EP10 これから・・・
活動報告で書いたとおり、今回は二話連続更新です。
そして今回は過去最高の文字数になります。
わかりにくい、うまく読めないなどがありましたら、どしどし連絡してください。
ではどうぞ!!
「・・・・・・よし・・。」
大蛇との戦いを終え、しばし黄昏ていた俺はようやく立ち直り、少女の母親を助けるために立ちあがる。
少女の母親は、大蛇と戦った場所から少し離れた場所に倒れていた。
顔色は血の気がないが、息遣いが聞こえてくるあたり、まだ生きているはわかった。
「しっかし、流石はあの子の親と言われるだけはあるな。」
俺は近づくにつれ、少女の母親の身体を見上げて、その大きさに感嘆の声を出した。
少女の母親は、少女が銀狼になった時の大きさを一回り大きくした様な感じで、おそらく7メートル程はあるであろう身長だった。
体毛も少女と同じく銀色だが、母親の方は少女よりも神々しくもあり猛々しい様に感じた。
俺は一通り母親の体回りを確認すると、今度は大蛇にやられたと言っていた右脚を見ていく。
その脚は、それだけで人を圧するほどの迫力があり、触ることも俺が戸惑うほどだ。
「・・・ん?」
と、よく見ていたが、右の足首部分がほかの場所と違って、少しばかり黒澄んでいるのを見つけた。
「これか?」
気になって、毛並みをどけてみると、2本の歯型の跡がある。
俺は大蛇の歯を思い出しながら、痕跡を比べてみるとピッタリと一致する。
「そんじゃあ、後は・・・」
そう言うと俺は幻想創造を発動させ、母親の傷を治していく。
ついでに、体内にある大蛇の毒も解毒しつつ治していく。
「・・・・・よし、こんなものか・・」
そして一通り、怪我を治すと俺は幻想創造を解除し、少女がいる場所に向かう。
「・・・・・・・・・」
「・・・・まったく、気持ちよく寝てやがる。」
少女の寝息を聞きながら、俺は苦笑いする。
まったく・・・・・俺は大蛇と戦って、その後母親を治療してと大忙しだったのに・・・・
でも
「まぁ・・・・・・・こいつも頑張ってたんだよな。」
少女の前に腰をおろして、少女の髪を優しく撫でる。
モリサの森の番人と言われる母親を倒すほどの実力をもった大蛇に、少女は精一杯の勇気を出して戦ったのだ。
「・・・・・・・・よく頑張ったな。」
軽く頭をポンポンさせながら、俺は少女を優しい表情でみる。
「・・・・・・・・・へへ・・・」
「・・・・・・のんきな奴だな。」
寝ながら少し笑顔を浮かべる少女を見て、俺は苦笑した。
人の気も知らない奴だけど・・・・・
なんかこいつは・・・・
「・・・・・似ているな。」
俺は少女を見ながら、何故か今はもう会えない妹の面影を思い浮かべた。
顔立ちも、姿も似ていないのに何故かそう感じてしまう。
「・・・やれやれ。またホームシックになってるな俺。」
おそらく、久しぶりに人の温もりを感じたからだろう。
「もう、味わうことはないと思ってたんだけどな。」
そう思う俺だが、今はただこの温もりが守れた事は、何よりうれしい事だった。
俺は少女が目覚めるまで、少女の頭を撫で続けた。
お前の親は無事に助けたから・・・
今は安心して寝ればいい・・・・
例えどんな邪魔が入ろうが・・・
俺が残らず叩き潰してやるから・・・
だからどうか・・・・
いい夢を見て欲しい・・・
唯それだけで構わない・・・・
そして、起きた時に見せてほしいんだ・・・・
お前の笑顔を・・・
「本当に、なんとお礼をいったら言いか・・・」
そう言って、頭を下げてくる母銀狼に俺は丁寧に返事する。
「いや、もうお礼は何度も頂きましたから、とりあえず顔を上げてください。」
「そうだよお母さん。」
「しかし・・・」
そういう母銀狼は、納得がいかない顔をする。
少女も同じような表情を向けてくる。
何故こうなったのかは約20分程前に遡る。
あれから少しして、少女が目を覚ました。
俺は少女に大蛇は倒したことを伝えると、少女は涙を流しながら、俺にお礼を何度もしてきた。
対し俺は、別に気にするなとだけ言って早々に話を切り上げる。
別に少女のためにやったわけではないし、単に俺が大蛇に対して腹が立っただけでもあるからだ。
まぁ、本音を言えばこちらが有難うと言うべきなのかもしれないが、恥ずかしいので口には出さないでおこう。
それから10分後、無事に母銀狼も目を覚ますと、少女は泣きながら母親に抱きついた。
その涙は嬉しさのあまり出たものなのだろう。
「・・・ホントに泣き虫だな。」
俺は親子に聞こえないように、そう呟いた。
その時、少女が一瞬こちらを見た気がしたが、多分気のせいだろう。
うん、多分そうだ・・・
俺はそう思うことにした。
その後、少女が母親に事情を説明し、その母親がお礼をしたいと言ってきたところで、現在に至るということだ。
と、
「・・・・・ところで?あなたに聞きたいことがあるのですが?」
「ん?」
「あなたの名前をまだ聞いていませんので、教えていただきませんか?」
「あぁ・・・・確かに。」
母銀狼の問いに俺は納得した。
そういえば、少女の名前も聞いてなかったし、俺自身名前も言ってなかった。
「俺の名前は春風 玲音だ。ん?ここではレオ・ハルカゼと言った方がいいか?」
「レオ・・・・・ハルカゼですか?変な名前ですね。」
俺の名前を聞いた少女は、首を傾げる。
「まぁ、この世界ではそうなんだろうな。そういえばそっちの名前も聞いてなかったな。」
「そうですね。」
母銀狼はそう言うと、少女の隣に移動して、頭を垂れる。
「私はこのモリサの森を守護する番人。名をヴェスランサと申します。こっちは愛娘のアリシラ。アリシラ挨拶しなさい。」
母親に言われて、少女はペコリとお辞儀する
「改めて初めましてかな?私はモリサの森の番人ヴェスランサの娘のアリシラといいます。どうぞ宜しくお願いします。」
「あ・・・・・あぁ。まぁ宜しく。」
親子揃って丁寧に礼をされたので、俺は戸惑いながらも軽く答えた。
同時に、親子揃って顔を上げる。
「ホントは、何かしら御礼をしたいのですが、レオさんが要らないといわれるのでしたら、そうするしかありませんが・・・」
母銀狼はそこで一旦言葉を切る。
「???」
俺は首をかしげ、母銀狼を、いやヴェスランサを見る。
彼女の顔は、なぜかこちらを確かめるかのような表情だった。
「レオさん。あなたはこれから、どうするおつもりですか?」
その瞬間、周りを強烈な闘気が包んだ。
「・・・へ?」
ヴェスランサは、先程とは打って変わって、鋭い眼光を向けてくる。
それは、この森の番人と呼ばれるに相応しいものだった。
「娘から大方の事情は聞いています。あなたには特異な力がある。それもこの世界を崩壊させることすら可能な力が・・・・」
「・・・・・・」
ヴェスランサに対し、俺は真っ向からその視線を受け止める。
向けられてくる闘気は、少女の時に感じた殺気とは違い、その場にいるだけで押しつぶされそうな感じになるものだった。
多分、普通の人なら、当てられただけでも、ものの数秒で気絶してしまうだろ。
「そのような力の持ち主を、このまま放っておく事は私としては無視できないのです。」
「・・・・確かにな。」
母銀狼の問いに、俺は少し考えに耽る。
確かに幻想創造なんて、どの世界においてもそうだが、これ自体が異例の存在だ。
人の願い、いわゆる欲望を叶えるもの
そんな力があれば、その世界のパワーバランスは一瞬で砕け散り、残るのは混沌しかない。
だからこそ、そんな力が存在していいはずがない。
そう考えれば、ヴェスランサが言うことも理解できる。
「しかしな・・・・だからと言って素直にやられるほど、俺も甘い人生送ってきたわけじゃないからな。」
俺もある時期、人という存在を忌み嫌った時が会った。
でも・・・・
あいつのおかげで、俺は知ることが出来た。
人は欲望のみで生きてはいない。
その人の努力次第で、人はどんなことも叶えることが出来ると。
俺の幻想創造が要らないほどに・・・
だからこそ・・・
「今は唯・・・・この世界で生きること。それが俺がここにいる理由かな・・・」
「・・・・・・・」
俺の言葉に、ヴェスランサは相変わらずの視線を送ってくる。
アリシラは静かに二人の動向を見守っているが、その顔はどうなるかとオロオロしている様に見えた。
と
「ふむ・・・・」
突如、ヴェスランサが闘気の圧力を弱めた。
「それだけの覚悟の目をしているなら、あなたを見張る必要はないようですね。」
闘気は消え去り、辺りには静寂が戻った。
「俺を試したのか?」
僅かに俺の眉毛が上がる。
「そう思ってもらっても構いません。ただ、あなたの力はこの世界では異常でしかありませんから、私自身で確かめなければならなかったので。」
「そういうことか。でもそれは・・・」
ヴェスランサは自分の右足を前に出す。
「えぇ。あなたに治療して貰ったことで確認済みです。後はあなたがどのような人物か知る必要がありましたが、それも今ので理解しました。」
そう言うと、ヴェスランサは再度頭を下げる。
「命の恩人に対し、無礼を働いた事、深くお詫び申し上げます。」
そう言われ、俺も普段の表情に戻る。
「いいって言ったろ。それに元よりあんたに殺気は感じられなかったからな。別に気にしてないよ。」
俺がそう言うと、ヴェスランサはそうですかと言って、頭を上げる。
彼女の闘気を確かめている間に、殺気が全くなかったことは分かっていた。
「しかしレオさん。本当にこれからどうされるつもりですか?」
「ん?・・・・・・そうだなぁ・・」
そういや俺、これからの事なんて何も考えてなかったな。
この世界について、まだ知らないことは多い。
一応、少女が人間の姿になれるという事はわかっている。
という事はだ。この世界には人間はいるということだ。
更に、この世界には俺の幻想創造とは別の魔法と呼ばれる力があることも分かった。
しかしだ、
「そっからだよな・・・・問題は」
そう、人と接していくのは幼い時からの影響で抵抗があるし・・・・
かといって、平原で野宿生活するのも気が引ける。
この親子たちのように、優しいやつがいるとは限らないし、油断したら即お陀仏になりそうだしな。
そう考えると、なかなか結論が思いつかない。
どうするべきかな?
いっそ何処か誰も来ないところで、ひっそりと暮らしたほうが、俺の性分に合ってるしなぁ・・・・・・
と・・・・なれば・・・・・
そう考えていたら、一つのアイデアが浮かんできた。
「そうだ・・・・」
「「???」」
俺の言葉に親子は首を傾げる。
「ここに住もう。」
「「・・・・・・・・・・・」」
俺のその言葉に、しばしの沈黙の後・・・・
「「えええええええええええええええええええええええええええええ!!」」
親子の絶叫が辺りに響いたのだった。




