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第45話 VSワーウルフ

『黒い森で暴れてる。止めてくれ。私は奥にいるから』


 なんともアバウトな依頼主様なこった。


 依頼内容もアバウトなら、依頼主の居場所もアバウトだ。


 まぁ、依頼受注のやり方がアバウトだったから仕方ないのか。とりあえず奥に行けばなにかわかるだろう。


 ノーシュヴァイン城下町を出て南下すると『ワルツワットの森』へと辿り着く。


 確かに外観が黒く見えるので『黒い森』という別名で呼ばれているのも頷ける。


 しかし、その名の印象とは違い、森の中は暗くはない。


 太陽の日差しを浴びた木々達の木漏れ日おかげで、どちらかというと明るい。


 鳥の囀りや虫の鳴き声もどこからか聞こえてくる。


 サアァァと心地の良い風が吹くと、木の葉が揺れて、耳に心地良い。


綺麗な森だ。


 空気も澄んでおり、吸うたびに新鮮な空気が体内を巡り、悪いものを浄化してくれているような気分。


 人というのは元来、こういった場所で生活をするものなんだと実感する。


 森林浴をするには最高の場所。


 だが、この森を好むのは人だけではない。


 人が好むものは魔物も好む。というわけで、ここには大量の魔物が生息している。


 そう言ったわけで、基本的に人は立ち寄らない場所である。


 そもそも、この森を抜けた先には廃城しかないので、立ち入る場所でもなし。


 入るのは自殺志願者だろうか。


 昔々はその廃城へ向かう通路だったのだろう。


 ある程度整備された道があるし、何百、何千と馬車が通ったと思しき車輪の跡もある。


 なんだか歴史を感じるな。


『バァウゥゥゥゥゥゥ!』


 突如として森の中に響き渡る遠吠え。


 木々に止まって鳴いていた鳥が一斉に飛び去ると、木の葉が揺れに揺れる。


 揺れている木々をかき分けるかのように何か黒い影がやってくる。


『グラアアアア』


 黒い影が飛びかかってくるので、すかさず横っ飛びでかわす。


 ゴロゴロと2回転した勢いで立ち上がり構えながら相手を見てみる。


「『ワーウルフ』か……」


 襲ってきたのはワーウルフという魔物だ。


 オオカミの風貌と習性があり、鋭い牙で獲物を襲う肉食の魔物。特に好物は人肉とかいう人類の天敵とも言える相手。


「1匹……」


 なんて思っていると、ゾロゾロと俺を囲むように集まってくる。


「そりゃそうだよな……」


 10……いや、もっと……。


「おいおい……。何匹増えんだ。発情期か」


数えるのが嫌になってくる程に集まってきやがる。


いや、集まるというよりは戻って来たのか。


どうやらワーウルフの縄張りに入ってしまったのだろう。


その全てがこちらに好戦的にうめき声を出してくる。


俺のスキルの効果上、1対複数の戦いってのは大の苦手なんだ。


森に入ってまだ全然経っていないのにこの始末。


 ワーウルフなんて並の冒険者じゃ1匹も倒せない強さだ。ギルドにいた猛者達でやっと1匹。こりゃこの森に人が近づくなっていう意味が実感できるな。命の保障はできない。


 ワーウルフは必ず群れで行動をする。数の暴力で獲物を狩る。聞こえは悪いかもしれないが、生き残るには当然の策だ。人間だってパーティで行動するからね。


 賢いからだろう。


 俺が普通の人間なら既に襲い掛かってきているはずだが、未だうめき声を出しているだけ。警戒しているのだろう。


 俺の魔力は異世界人の父さんとアスガイア人の母さんの血が混ざっているので、普通の人とは少し違う魔力みたいだ。


 賢いからこそ相手を警戒し、逃げるか戦うかの選択をしている最中というわけか。


 ワーウルフは誇り高い魔物なので獲物から背を向けるといったことはあまりしない。


 おそらく彼等の選択は戦うを選ぶだろうが、俺との戦闘はその誇りってのが仇となる。


 誇り高いワーウルフは群れのボスが先陣をきる。


 賢い魔物だが、所詮は魔物。ボスの決め方は単純な腕力で決まる。


 つまり、この群れの中のボスは最初に俺へ襲い掛かったやつが1番強い奴だ。


『アッパーコンパチブル』


 最初に襲い掛かってきたやつの目を見て、俺はワーウルフの能力を得た。


 両手を地面につけて、まるでオオカミのように手と足で跳躍する。


 そのまま近くのワーウルフへ右腕を振り下ろす。


『キャフウウウ!』


 甲高い声と共に1匹を吹き飛ばす。


 すぐ近くにいたもう1匹を足で蹴飛ばしてやると、同じような叫びを上げて吹っ飛んで行った。


『バァウゥゥゥゥゥゥ!』


 さっきと似たような遠吠えが聞こえてくると、数匹が一斉に襲いかかってくる。


「ぐっ! かはっ! ごっ!」


 1匹が攻撃をしてくると、すぐ次の奴が攻撃をしてくる。なんとも連携の取れた攻撃。


 正面の連撃を防御していると、背中へ同じような連撃をくらってしまう。

 

背中を守るために振り返ってみたら、また背中へ攻撃をくらう。


 連携の取れた攻撃なので、結構なダメージを受けてしまう。


「がああああああ!」


 気合いの言葉を放ちながら両手を、バンッと勢いよく広げ、風圧で向かって来るワーウルフを吹き飛ばしてから態勢を整える。


そして、腕を振り、脚を振って攻撃をする。


 ボスとの間に結構な力の差があるみたいで、一斉に攻撃してきたワーウルフ達は、それぞれ1撃で吹っ飛んでくれた。


「はぁ……はぁ……」


 とは言っても、こちらは1人。


『ぐるるるる』


 向こうは……何匹いるってんだ、畜生が。能力はこっちが上でも、数の暴力がえぐいな。


『ガアアアアア!』

「ぐっぁ!」


 息を整えていると思いっきり足を噛まれてしまう。


「はあああ!」


 俺の足を噛んでいるやつを、噛まれたまま脚を振って吹き飛ばす。


「っつ……」


 噛まれたところから出血してしまったが、これくらいならまだ大丈夫だ。


「こりゃ時間との勝負か。早く決着をつけないとな。日が暮れるんじゃないか……」


 幸いにもボスとその他の奴等との力の差が結構あるみたいだから、問題はボスとの戦闘。


 俺のスキルが上位互換と言えど、体力が持つかどうか……。


 まだ森に入って間もないのに、最初から躓いているな。ははっ。


 ドゴオオオオオオ!


 隕石でも降ってきたかのような轟音が森に響き渡る。


 突如としてなにかが目の前に落ちて来た。


 なんだ? なにが落ちてきた?


 落ちてきたものの周辺からは、大きな土煙が上がり、中の様子がわからない。


「やっぱり……」


 土煙の中から聞き慣れた可愛い声。


聞き慣れた声を耳にして俺の表情は綻んだ。


「リッタくんだ」

「ローラ!」


 土煙から現れたのはいつものポニーテールではなく、髪を下ろした拳の勇者『ローラ・ヴァレリー』だ。


 ルビー色の長い髪を靡かせて俺の目の前に立つ。


「大ピンチみたいだね」


 髪型はいつもと違うが、口調はいつも通りに軽い感じで言ってくる。


「大ピンチだった、かな。正しくは」

「ん? なんで過去形?」


 俺は彼女の琥珀色の瞳を見つめた。


『アッパーコンパチブル』

「救世主の登場で大ピンチはいつもの光景に変わったからさ」


 答えると、俺は地面を蹴って1匹の前に立つ。


 軽くジャブを放つと、パァン! と風船が破裂するかのような音と共に、血の雨が降り注いだ。


「そこはチャンスじゃないんだね」

「最強勇者様のいつもの光景、だろ!」


 1匹、2匹と軽いジャブで倒して行く度に返り血を浴びる。


「違いないね」


 ローラは言いながら脚の連撃で、1匹、3匹、5匹と蹴散らしていく。


「おい拳の勇者。いつの間に脚の勇者にジョブチェンジしたんだ?」

「固いこと言わなくて良いじゃん、か、よっと!」


 ローキックからのハイキックからムーンサルトキックで、ワーウルフを簡単に蹴散らしていく。


「本格的に脚の勇者様だな」

「なら、これで良い?」


 言いながらローラは両手首を合わせて腰に持っていき、そのまま前方に突き出した。


『白虎爆砕撃』


 突き出した手から半透明の白虎が出てきて、前方のワーウルフ達を切り裂いていく。


切り裂かれたワーウルフがその後すぐに爆発していく。


止まることのない暴走イノシシみたいな白虎は、直進だけしてターゲットを切り裂いては爆発するローラの秘奥義。


ワーウルフを数十匹消していくと、スゥーと白虎も消えていった。


「やっぱりオオカミにはトラだよね」

「えぐ……」


 こんなん敵だったら絶対嫌だわ……。


 しかし、味方だとこんなにも頼もしいものはない。


 こちらの負けじと、右フック、左ストレートで倒していき。


『鳳凰煉獄脚』


 脚から炎を巻き上げてワーウルフを無双してやる。


「リッタくんも脚技使ってんじゃん」

「脚技つえええ」


 拳の勇者様の脚技超強くてびっくりしていると、勝ち目がないとわかったのか、ワーウルフのボスが吠える。


 生き残りの数匹が共に逃げようと森の中に逃げて行く。


「ありゃ逃したら厄介だな」

「だね」


 お互いに頷き合って俺は右手。彼女は左手を突き出した。


『霊亀滅雅弾』


 俺達の手から巨大な球体のエネルギー弾が現れる。


 それを逃げるワーウルフへ放ってやると。


 ドガアアアアアア!


 森の中が、アスガイアが揺れた。


「威力めっちゃ上がってない?」

「めっちゃ強くなったよ♪」


 聞くと、愛らしい笑顔をしながらピースサインで答えてくれた。

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― 新着の感想 ―
[一言] やっぱり、集団の魔物相手だと辛いんねえ。ボスの能力でも所詮魔物どまりだから。 そこで救世主登場と。これはとっとと片付けて、森デートか/w
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