうかしたのか?」

「いえ。大したことではないのですが」


 前置きをしてからルナが説明をしてくれる。


「ノーシュヴァイン王より勇者パーティに召集がかかりましたが、今回はリッタ様も同席するように言われてまして」

「俺も?」


 自分を指差して聞くと「はい」とはっきり返事をされてしまう。


「いやー。俺はいいよー」


 笑いながら冗談混じりで返答するとルナが真剣な顔をしながら言ってくる。


「今回は縄で縛ってでも連れて来てほしいとのことです」

「ルナが縛ってくれるのか?」

「SMプレイはちょっと……」


 瞬時に、ガイコツの王のケツをしばきまくっていたルナを思い出す。


「私はリッタ様とイチャイチャプレイをご所望です♡」

「ああ。恋人みたいなイチャイチャも良いよなぁ」


 本心からの願望を呟くと、フレデリカが俺の服を袖をクイクイしてくる。


「リッタ。フレデリカには下ネタ禁止って言ったのに」

「おっと、すまない。つい……」


 あははと笑って誤魔化すが、フレデリカは唇を尖らせて拗ねていた。


「とにかくですね。今回はリッタ様も連れてこいとの王のご命令ですので、ご同行お願いします」

「あー。わかったよ。はぁ……だりぃな」


 頭をガシガシかきながら愚痴を1つ漏らすとフレデリカが言ってくる。


「フレデリカの気持ちわかった?」

「めっちゃわかった」

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― 新着の感想 ―
[一言] 日記って何のために書くのか、という話が有りますねえ。明治の大政治家とかは、明らかに後世読んでもらうために日記を書いていたのだとか。 この自業自得の海賊さんは、なんで日記を書いていたのか。ま…
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