イザベリア VS アリア ①
※本作中の挿絵・画像は自動生成AIによるものです。
イメージや雰囲気を楽しんでいただければ幸いです。
なお、キャラクターの容姿や髪型、衣装などは
作中の描写と多少異なる場合があります。
あらかじめご了承ください。
獅子堂がセレナと対峙している頃、イザベリアたちは完全な乱戦へと引きずり込まれていた。
「ヴィヴィアン! 鈴凛!」
イザベリアの鋭い指示が飛ぶ。
「全力で騎士団を抑えなさい! 葵様を守るのですわ!」
「はい!」
「わ…分かってるわよ!」
二人は即座に応じ、それぞれの持ち場へと駆け出した。
しかし、状況は芳しくない。
三組の生徒たちも必死に奮戦しているが、この場に残っているのは主に後衛組だった。
前線を支えられる者が少ない。
そのため、騎士団との実力差は徐々に表れ始めていた。
一人、また一人と生徒たちが打ち倒されていく。
陣形は崩れ始め、戦線は押し込まれていった。
そんな中、イザベリアだけは最前線に立っていた。
鞭が唸り、銃声が響く。
数人の騎士を同時に相手取りながらも、一歩たりとも退かず、その身一つで戦線の崩壊を食い止めていた。
しかし……
ガガガガガン!!
イザベリアの放った銃弾を、大盾で受け止めながら一人の騎士が突進してきた。
「っ!」
イザベリアは即座に標的を切り替えるが、遅かった。
騎士団を牽制していた一瞬の隙。
その僅かな間隙を突かれた。
「しまっ――」
ドゴォォン!!
大盾による突撃が直撃した。
イザベリアの身体が宙を舞い、後方へ吹き飛ばされた。
「くっ……!」
地面を転がりながらも受け身を取り、即座に立ち上がるが……
遅かった。
イザベリアが押し込まれた、その一瞬。
騎士団は待っていたかのように動き出していた。
左右。
後方。
逃げ道を塞ぐように騎士たちが展開する。
包囲網。
それが完成していた。
イザベリアは忌々しげに周囲を見渡した。
そして、大盾を構える騎士へ視線を向ける。
騎士はゆっくりと姿勢を戻し、大盾の奥から現れた顔に、イザベリアは目を細めた。
「アリア……あなたは……」
アリア・ベルモント。
同じ二組に所属する生徒。
共に学園で学んでいた少女だった。
アリアは何も言わず黙ってイザベリアを見ていた。
すかさず鈴凛がイザベリアを庇うように前へ出て、身構える。
その間にヴィヴィアンが駆け寄り、回復魔法でイザベリアの傷を癒やしていく。
――パチ、パチ、パチ。
イザベリアたちが警戒しながら態勢を整えていると、騎士団の奥から、一人の騎士がゆっくりと手を叩きながら前へ出てきた。
現れた騎士の姿を見たイザベリアは、眉をひそめた。
「さすがはイザベリア様。一時とはいえ、我々騎士団の足をお止めになるとは」
「……エレオノーラ。貴様も来ていたのか」
イザベリアは忌々しげにエレオノーラを睨みつけた。
「知っているのか?」
鈴凛がイザベリアに問いかける。
「えぇ……」
ヴィヴィアンの治療を受けながら、イザベリアはゆっくりと立ち上がった。
「エレオノーラ・ベルモント。元近衛騎士団長にして、現在は副騎士団長。」
そして、傍らに立つアリアへ視線を向ける。
「……それと、アリアの姉ですわ」
イザベリアが鈴凛の前へ出て、何か言葉を発しようとしたそのとき。
ドゴォォン!!
凄まじい衝撃音が響き渡った。
その場にいた全員の視線が、一斉に音のした方へ向けられる。
そこには、セレナに顔面を蹴りつけられ、壁へ押しつけられている獅子堂の姿があった。
「閣下!」
イザベリアが咄嗟に声を上げる。
「あらら……団長の方は、もう決着がついたみたいですね」
エレオノーラはやれやれといった様子で、呆れたように呟いた。
その態度に、イザベリアは声を荒らげる。
「貴方たちは、こんなことをしてどうなるのか分かっているのですか!」
しかし、エレオノーラは動じない。
「えぇ……重々承知しておりますよ」
そう答えると、どこか呆れたような表情を浮かべた。
「むしろ、イザベリア様こそ、この状況をおかしいとは思われないのですか?」
エレオノーラはのらりくらりと歩きながら、イザベリアに問いかける。
「……どういう意味ですの?」
そう言いながら、イザベリアは改めて周囲を見渡した。
御剣 葵様は無事。
他の生徒たちも負傷してはいるものの、死者はいない。
倒れている者たちも、意識を失っているだけのようだ。
それなのに――。
「…………」
何かがおかしい?
違和感?
そう考えながら辺りを見回していたイザベリアは、ふと気づいた。
「……沙耶様は?」
もう一度、周囲を見渡す。
いない。
「御影 沙耶様はどこにいらっしゃるのです!?」
イザベリアは慌ててその姿を探した。
しかし、どこにも見当たらない。
すると、一人の生徒がおずおずと声を上げた。
「……沙耶様は、ここにはおりません」
「なんですって?」
「お祭りの護衛なら私たちだけで十分だろう、と……。対策本部の方に用事があるからと、そちらへ向かわれました」
「…………」
「申し訳ありません……」
生徒は申し訳なさそうに頭を下げた。
その表情は今にも泣き出しそうなほど、悔しさに滲んでいた。
イザベリアは、頭を下げる生徒の頭にそっと手を置いた。
「頭を上げなさい。そして、胸を張りなさい」
生徒がゆっくりと顔を上げる。
「あなたたちは、よくやりました。いえ……やり遂げたのですわ」
イザベリアは周囲にいる生徒たちを見渡した。
「よくぞ、精鋭である騎士団を相手に、葵様を無事に守り抜き、ここまで耐え抜いた。それだけで十分ですわ」
そして、静かに微笑む。
「誇りなさい。あなたたちは立派に、己の任務を果たしたのですから」
「流石です、皇女殿下」
――パチ、パチ、パチ。
エレオノーラは手を叩きながら、イザベリアを称賛した。
イザベリアは振り向きざまに、鋭い視線を向ける。
「……嫌味ですの?」
「いえ。心からお褒めしておりますよ」
エレオノーラはそう言って、穏やかに微笑んだ。
「さて、状況はある程度ご理解いただけたと思いますので、そろそろ大人しく御剣 葵様をお渡しいただけないでしょうか?」
その言葉に、イザベリアは苦虫を噛み潰したような表情を浮かべる。
「おい、イザベリア。どういうことだよ?」
鈴凛がイザベリアに問いかけた。
「…………」
イザベリアは一瞬だけ、葵の顔を見る。
そして、エレオノーラへ視線を戻した。
「おそらく……御剣家との間で、すでに話がついているのでしょうね」
「じゃあ……」
葵が何かを言いかけた瞬間、イザベリアは静かに首を横に振った。
「だからといって、『はい、そうですか』と、私たちが葵様をお渡しすると思っているのですの?」
イザベリアは拒絶するように、強い口調で言い放った。
「でしょうね……。だからこそ、こうして対峙しているわけですから」
エレオノーラは、やれやれといった様子で答える。
「ですので、どうでしょう?」
「…………」
「我々とて、無駄な殺生や怪我人を出したいわけではありません。そこで、うちのアリアとの勝負で決着をつける、というのは?」
イザベリアは訝しげに目を細めた。
「……私が勝てば、手を引きますの?」
「それはないな」
唐突に割って入った声に、イザベリアが視線を向ける。
そこには、獅子堂との戦いを終えたセレナが立っていた。
「皇女殿下が勝ったところで、私が黙らせる」
「……それでは、こちらに理がないのではなくて?」
「これは勝敗で我々が退くための決闘ではない」
セレナは平然と言い放つ。
「そなたたちが、納得するかしないか。そのための落としどころだ」
そして、大剣に手を添えた。
「嫌なら、力ずくでねじ伏せるが?」
イザベリアはセレナを睨みつけながら、僅かに思考を巡らせた。
しかし、どれだけ考えても打開策が見いだせない。
閣下や倒れた生徒たちを置き去りにして、葵様だけを逃がす?
無理ですわね……。
私程度では、セレナ団長を相手にしても、もって数秒。
鈴凛やヴィヴィアンと一緒でも……
おそらく、結果は変わらないですわね。
それに、負傷した生徒たちを置いて逃げるなど……
「はぁ……致し方ありませんわね」
イザベリアは諦めたように息を吐いた。
「ただし、勝っても負けても、他の生徒たちには手出し無用でお願いしますわ」
「了承した」
セレナは即答すると、すぐさま騎士団へ指示を飛ばした。
「倒れている生徒を集めて治療しろ! 負傷している者も同様だ!」
騎士たちが一斉に動き出した。
さらにセレナは、離れた場所に倒れている獅子堂を指差した。
「あと、あそこにいる少年もこちらへ運んで治療してやれ」
「はっ!」
指示を受けた騎士たちは、敵味方の区別なく倒れた生徒たちを集め、次々と救護を始めていった。
その様子を確認したイザベリアは、改めてアリアへと向き直る。
アリアもまた、大盾を構え直した。
こうして、イザベリアとアリア。
二人による一対一の決闘が、始まろうとしていた。
ここまで読んで頂き、ありがとうございます。
本作に登場するイラストは、自動生成AIによるものです。
物語そのものを補足する「正解のビジュアル」ではなく、
あくまでイメージや雰囲気を楽しむための要素として見て頂ければ幸いです。
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