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アラブの王と王妃  作者: 雪見だいふく
17/30

父娘の陰謀






(ぬく)もりに目を開けると、カーテンの隙間から光が差し込むのが見えた。

ぼうっとする(まなこ)を擦り、身体を反転させるとぎょっとする。


(陛下―――)


何故アリソンのベッドで一緒に寝ているのか。

全く覚えていないこの状況に目が覚め、混乱した頭で必死に思い出そうとした時…。


「百面相しているぞ」


間近から(かす)れた低い声が聞こえ、アリソンは夫を見る。

夫は少し寝ぼけた眼差しでアリソンを見つめると、ふっと笑う。

含みのある笑みに色気を感じ、アリソンの顔が真っ赤になる。


「身体はどうだ?」

「え」

「熱で朦朧(もうろう)としていただろう」


あ、なんだ…。

何も覚えていない状態で身体はどうだ?なんて聞かれたら、何かしてしまったのかと怖くなった。


「大丈夫です。あの、でもどうして陛下が私のベッドに?」

「覚えていないのか?」

「…はい」


片眉を上げた夫に、アリソンは申し訳なく思う。


「君が離してくれなかったんだ。熱で心細いから行くなって」

「え。私、そんなことを…」


羞恥でかあっと赤面した顔を見られたくなくて、シーツで覆い隠す。


「ああ。……俺は嬉しかったが」


ぽそっと呟かれた言葉に、アリソンは驚いてそうっと夫を見る。

夫は心なしか少し赤くなって、アリソンから目をそらしていた。


甘酸っぱい雰囲気の二人に、邪魔をするかのように扉がノックされる。



「アリソン様、おはようございます。失礼します」


アリシアが部屋に入ってくると、こちらを見て目を見開く。

次ににこっと完璧な笑みを浮かべると、「失礼しました」と言って退出していった。


「あ、アリシア…」


今まで夫と一緒のベッドで寝たことがないので、いきなりの状況にアリソンも混乱していたが、アリシアに見られたことで現実に戻る。

ベッドから出ようとすると、腕を引き寄せられベッドに寝かされた。


見上げると夫が伏し目がちに見下ろしている。


「へ、陛下」

「まだ寝ていろ。今日は安静にしていていい」


と言い終わると、ベッドから降りて扉へと歩いていき出ていった。

代わりにアリシアが入ってきて、ベッドに近づいてくる。


「アリソン様、お加減はいかがですか。昨夜、体調を崩してしまったそうですね。申し訳ありません、気づかなくて…」

「大丈夫よ。ただの熱だし。でも、後ちょっとだけ寝てもいい?」

「はい。また後で見に来ますね」


アリシアが退出すると、アリソンはベッドの中に深く潜り込んだ。


まだ夫の温もりと匂いがあるシーツから、包まれているかのようでアリソンの身体は熱くなっていく。

嬉しかったと言った後の、夫の顔が脳裏から離れず、アリソンは胸が苦しくなった。

これではまた熱が上がって、公務ができなくなる。

ぎゅうっと目をつむり、何も考えないようにするのだった。










◇◇◇










ラビがアリソンの寝室から出て、廊下を歩いている時だった。

前方から大臣とその娘ウルスラが、こちらに向かって歩いてくる。


「これは陛下。おはようございます」

「ああ」


薄っぺらい笑みを浮かべながら、挨拶をする大臣にラビは短く返す。

隣のウルスラは魅惑的な笑みを浮かべ、男を誘うような眼差しを送ってくる。

その露骨な態度にうんざりとし、ウルスラから目をそらした。


「今朝は冷えますが、そのような軽装ではお風邪を召します」

「心配はいらない。暖まってきたからな」


上部だけの気遣いに冷たく言い放つと、大臣とウルスラの顔が固まる。


「それでは…、王妃様の所へ?」

「そうだ。もうよいか?」


大臣の言いたいことが分かり、すぐに肯定すると返事も聞かずにラビは二人の横を通りすぎる。


ウルスラが強い眼差しで、ラビを見つめていることは無視して。










「なによっ!上手くいっていないと思ったのに!」


大臣の執務室でウルスラが声を荒げる。

大臣は娘の怒声に静かに耳を傾けていたが、やがてゆっくりと口元に弧を描いた。


「ウルスラ、感情的になるな。お前の悪いところだよ」

「でも、お父様」

「なあに。心配はいらないさ。お前には武器があるだろう。王妃よりも優れたその武器が」

「お父様」

「陛下だって所詮は男。女の魅惑的な誘惑には勝てないものだよ」


父の妖しい笑みと、含みのある言い方にウルスラも「うふふ」っと上機嫌に笑う。


「そうね、一度は陛下と結ばれたもの。今度は夢中にさせてあげるわ」

「その意義だよ、ウルスラ。さすが私の娘」



父娘(おやこ)陰謀(いんぼう)で、(のち)の国王夫妻の仲が険悪になるとは、この時のラビとアリソンは分からなかった。







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